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第1回 「日本で唯一の“女子プロレス・ライター”参上!」
第2回 「きっかけは『週プロ』への投稿だった」
第3回 「涙が止まらなかった府川唯未引退試合」
第4回 「スペシャル・インタビュー with ライオネス飛鳥」
第5回 「若きスター選手・浜田文子退団に関する、僕の見解」
第6回 「スペシャル・インタビュー with 井上貴子(前編)」
第7回 「スペシャル・インタビュー with 井上貴子(後編)」
第8回 「『レディゴン』休刊!? どうなる女子プロレス・ライター」
第9回 「祝!『格闘はまり道』スタート 〜5・2ドーム極私的観戦記〜」
第10回 「『ガイア・ガールズ』のパンフに原稿を書いた」
第11回 「北条志乃×田中正明 〜数少ない「同業者」対談〜(前編)」
第12回 「北条志乃×田中正明 〜数少ない「同業者」対談〜(後編)」
第13回 「GAEA事務所に“軟禁”されちゃった(笑)」


2002.9.6 UPDATE


田中正明
text by Masaaki Tanaka



 前回のコラムをアップしたのは8月23日(金)。僕がGAEA JAPANの木村社長にインタビューするべく同社の事務所を訪ねると、氏と入れ代わりにアジャ・コング、豊田真奈美、デビル雅美、ダイナマイト・関西、尾崎魔弓のフリー5選手が部屋に入ってきた…というところで終わっている。今回はその“糾弾会”の、これまで活字にしなかった内幕を書こうと思ったのだが、事態はさらに急激な展開を見せた。

 なんと、8月24日(土)のGAEA埼玉・本川越ペペホール大会に、全日本女子プロレスの堀田祐美子が乱入したのである。「乱入」とは言っても、リングに上がったわけでもなく、選手に殴りかかったわけでもない。チケットを買ってアジャ・コングの試合を観たあとに、ついひとこと言いたくなり、リングサイドまで出て行ってしまったのだ。

 詳細はあとに回して、8月7日(水)の糾弾会の続きを書く。

 いきなり5人の大物を前にしてあせった僕だが、そこへ取締役の杉山由果氏が冷たいお茶を持ってきた(と思う。それともドアが開いていたから顔を覗かせただけか。この辺りは記憶が定かではない)。杉山さんは「選手たちは同じ軍団というわけでもないので、ゴングさんの方で順番を仕切って下さい」というようなことを述べた。さすがに 1 VS 5 では、聖徳太子の半分の能力がないと頭が混乱する。そこで席を分け、まず最初にアジャ&豊田の「元全」チームと向かい合った。これならいつものインタビューや対談と同じ。この時点で、かなり気が楽になった。

 アジャが僕に、なぜロッシー小川のインタビューを載せたのか、という質問を切り出す形で会は始まった。「糾弾」とは、あくまでも誌面で目を引かせるためのフレーズであって、実際は一人として声を荒げることなく、紳士(淑女)的な話し合いを行なった。

 中心は論客のアジャ。豊田にはこちらから質問を振って、全女退団の経緯を改めて語ってもらった。こうなるともう、取材である。聞きたいことは何でも聞いてしまえ。時間が長くなるのも気にせず、僕はアジャ&豊田、交代してデビル&関西&尾崎の言い分をたっぷり聞いた。相手の舌が止まれば質問をぶつけ、最後には5選手が過去の“ピー”話を明け透けに語り合うほど、場は和んだ。特にD・関西の明るいキャラクターが随所に顔を出し、座が爆笑に包まれることもあった。


『週刊ゴング』(vol.932)


 おそよ2時間に渡る会談を終えて、ようやく本題だった木村社長のインタビューへと移る。木村氏は開口一番、「笑い声ばっかり聞こえたけど」と顔をしかめた。僕が「いえ、シビアな話をしましたよ」と答えても、「できた?」と不審そうだ。

 木村社長の主張はこうだ。「21世紀のプロレスは、明らかに始まってますよ。田中さんが全女にいた頃とは時代も価値観もどんどん変化している。それについて行けてないのがお二方(ロッシー小川と筆者)だと思う」。このあとの会話が面白かった。

木村 僕はこれ(ロッシー小川インタビュー)を読ませてもらってね、何に例えようかと思ったんだけど…。潤滑に流れていた高速道路で、ガス欠で止まった故障車に、ワキ見運転した事故車が突っ込んで、大渋滞を巻き起こしたようなもんだよ。

田中 僕がワキ見ですね!? アハハハハ!

木村 (冷ややかな目で)笑いごとじゃないよ。すごい迷惑、そういった意味で。

 帰り際に木村社長にも話したのだが、僕は小川さんのインタビューを行なった日の未明に、ワキ見運転で事故を起こしていた(8月2日、3日の日誌を参照)。もう、おかしくておかしくて仕方がなかったが、笑いを押し殺して取材を進めた。木村氏は「(豊田を)引き抜いた意識は全くない。選手が望んでこっちの舞台に来た」「全女の試合はハード。(永島千佳世、里村明衣子ら)1期生の子たちが再起不能になるんじゃないかという怖れがある。でももう避けては通れない」「元全に対抗する永島のGAEAを背負った思い。思想対決ですよ。中近東の戦争のように、混ざり合うことはないよ」などと、持論を熱く語ってくれた。

 最後の最後には、「田中さんにはこれからチケットを買ってもらって、最前列で(『週刊ゴング』用の)写真を撮ってもらおうかと」という本音(?)も。実に3時間20分にも及んだGAEA事務所訪問は、こうしてお開きとなった。

 アジャや木村社長に何度も釘を刺されたことで、これにて不毛な――ただし、読み物としては抜群に面白い――「全女イズム」論争は終結するはずだった。アジャが、マスコミを通じた堀田の対戦要求を、無視してさえいれば。

 8月11日(日)、GAEAの愛知・名古屋市千種スポーツセンター大会で、アジャは堀田への回答を公式にコメントした。「正式なオファーがないし、私にはメリットが何もない。やりたければ1億円下さい」と大きく出た。が、堀田と戦うことは絶対にない、とは言わなかった。「1億円」がその気持ちの表れだとしても、「まずはオファーを」と言うのであれば、堀田と全女サイドにも交渉の余地がある。

 堀田は本気でアジャと戦いたいのか。その意志を確認しようと、僕は8月17日(土)に全女の試合会場を訪ねた。埼玉・本川越ペペホールアトラス。奇遇にも、1週間後の24日にGAEAが興行を打つ場所だ。ペペホールは西武新宿線の終点「本川越」の駅ビル内にあり、都内からのアクセスも便利だ。わざわざオフの日に堀田を全女事務所に呼び寄せるよりは、ここで話を聞いた方が、アポ取りの手間が省けていい。

 選手の移動バス到着後しばらくして、付き人の西尾美香に頼んで、堀田を客入れ前の会場に呼び出した。まずは僕がBIG5に糾弾された記事を見せ、アジャの名古屋での回答を詳しく伝える。その上で「今後はどうするのか?」と尋ねたら、堀田が答えた。

「アジャは、この問題はGAEAとは関係ない、と言ってるみたいだね。GAEAに来られたら困る? 向こうは怖くないでしょ。これだけ(大物5選手が)固まってたら。それでも私は行ってやりたい。アジャに直接会って、なぜ全女の名前を出したか確かめたい。いいよ、どこでも行くよ。その気持ちがないとこんなこと言えない。それにアジャの件をきっかけにして、その先に、未来の女子プロレスに向けての何かが、突破口があるんじゃないかと見つめてる。失敗してもいいから…。ねぇ、それってゾクッとしない?」

 堀田はやる気だ。それはよく分かった。しかし、会社とじっくり話し合うようにアドバイスしておいた。全女のフロントは堀田を止めるだろう。選手の自発的な行動を応援したいのは山々だが、ヘタをすれば相手の興行をパニックに陥れることにもなりかねない。

 翌週の水曜日。堀田からケータイにメールが届いた。「GAEAのチケットを取って下さい」。賽は投げられた。『週刊ゴング』934号でも書いたが、今にして思えば間抜けなことに、僕は直接、GAEA事務所に電話して8・24ペペのチケットを予約した。「知り合いが行きたいと言っているので」と。堀田は知り合い。嘘は言っていない。これが元で、事件後に堀田と僕の共犯説をGAEAが唱えるのだが、その前に事件の“一部始終”を書く。


『週刊ゴング』(vol.934)
 8月23日(金)。この日は東京・足立区六ツ木小学校前広場にて、全女のオープン(業界用語で「屋外試合」のこと)が開かれるはずだった。ところが、試合前から強い雨が降り翌日に延期となってしまう。開始時間は変更なしの夜7時だ。

 8月24日(土)、僕はGAEAの会場、ペペホールに早めに着き、予約したチケットを買う。係の女性に「どこか端っこでいいですよ」と言ったら、「席はもう決まっていますから」と、あらかじめ用意された券を渡された。南側E列の…20何番だった(まだ堀田は半券を持っているかも)。座席を確認すると後ろから2列目で通路からはやや奥にある。堀田はここに座らず立ち見で観戦することになるだろう。

 こちらの試合開始は5時。その時間差を利用して、堀田はギリギリまでいて足立区に向かう。そういう話だった。セミファイナルの元全VS元全、アジャ・コング&下田美馬組VS豊田真奈美&三田英津子組の一戦を最後まで見届けられればベストだが、その前に時間切れとあらば、せめてアジャの入場時に近くに立ち、無言のアピールを…というのが堀田の狙いだった。アジャは突然のことにビックリするだろうが、堀田の“本気度”は確実に伝わるはずだ。

 僕自身も堀田の気概を感じたからこそ、ここまで付き合った。例えば堀田はオープンの順延を理由に、「チケットをキャンセルして」と言うこともできた。当日のドタキャンでも一向に構わなかった。マスコミの僕になら、GAEAも特別に払い戻しに応じてくれただろう。

 しかし、堀田は来た。試合前にメールが届き、会場の外で落ち合ってチケットと代金4千円を交換する。GAEAの進行はスムーズだし、この日は試合数が少なかったので、6時頃にはセミが始まるだろう、との予測も伝えておいた。あとは堀田の自由である。「選手の意思を尊重する」のが僕のモットーだ。その点では、GAEAフロントと僕は同じスタンスに立っている。彼らが、自分の団体に上がる選手だけを人間扱いし、他団体の選手を「操り人形」と思っているなら話は別だが。堀田は僕にマインド・コントロールされて来たのではない。自分の意思でここに来た。

 セミファイナルの前に休憩があり、ロビーに出ていた観客たちが、トイレや一服を済ませて戻ってきた。ちょうど6時だ。始めに青コーナーの三田の入場テーマが鳴る。次に豊田。赤コーナーの下田。その時、堀田が客席後方の立ち見スペースに姿を現した。最後にアジャが花道を通る。堀田との距離は20メートルぐらいだろうか。もちろん、リング上の4選手は堀田に気付いていない。堀田の右手にはしっかりとチケットが握られていた。

 少し離れたところから堀田と試合を交互に見ていると、まずGAEAスタッフに動きがあった。杉山さんが音響&照明スタッフのいる中2階から覗き込み、真下にいた堀田の存在を確認する。GAEAのスタッフは耳にインカムを付けているので、入口から「堀田が入場した」との情報が関係者に流されたのだ。つられて『週プロ』の須山、新井両記者も現れ、新井記者は堀田の横にピタリと張り付いた。ほかにも『ファイト』の伊藤記者、GAORAの松本ディレクターが堀田の姿を目に留めた。松本さんはわざわざリングサイドに行って、クルーからハンディカメラを譲り受ける。大事な場面は自分が押さえよう、と判断したのか。その間に、広田さくらが堀田の横を素通りした。と思えば、反対側を回って一周し、2度目は長与千種を連れてきた。明らかに偵察のつもりだ。長与は堀田に声をかけず、先程の広田単独と同じように後ろを通っていく。控室からD・関西、山田敏代ら出番を終えた選手たちが、試合を観る振りをして何人か顔を出した。

 広田はリングサイドに行くと、控えに回ってエプロンサイドに立っていたアジャの足元を叩く。何事かとアジャがしゃがむと、広田がヒソヒソと耳元に囁く。試合中だというのにアジャは堀田の来訪を告げられたのだ。この時ばかりはアジャがかわいそうになった。試合に影響がなければいいが。と思ったら、アジャは豊田のジャパニーズ・オーシャン・クイーンビー・ボムで頭から落とされ、完璧なフォール負けを喫してしまう。あちゃ〜、である。

 堀田は多分、このメンバーでアジャが負けるとは思っていなかったはずだ。その不甲斐ない姿を見たせいか、あるいは全女を捨てた豊田の勝利に血が騒いだか、やにわにリングサイドへと歩いていった。うわっ。僕は堀田のアクションを細大見逃すまいと、慌ててデジカメとMDレコーダーを手に彼女の背中を追った。

 堀田が「アジャ〜! チケット買って観に来たぞ〜!!」と怒鳴ると、アジャは御丁寧にもマイクを握り、「チケットじゃなく1億持って来い、バカ!」と吐き捨てた。試合で頭部を打って負けたのだし、何も言わずに控室に戻れば良かったものを。アジャが言葉の反撃を繰り返す限りは、堀田の気持ちは収まらず、この仁義なき“口争”は終わらないと思うが…。

 堀田は「レスラーとしてのプライドがないのか!」と言い放ち、アジャが去るのを見届けると、足早に会場を飛び出して階段を駆け下りた。川越から足立区まで、全女の試合に急がなければならない。GAEAの女性スタッフが「待って下さい。杉山が話があるので戻って下さい」と立ちはだかるが、その細腕で堀田を止められるはずがない。男性スタッフや所属選手もいるのに、なぜ応援を出さないのだろう。堀田は「自分のしたことは間違いじゃない。あとは会社対会社」と言い残してビルを出た。女性スタッフは「止められません! 指示を下さい」とインカムの向こうの上司に問い掛ける。5階から2階まで追ってきた記者やカメラマンも、メインの試合を観るために、「この辺でいいでしょう」と追跡を切り上げた。
 



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