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第1回 「 捨てられたプロレス、PRIDEの憂鬱」
第2回 「 プロレスラーという人々」
第3回 「女子総合格闘技、月森サトルを救う」
第4回 「月森サトル、「WRESTLE(レッスル)−1」にとまどう」
第5回 「2003年「プロレス」をめぐる気分」
第6回 「月森サトル“オヤジの意地”に燃える」


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2003.12.15 UPDATE


月森サトル
text&illustration by Satoru Tsukimori


【第7回】高田“暴露本”とプロレス不振の理由
燃えたPRIDE東京ドーム大会の後、
話題の本を手に取ってみれば…

 いや、それにしてもPRIDEグランプリ決勝戦(11月9日・東京ドーム)、ものすごかったですね。11月はほかにもビッグマッチをいろいろ見たのに、それがほとんど印象に残らないくらい、今回のPRIDEは面白かった。大会当日、自宅にてPPV観戦していた僕は、あいにくの雨で乱れがちな画像を安定させるため、ベランダのスカパー・アンテナを微調整しようとズブ濡れで大奮闘。「早くしろ(怒)! 桜庭、始まっちゃうよ!」と弟とその奥さんにドヤされながらも、東京ドームの客席に負けないほどの興奮状態で熱く観戦したのであった。

 今回嬉しかったのは、“打撃優位”という風潮が定着していた最近の総合格闘技において、“寝技”の復権が見られたこと。吉田秀彦VSヴァンダレイ・シウバでの吉田の驚異的なグラウンド・コントロール技術(惜しくも判定負けしたけど)、ひさびさに炸裂した桜庭の芸術的な腕関節、そして負けるシーンが想像できないほど怪物化していたミルコ・クロコップの腕を、一瞬の油断を突いてキメてみせたアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラ。

 いまだに総合格闘技をプロレスの延長線上に見ている僕にとって、心からの応援の対象となるのは、いくら強くてもミルコやシウバのようなストライカー(打撃系選手)ではなく、プロレスの匂いを残すグラウンド技術で勝負するグラップラー(寝技系選手)なのである。強烈な打撃のみで敵を倒すのも総合の凄みのひとつだけれど、やはりこの競技の真の魅力はパワーを技で組み伏せるハイレベルの寝技にあるのだな〜と改めて思った次第。もちろん選手の気迫、折れない心、闘争心が伝わるかどうかも大事なことで、あれほど嫌いだった吉田なのに、凶暴なシウバにボコボコにされ柔道着の「ペンタくん」マークを血に染めながらも、まったく怯まず向かっていく姿を見るうち、思わず「頑張れ!」という声が出てしまったのには自分でも驚いた。

 さて、そのPRIDEで、猪木に代わりすっかり「お前は男だ!」パフォーマンスが定着しつつある、元選手・現PRIDE統括本部長(謎の肩書き)の高田延彦による自伝本「泣き虫」(幻冬舎/金子達仁著)が話題となっている。特にプロレス業界の皆さんから強烈な非難を浴びているのが、PRIDEでリアル・ファイトに移行する以前、プロレス時代に行った試合の“真相”に関する記述だ。

 要は「ほとんどの試合は勝敗があらかじめ決まっていた」「あの試合には実はこんな約束ごとがあった」などと、プロレスの“機密事項”が当事者である高田本人の口から語られているわけで、ただでさえリアル・ファイトに押されて旗色の悪いプロレス業界人にしてみれば、「さんざんその世界で食ってきたくせに、いま頃になって商売の邪魔をするような本を出しやがって!」ということなのだろう。

 僕も問題の本にざっと目を通してみたが、素直な感想を言えば、「大騒ぎするほどのことでもない」という感じ。プロレスラー本人の口から語られているがゆえにショッキングな印象を与えるのかもしれないが、長くこのジャンルを見ている人からすれば周知の事実ばかりなので、特にあらためて驚くこともないと思う。

 逆に意外だったのは、この本に対するプロレス業界(特に某老舗団体)の過剰な反応のほうである。いま時、プロレスをリアル・ファイトと同じ括りで見ているファンがいったいどれくらいいると思っているのだろう。少なくとも、プロレス→“擬似”格闘技→リアル・ファイトという典型的な過程を辿ってきた僕のようなファンは、ここ数年でプロレスとリアル・ファイトをまったくの別物として楽しむ姿勢が定着しているわけで、いまさら「プロレスは勝敗が決まっています」と聞かされても、「それがどうかしましたか?さて今夜もWWEを見よーっと!(アホ)」となるだけで動揺もなにもあるわけがない。

 お金を払って興行を見るファンの立場から言わせてもらえば、いまプロレスの人気が落ちている理由は、“真剣勝負ではないから”などでは決してない。コンセプトの徹底、大会までの盛り上げ方、会場での演出の豪華さ、イベントの進行、選手のモチベーションなど、あらゆる面でのエンタテインメントとしてのクオリティがPRIDEやK1に比べて著しく低いから、というだけの単純な話なのだ。その証拠に、以前も書いたNOAHや闘龍門など、プロレスがプロレスであることに意識的で、トータルなショーの完成度を上げる努力をしている団体は、スケールの差はあっても安定した人気を保っているではないか。総合格闘技という比較対象がなかった時代の感覚を引きずっているうちは、プロレスはますますマイナーなジャンルに落ちていくしかない。

 大晦日には、なんと3つの局が紅白歌合戦の裏でリアル・ファイトのイベントを同時開催・放映する。こんなことが平然と実現してしまうのは、どう考えても世界中で日本だけだろう。そして、ここまでリアル・ファイトが大衆的な人気を得ても、なおかつ存在し続けるプロレスというジャンルの底知れなさは何なのだろうとも思う。いくら僕が総合格闘技に夢中になったとしても、プロレスには絶対になくなってほしくない。今回書いた暴露本騒動など、こうしたゴタゴタも含めた全体が“プロレス”の魅力であり、それがなくなるのはとてもとても寂しいからだ。

(某有名な歌のメロディで)
想像してごらん、プロレスがない世界を
寂しくて仕方ないよ
猪木も馬場もいない
東スポも週刊ファイトもない
想像してごらん、みんなが
本当はプロレスが好きだってことを(断定)


例によって何を書いているのか自分でもわからなくなってきました。でもプロレス、がんばってください。死ぬまで見続けますので。


先日、某プロレス団体を生観戦した際、後ろの席に座った小学生と思しき女子2人。聞くとはなしに会話を聞いていると…。「ヒョードルのパウンドって独特だよね〜」「うん、柔術にはないポジションから打つからノゲイラ再戦してもきついよね〜」「桜庭VSシウバもういいよ〜。シウバには近藤か菊田ぶつけるしかないよ〜」などなど。あの…すいませんけど君たちは何者ですか? 「りぼん」の代わりに「ゴング格闘技」でも定期購読してるのですか? 小学生女子、恐るべし!


 


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