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2004.6.7 UPDATE

田中正明
text by Masaaki Tanaka

| 中央がフリー・レフェリーのTOMMY。カメラのほうを向いているのは、次にどの位置に動けばいいか、瞬時にポイントを探っているから。 |
5月19日発売の『週刊ゴング』(1022)に、興味深いインタビューが載っていた。語り手は全日本プロレスの“王道の番人”和田京平レフェリー、聞き手は編集部の木幡一樹主任。そのページで僕が目を留めた見出しを引用する。
「初めて女子プロさんの試合を裁いてみたら…モモ☆ラッチに“どけえ!”と言われたよ」
京平さんは、5月3日の『BAPESTA!!』興行(大阪・Zepp Osaka)で中西百重&AKINO組VS大向美智子&THE APEWOMAN組のタッグマッチを裁いた。リング上で反対側のコーナーにいるモモに「どけ〜」と言われ、内心「何でオレがどかなきゃいけないんだよ」とムッとしたところ、モモが京平さんのいるコーナーへと対角線を走ってきた。慌ててよけると、モモはぴょんぴょんとロープに飛び乗り空中殺法を放つ。「なるほど、これじゃオレが邪魔なわけだ」と京平さんは納得した。
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| 『週刊ゴング』(No.1022)より。和田京平レフェリーの興味深いエピソードの数々が、前号に引き続き掲載された。 |
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記事を読んだ数日後、KAIENTAI DOJOの『柏組結成記念興行』(5月23日、千葉・Blue Field)を観に行った僕は、K−DOJOの事務所で京平さんに会い、じかにモモとのエピソードを聞くことができた。
「一度『どけ〜』と言われて、またしばらくしたら『どけ〜』と。今度は『はい、ごめんなさい』ってどいちゃったよ。お客さんを笑わそうとしたわけじゃなくて、ホントの気持ちでね。レフェリーは選手の動きを邪魔しちゃいけない。それがジョー樋口さんの教えだからさ。今日も女子プロあるの? じゃあ、オレが裁いたらオイシイかな(笑)」
その日は我闘姑娘(がとうくーにゃん)初のタッグマッチ、さくらえみ&市井舞組VS零&蒲原唯組があった。僕はこの試合観たさに千葉まで足を運んだのだ。結論から言えば、京平さんが出なくて良かったと思う。あんな練習以下の試合を裁いたら、和田京平ブランドに傷が付く。
我闘姑娘にはレフェリーが二人いる…と、最近更新した「スロスポ」で書いた。一人は団体のフロントでもある池須ゆたか氏。もう一人は「さくらえび★きっず」のまきちゃんの母であり、NEO5・5後楽園ホールで華麗なドロップキックを見せた美紀さんだ。両名のレフェリングを見ていると、つくづくプロレスのレフェリーは難しい仕事だと思う。
柏組興行での初タッグは、4月にデビューしたばかりの舞が、まず舞い上がり(いや、冗談じゃなく)、同じくキャリアの浅い唯と二人で試合を混乱させた。エプロンで控えるさくらは、たまにカットに入ったり、「戻って来い!」と叫ぶ以外にどうすることもできない。こういう場合、慣れたレフェリーなら若手選手を鼓舞または叱咤することも可能なのだが、美紀さん自身が新人レフェリーだから、そうもいかない。何とも歯がゆい展開が続いた。
ここで、現在、女子プロレスを裁いているレフェリーを思いつくまま挙げてみよう。
ボブ矢沢(全日本女子プロレス)
笹崎勝己(同上)
テッシー・スゴー(JWP)
伊東幸子(GAEA JAPAN)
小林大輔(JDスター)
TOMMY(フリー。主にAtoZ。ほかにLLPWも)
ジャッジ金子(ジャッジ・サポート所属。女子では主にNEO)
浅野グレース恵(フリー。女子では主にNEO)
女子7団体に限って言えば、よく見るのはこの8名だ。極悪同盟の阿部四郎は、現役というよりゲスト扱いなので省いた。あとはごくたま〜に、みちのくプロレスのテッド・タナベが、みちプロの選手が絡む試合に出るぐらい。
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| 現在はZERO−ONE所属の村山大値レフェリー。アルシオンを退社したH15年5月18日の一コマだ。 |
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上に並べた8名の男女比は半々。TOMMYは元・全女の選手(ブル中野と同期)で、本名の柳下まさみでファイトした。その後、トミー蘭の名で女性レフェリーの草分けとなり、GAEAの伊東幸子と、当時は吉本女子プロレスJd’所属の浅野恵にレフェリングを一から教えた。トミー蘭といえば、女子マット界では村山大値(全女→アルシオン→現ZERO−ONE)と評価を二分する名審判で、リングアナが紹介したあとの「トミー」コールはお馴染み(村山さんにも「ダイチ〜」と声が飛ぶ)。ちなみにテッシー・スゴーも元はJWPの選手である。
僕は全女、JWP、GAEA、NEO、AtoZの5団体で、『週刊ゴング』用にエプロンサイドで写真を撮った経験があり、ほとんどのレフェリーの動きは目と鼻の先で見た。「良いレフェリー」の代表格はやっぱりTOMMYさんで、正直「悪いレフェリー」と認定したい人がこの中に2〜3人いる。その場合の「悪い」とは、阿部四郎のようにヒールに加担するという意味ではない。僕が考える“良し悪し”の条件は以下の通りだ。
◎良いレフェリーの条件(この反対が、そのまま悪いレフェリーの条件)
1、選手の動きを邪魔せず、選手ほど目立たず、試合を円滑に進行させる。
2、ルールに則り、反則や場外のカウントは厳密に数え、選手を野放しにしない。
3、ツーかスリーか分からないような、中途半端なフォール・カウントを叩かない。
4、観客の視線や、エプロンサイドのカメラのレンズを極力遮らない。
5、(特にコミカルな試合では)アドリブが利く。
細かく書けばもっとあるが、このぐらいにしておこう。
ここ数年、ずっと気になっているのは2番目の“場外カウント”だ。場外に下りるのは20カウント未満、というリングアウトのルールがありながら、平気で5分、10分と場外乱闘を続ける選手がいる。それも、勝敗が大きな意味を持つタイトルマッチでだ。試合を中途半端に終わらせないために、ある程度の反則やカウント・オーバーには目をつぶる、という考え方もある。また「完全決着のためにリングアウトは数えません」と事前にアナウンスされた場合は、だったらいつもそのルールでやれよ…と思いつつ、特例として認めよう。しかし、同じ団体で同じプロレス・ルールなのに、ある試合ではリングアウト勝ちが成立し、ある試合では5分以上の場外乱闘が行なわれるなんて、どう考えてもおかしい。後者の場合、レフェリーは厳然と20カウントを数えて両者リングアウトを宣告してから、選手、観客の誰もが不満を唱えるならば、選手をリング中央に戻して再試合のゴングを鳴らせるべきだろう。
NEOではタニー・マウス&宮崎有妃のNEOマシンガンズが、GAEAでは植松寿絵&輝優優組が、リングアウトのルールを巧みに利用して、タッグ防衛戦を盛り上げた。なのに、同じレフェリーが長い長い場外乱闘を黙殺する試合があれば、あの20カウントは何だったのかと首を傾げたくなる。
そういう白でもなく黒でもないグレーゾーンがプロレスの魅力…と、開き直ることは僕にはできない。百歩譲って選手の言い分はそれでもいい。だが、レフェリーには白と黒の区別はハッキリ付けてもらいたい。そこをどう潜り抜け、スリリングな場面を作るかが、選手の腕の見せどころではないか。 |
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