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第1回 「 捨てられたプロレス、PRIDEの憂鬱」
第2回 「 プロレスラーという人々」
第3回 「女子総合格闘技、月森サトルを救う」
第4回 「月森サトル、「WRESTLE(レッスル)−1」にとまどう」
第5回 「2003年「プロレス」をめぐる気分」

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2003.11.1 UPDATE


月森サトル
text&illustration by Satoru Tsukimori


【第6回】月森サトル“オヤジの意地”に燃える
金髪の不良を、とっつぁんがボコボコに!
こんなシーンが見たかった!

 あまりの更新の滞りぶりのせいか、ついに裏スロウトレイン・ワ−ルドに幽閉(?)されてしまった月森です。さて、更新していなかったからといって格闘技やプロレスから興味が離れていたわけではなく、逆にどっぷりと漬かりきっていた次第。

 「やっぱりプロレスだ!」と前回あれだけ宣言したにも関わらず、やはり格闘技も気になるもので、ついつい横目でチェック。いいじゃないですか、両方好きなんだから。もう、プロレスVS格闘技の不毛な自分内論争はやめやめ!

 さて、K−1の突然のプロレス化にあきれかえったり、PRIDE武士道でのミルコのあまりの強さに寒々しささえ覚えるなか、ここ最近で最も感動を与えてくれたのは、意外にもプロレスではなく、海の向こう米国・ラスベガスで9月27日に開催された「UFC44 UNDISPUTED」での、40歳の大ベテラン、ランディー・クートゥアー選手による劇的勝利だった。

 「UFC」とは、PRIDEを含めたバーリ・トゥード形式の興行の、いわば元祖的な存在で、誕生からすでに10年以上の歴史をもつメジャー大会。ほかの大会と決定的に違うのは、通常のリングではなく、ロープの代わりに金網が張られた、「オクタゴン」と呼ばれる8角形のリングを使っている点だ。一見、まるで闘犬場のような殺伐とした雰囲気を放つこのリング。「スロウトレイン」読者向けの余談ながら、発案者はなんと「地獄の黙示録」('79)の脚本や「ビッグ・ウェンズデー」('78)で知られる映画監督ジョン・ミリアス先生というのが定説なのだ。

 PRIDEと同じく、世界のトップ中のトップ選手が集まるUFCのリングでは、とにかく目まぐるしく王者が変わる。ときにスター選手を守るかのようなマッチメークが見られるPRIDEに対して、UFCの基本は完全実力主義。やっとの思いで王座を奪っても、すぐに次なる無名の強豪が主催者側からどんどんぶつけられる弱肉強食の過酷な世界である。

 そうなると、当然ながらトップを占めるのはイキのいい20代の伸び盛りの選手。初期UFCで活躍していたロートル有名選手は、まさに「昔の名前で…」という感じで、客寄せのための添え物として出場するのがせいぜいというのが現実。

 そんな中、アマレス出身のタフな実力者でUFCでもヘビー級王者に着きながら、最近は若い挑戦者に連敗していたクートゥアーが、わざわざ減量し一階級下のライト・ヘビーに落としてまでチャレンジした今回の王座決定戦を、僕はかなりワクワクして待っていた。相手はあのヴァンダレイ・シウバも破るなど連勝を重ねながらも、主にファイトマネーの額を巡って主催者側と対立してきた問題児ティト・オーティズ。まだ20代後半の若さと、ストリート・ファイト出身の攻撃的なファイトで知られるティトだけに、いくら本来の階級差があるとはいえ、普通に考えればクートゥアー不利は動かない。そう。ドラマなき“競技”の世界に、突如、“オヤジの意地”VS“バッドボーイ”という燃えるテーマが立ち昇ったのだった。ガガーン。これが興奮せずにいられましょうか。

 試合は大方の予想に反して、ストライカー(打撃主体の選手)のティトをクートゥアーが得意のグラウンド・コントーロルで押さえ込み、まったくといっていいほど何もさせない上、ラウンドが進んでも40歳とは思えぬスタミナはまったく落ちない。得意のタックルで相手をぶっ倒し、ついにはマウント(馬乗り)になって若者をタコ殴り! 「なんすか…このおっさんの強さ…」と完全にブルーになったティト。終盤、足関節で必死に反撃を試みるもクートゥアーは余裕の表情。判定も待つまでもなくクートゥアーの完全勝利だ! あまりの一方的な試合内容に泣き出してしまうバッドボーイとは対照的に、にっこり笑ってガッツポーズのクートゥアー。不況に苦しむ日本の同年代オヤジを勇気づけた…かどうかは知らないが、とにかくバーリ・トゥードの試合で、ひさびさの“感動”をたっぷり味わうことができた。

 暴力表現にはことのほか厳しいアメリカで、UFCは興行を続けるために、「これはケンカではなくスポーツ競技です」というアピールをずっと続けている。前回、書き足りなかったなと思っていたことだが、“競技”にだってもちろんドラマや感動はある。わかりやすいテーマ性、ドラマ性が薄くなってしまった日本の格闘技イベントになんとなくものたりない思いを抱いていた僕に、頑固オヤジ、ランディー・クートゥアーはそんな当たり前のことを思い出させてくれたのである。

ハゲ頭のとっつぁんクートゥアーが、金髪のヤンチャな不良をボッコボコに粉砕する様は痛快のひとこと。日本でも35歳以上限定のオヤジ・アマ格闘大会が存在するが、おっさん同士だけでなく、渋谷の若者との5VS5バーリ・トゥード対抗戦とかやってほしい。リストラ最強軍VSスーパーフリーとか…。絶対燃える。


 


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