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2002.10.17 UPDATE
月森サトル
text&illustration by Satoru Tsukimori
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すっかり冷めた格闘熱
後楽園ホールで見たものは・・・ |
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| 本当に、“隣りのお姉さん”みたいな人が「頼まれて仕方なく・・・」という雰囲気を発散させながら出てきて、腕の関節をひん曲げられるとあっさりギブアップ。セコンドの人と「だからヤダって言ったでしょ〜」みたいな感じで笑いながらそそくさと去っていく。自分がいま何を見ているのか、一瞬わからなくなる・・・。 |
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もうすっかり秋だが、今年の夏はまさに“格闘技の夏”といった感じだった。8月8日・東京ドームの「LEGEND」、8月28日・国立競技場の「Dynamite!」を始めとして、ビッグ・イベントが目白押し。にも関わらず僕の格闘技熱はすっかり冷めまくり、どんなに話題のカード(試合の組み合わせ)が組まれても、連日、東スポの紙面がにぎわっても、ちっとも心は燃え上がらなかったのだ。昨年から今年の前半、あまりに格闘技に入れ込みすぎた反動なのか、とにかくシラケきっていた僕は、このコラムも完全にほったらかし。いろいろな人から、「『格闘はまり道』はどうなってるんだ!ちっとも“はまって”ないじゃないか!」と、お叱りの言葉を頂戴していた次第だ。
そんな7月も終わろうとしていたある日、なんとか自分に刺激を与えたくて、ひとり、後楽園ホールへと足を運んだ。目的は女子総合格闘技「AX(アックス)」の観戦。女子総合格闘技・・・。格闘技ファン以外の読者はおそらく初めて耳にする言葉だと思うが、読んで字の如し、女性がやる格闘技なわけで、いわゆる女子プロレスとはまったくの別ものである。ルールはほとんど「PRIDE」のようなものと思ってもらっていい。もちろん試合によっては、パンチやキックのない「組み技のみ」というルールもあるが、基本的には薄いグローブをつけて殴り合い、蹴りあい、関節を決めあう、バーリ・トゥード形式の試合だ。そこに「女性なんだから・・・」という遠慮や躊躇は一切ない。このジャンルは、ここ2、3年に「PRIDE」などの成功に刺激を受けてプロ興行として生まれたもので、まだまだその歴史は浅く、世間の認知度も低い。だが、新しいものが誕生しつつある時はいつもそうであるように、黎明期ならではの得体のしれない興奮があるらしく、一部のマニアの間ではひそかに話題になっていたのだ。
「AX(アックス)」は、もうひとつの女子総合格闘技団体「スマック・ガール」から分裂して旗揚げされた小規模のイベントで、女子プロレスのように名前の知れた選手など、当然ひとりもいない。この日、後楽園ホールの当日券売り場で4千円のチケットを買い、まもなく試合開始となる客席に足を踏み入れた僕の第一印象も、「客、全然入ってね〜・・・」だった。とにかく、長年後楽園ホールに通っている僕も、こんなにもガラガラの場内は見たことがない。超満員のときは2千人は入る場内なのに、そこにいる人間は、ざっと数えただけでもせいぜい3〜4百人(関係者らしき人たちも含め)。人がいないので、クーラーがききすぎて、真夏というのにひどく肌寒い。
そんなわけで試合もはじまる前からいきなり「寒く」なってしまった月森だったが、意外や意外、試合そのものは結構、いや、かなりおもしろかったのだから、やっぱり何事も自分の目で見てみないことにはわからないものだ。「AX(アックス)」に登場する選手は、プロとはいえ、当然試合だけで食えるはずもないので、皆ほかに本業をもつ半分アマチュアの人がほとんど。選手紹介のコールを受けてももじもじするだけでアピールひとつしない選手や、腕ひしぎ逆十字を決められて秒殺されても照れ笑いを浮かべてこそこそ退場する選手など、「PRIDE」「K−1」のプロフェッショナルな演出と選手を見慣れた僕には、なんだかとても新鮮な光景が続出したのであった。
とはいえ、すでに何試合もこなしているメイン・クラスの選手となれば、話は別。素人目に見ても、明らかに前座とはレベルの違う、技VS技、意地VS意地のぶつかり合いは、ガラガラの場内さえ思わず熱くなってしまうほどの素晴らしいものだった。なかでも、僕の冷めきった“格闘心”に火を着けたのが、メイン・イベントに登場した星野育蒔(いくま)選手。実を言うと僕はこの日、女子総合格闘技というよりも、この星野選手見たさに来たと言ってもいい。星野選手は、その特異なキャラクターと激しい試合ぶりで、雑誌やネットに何度も登場。僕のようなぬるいファンにも、彼女の噂は届いていた。
では、彼女のなにがそんなにすごいのかといえば、やはり入場、試合、マイクアピール、退場に至るまで、一瞬たりとも落ちることのないそのハイ・テンションぶりだろう。「君、控え室でなにか変なキノコでも食べた?」と思わず聞きたくなるくらい、星野選手のボルテージは終始上がりっぱなし。ノリノリでダッシュしながら入場し、ゴングが鳴れば、対戦相手ウィンディ智美選手の女子とは思えない強烈な打撃にもひるむことなく、タックルや関節技に次々とトライする。殴られ、蹴られても気にするそぶりさえなく、寝た状態への顔面キックというウィンディ選手の恐ろしい反則で試合が終わっても、半分失神しながらマイク・アピールは忘れない。しかも、さんざんボコボコになったくせに、叫んだ言葉は「めちゃめちゃ楽しかった〜♪(泣きながら)」なのだから、見ているこちらは圧倒されるばかりなのである。
技術うんぬんではなく、プロ選手として僕が一番大切だと思う“存在感”が、彼女にはありすぎるくらいある。あまりに技術レベルが上がり、競技として洗練されすぎ、息苦しくなってしまった「PRIDE」「K−1」に冷めていた月森に、なぜ自分が格闘技が好きなのか?をあらためて思い出させてくれた女子格闘家たち。女子プロレスラーと違って、外見はどこにでもいる女の子と変わらないごく普通の体格の彼女たちだけに、格闘技という見慣れたジャンルの凄さ、おもしろさが逆にはっきりと際立って見えた。そう。僕は、過剰な何か、世界から逸脱した何かが見たいだけなのだ。
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| 星野育蒔選手が自らつけたニックネームはなんと「マァ☆ティン」。「つのだ☆ひろ」からヒントを得た(笑)というが、この不可解なセンスにしても、マァ☆ティン、本当に目が離せません。 |
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