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2002.11.21 UPDATE
田中正明
text by Masaaki Tanaka
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| 11・11北沢のメイン、ヤブサカVSファング鈴木&高橋奈苗組。 |
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『週刊プロレス』が7月18日発売号で表紙に謳い、僕も『週刊ゴング』誌上で何度か煽ってきた、10月20日の全女=川崎市体育館VSGAEA=横浜文化体育館の京浜興行戦争。いざその日を過ぎてみれば、2大会の成否を比較検証した記事が、両誌に載ることはなかった。
某記者が言うには、GAEAからプロレスマスコミに対し、「10月20日に関して『興行戦争』という言葉は使わないでほしい」とのお達しがあったとか。つまり、GAEAと全女を同列に扱ってほしくない、ということだ。
僕は直接言われていないし、誰からも「田中氏に伝えて…」という指示はなかったようなので、あとから又聞きで知った次第である。しかし、それまで煽ってきた者の責任もあり、大袈裟に言えば表現の自由を守るためにも、この場を借りて10・20興行戦争の総括をしたいと考えていた。川崎は全試合をライブ観戦、横浜はGAORAの3時間特番でTV観戦した。おかげでGAEAの方は、舞台装置の設営や試合前の選手の表情など、珍しいメイキング映像を見ることができた。
ところが、いざワープロに向かうと遅々として進まない。一度打った原稿も消去した。どれだけGAEAの選手に期待をかけたり、苦言を呈したとしても、その声は彼女たちには届かないのだ。あるいは届いても黙殺される。だったら「や〜めた」だ。
11月11日、Jd’の東京・北沢タウンホール大会に行くと、バックステージで卯木基雄代表と話す機会があった。卯木さんから「提言があったらどんどんしてほしい」と言われたので、ピンと来て「何か噂になってますか?」と訊く。「ホームページに色々と書いてたでしょ」と卯木氏。前回のアストレスに関するコラムのことだ。
モニターで観戦しながら会話を続けていると、アストレス2期生の桜花由美が、自分の攻撃中に舌――実際は唇――を噛みレフェリーストップとなった。前代未聞の珍事に、卯木さんは「これはアカン、これはアカン」と連呼。「ちゃんと練習はしとるんやけど…」と呟いて桜花が運ばれてくるのを待った。さすがに「Jd’の前座は幼稚園のお遊戯みたい」と書いた僕の前では、バツが悪かったようだ。
あのコラムについて、ヤブサカ(藪下めぐみ&坂井澄江)と30分話したこともある。
11月3日、全女の後楽園ホール大会で不甲斐ないファイトをしたヤブサカに、翌4日、アルシオンの会場でゆっくり話を聞いた。二人の口からは自己批判、会社批判、後輩批判がいくつも飛び出したが、ここでは書かない。原因が分かっているのなら、あとは団体内で解決する問題だ。僕の「気付かせる」役目は終わっている。卯木代表も、ヤブサカから「田中さんと話した」という報告を受けていた。フロントと選手のコミュニケーションが取れているのはいいことだ。
選手や団体関係者が気付いていることを、あえて書く場合もある。一例を挙げよう。
昨年12月9日、GAEAの新潟フェイズ大会でこんなことがあった。KAORUVS山田敏代のシングルマッチで、KAORUは口に仕込んだ毒霧を山田の顔面に噴射。そのままエビ固めでフォールした。伊東幸子レフェリーは間近で目撃しながら、ここで3カウントを数えて試合を終わらせてしまった。
レフェリーの指示でゴングを鳴らした中島幸一郎リングアナは、試合結果の用紙に「毒霧→エビ固め」と書くしかなかった。どう考えても矛盾している。凶器を使った攻撃からのフォールは認められないからだ。これが毒霧のあと、何か大技を放って押さえ込んだのならまだ分かる。レフェリーが反則場面を見逃した場合も然り。
そもそも毒霧などという証拠の残る目潰しが、幅を効かすこと自体おかしいのだが…。「ちゃんこ かぶき」に通う手前、そこは不問ということに。ハハハ。
納得行かない山田が暴れても、KAORUは「レフェリーが三つ叩いたから勝ちだ」と平然としていた。なるほど正論だ。僕が「こんなのおかしいよ」と中島リングアナに訴えると、彼も「これは(社内で)問題になりますよ」と頷いた。
この件は早速、その月の『レディース・ゴング』に書いた。伊東レフェリーを責めるのではなく、各団体のレフェリーにも注意を促し、ヒール・レスラーが芸のない安易な凶器攻撃をやめるよう訴えるのが主旨だ。後日、アルシオンの村山大値レフェリーから、「オレもこれからはもっと厳しく反則を取るよ。幸ちゃんによろしく伝えておいて」と電話を頂いた。我が意を得たり。こうして問題意識を共有してくれる人がいると信じて、僕はものを書く。
あれから1年近くが経ち、GAEAの横浜大会では、D−FIX(尾崎魔弓&KAORU)と伊東レフェリーの凶器を巡る攻防が、一つのサイドストーリーとして場を盛り上げた。試合中、D−FIXがレフェリーを牽制しつつ、隠れて凶器を使う場面があり、僕は「そうだよ、それが言いたかったんだよ」と、TVの前で身を乗り出した。
新潟の一件を書かなければ、今もダラダラとレフェリーの“見て見ぬふり”が続いていたかも知れない。そう思うと、里村明衣子&浜田文子組のAAAWタッグ戴冠に一役買ったような気がして、ちょっといい気分だ(思うのは勝手でしょ)。
さて、Jd’の11・11北沢大会に話を戻そう。その日、僕が最も注目していたのは賀川照子VS富松恵美のシングルマッチだ。
アストレス“出身”の賀川は、MARUの持つJd’ジュニアのベルトに挑戦が決まっており(24日の新宿大会に決定)、意気揚々と戦った。相変わらずドロップキックが速く鋭い。リングではプロレスラーとして全力を尽くす。その上で、ただ「プロレスもできます」というだけでなく、「現役チャンピオン」という箔を付けてタレント活動に臨む。それが今の賀川の目標なのではないだろうか。
賀川のテンションの高さに負けまいと、富松も善戦した。かつて観たナヨナヨした雰囲気は影を潜めている。コラムを通じたJd’関係者への発破は無駄ではなかった。そう感じた。赤・青コーナーに分かれてセコンドに付くヤブサカの声も、心なしか大きい。
この試合後、敗れた富松がマイクを握り、「3度目の手術」を行なうために長期欠場することを自ら発表した。泣きながらバックステージを通り過ぎた彼女に、居合わせた記者は誰一人、声を掛けられなかった。
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| コメントを述べるファング(右)&高橋。ファングはラスカチョ発言のあと、
密かに練習量を増やしたとか…。 |
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メインの『タッグリーグ・ザ・ベスト’02』公式戦では、ファング鈴木が「スタミナ不足で負けた」と言い訳した。これにはファンも苦笑い。全女11・3後楽園で、猛武闘賊の下田美馬が「全女に上がるなら、もっとスタミナを付けなさい」と、ファングを批判した発言を受けてのものだ。下田はマスコミに向かってコメントしたから、ファングも観客も専門誌で読んだのだろう。その日は藪下が堀田祐美子に、ファングがラスカチョにバッシングを受けた。Jd’の団体を挙げてのレベルアップは急務である。 |
卯木代表は、こんなことを言っていた。「普通にやったら、フリーを含めたGAEAのボリュームには勝てない。ウチ独自のことをやらなければ…」。
分かる。確かにその通りだ。GAEAを除く女子プロ6団体が全てそうとも言える。
しかし、やってることは同じプロレスである。心・技・体、いずれも他団体と並ぶか遜色ないレベルまで鍛えてこそ、次に「独自の」視点が必要になる。
ヤブサカの談話を、やはり一言ずつ引用させてもらおう。
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| カメラを向けるとおどけて見せたヤブサカ。左が薮下めぐみ、右が坂井澄江。 |
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「ウチの新人はドロップキックが奇麗にできないと、ほかの技に頼る。そうじゃなくて、できないからこそキックを一生懸命やる姿を観たい。お客さんにアピールする前に、技を一つ一つ大事にして…。自分も含めてですけど」(藪下)
「ジャガーさん(ジャガー横田=元Jd’の選手兼コーチ。全女で一時代を築いた名レスラー)がいつも言ってくださるんですけど、『あなたたちはどこの団体に出しても恥ずかしくない』と。そういう意味では、3日の全女さんはファングを含めて3人共ダメだったと思います。このタッグリーグを通じて、3人が自分のスタイルを確立できたらいいですね」(坂井)
僕の批判を正面から受け止め、そう答えてくれたヤブサカ。ならばこの先も、二人の成長を見届けたいと思うではないか。 |
2回続けてJd’のネタを書いてしまった。次回は久々に選手のインタビューでも。
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| ■デンチューの取材日誌(2002年10月1日〜10月15日) |
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