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第1回 「日本で唯一の“女子プロレス・ライター”参上!」
第2回 「きっかけは『週プロ』への投稿だった」
第3回 「涙が止まらなかった府川唯未引退試合」
第4回 「スペシャル・インタビュー with ライオネス飛鳥」
第5回 「若きスター選手・浜田文子退団に関する、僕の見解」
第6回 「スペシャル・インタビュー with 井上貴子(前編)」
第7回 「スペシャル・インタビュー with 井上貴子(後編)」
第8回 「『レディゴン』休刊!? どうなる女子プロレス・ライター」
第9回 「祝!『格闘はまり道』スタート 〜5・2ドーム極私的観戦記〜」
第10回 「『ガイア・ガールズ』のパンフに原稿を書いた」
第11回 「北条志乃×田中正明 〜数少ない「同業者」対談〜(前編)」
第12回 「北条志乃×田中正明 〜数少ない「同業者」対談〜(後編)」


2002.8.23 UPDATE


田中正明
text by Masaaki Tanaka


【第13回】 GAEA事務所に“軟禁”されちゃった(笑)--1

『週刊ゴング』(vol.932)

 本コラムの読者は当然、プロレスファンが多いと思うが、ここ最近の『週刊ゴング』はお買い求め頂けただろうか。特に、取次がお盆休みのため、1日遅れの金曜(8月16日)に発売された932号では、僕がアジャ・コング、豊田真奈美、デビル雅美、ダイナマイト・関西、尾崎魔弓というそうそうたるメンバーに囲まれ、糾弾された模様を掲載している。これは完璧に事実。やらせは一切ない。木村社長にインタビューしようとGAEA事務所を訪ねたところ、木村氏と入れ替わりに、BIG5がぞろぞろと応接室に入ってきたのである。

 順を追って書こう。7月6日、大田区体育館での豊田真奈美の全日本女子プロレス電撃退団と、その翌日、GAEA JAPAN大阪大会に彼女が現れた事件は、低迷が叫ばれる女子プロレス界を揺るがす、久々のビッグニュースだった。この2大会を現場で取材したマスコミは僕一人だけだ(それがことの始まりか…)。

 下の表を見てほしい。これは7・6大田区以降の、プロレス専門3誌(紙)による“豊田移籍事件”の報道を一覧にしたものだ。豊田はGAEAの所属になったわけではなく、あくまでもフリーランスだが、分かりやすく「移籍」と呼ばせてもらおう。


■豊田真奈美“移籍事件”をめぐる、プロレス専門3誌(紙)の報道比較表
※各誌の版型は、『ゴング』が創刊以来の天地がB5、左右がA4の変形サイズ。『週プロ』は前編集長の時代にサイズアップしたA4版。『ファイト』はタブロイドの新聞。同じ1ペ−ジでも文字量が異なることを付記しておく。



 見ての通り、『週プロ』のページ数がダントツに多い。佐藤正行編集長自ら、豊田を表紙に起用して巻頭特集を書くほどで、ほかの編集部員並びにフリーライターも、男子と女子を掛け持ちで担当できる人ばかりだ(“女王陛下”に睨まれた、女子プロ嫌いの例外はいるけれど)。その分、女子オンリーの僕なんぞより格段に、書き手一人当たりの作業量は多い。

 一方の『ファイト』はフリーの伊藤記者が、主要3団体の首都圏での興行を一人で回っている。その団体とは全女、GAEA、アルシオン。加えるとしたら神取忍のいるLLPW。よほどの話題性がなければ、JWP、Jd’(現在はK−Jd’に改名)、NEOの試合は観に行かない。インタビューも主要団体の選手かフロント、大物フリーに限っている。

 そう。男子の団体とは違って駒の少ない女子プロは、よくフロントの発言が取り上げられる。アルシオンの小川宏社長(通称=ロッシ−小川)やNEOの甲田哲也社長は、マイクアピールはもちろん、時には試合に出場してしまうリング上の登場人物でもある。ほかにも全女の今井良晴(ながはる)広報兼リングアナ、GAEAの杉山由果代表、Jd’の卯木基雄代表と、ファンに顔を知られた名物フロントが各団体に存在する。LLPWは選手の風間ルミが社長を兼務して陣頭指揮を執っている。

 GAEAは今年の春に会社組織の統廃合があり、以前は「統括」と呼ばれていた木村一廊氏が代表取締役社長となった。杉山代表、長与千種とのトロイカ体制で、旗揚げ当初からフロントの要であった木村統括は、肩書きが社長になり、長与が「最近はマッチメイクを外れて一選手に徹している」とコメントしたことから、現在はGAEAの最高責任者かつフロントの顔と目されている。試合会場では常にリングサイド最前列の本部席に座り、音響効果を担当。フリーのアジャ・コングやラスカチョに「木村ぁ、このカードを組め」と絡まれるのだから、確実にマッチメイクの決定権を握っているはずだ。となれば、何かことが起きた時には、木村氏に訊くのが手っ取り早い。

 豊田の移籍騒動を受けて、真っ先に木村社長のインタビューを載せたのは『ファイト』だった。いかにも事件の匂いに敏感な同紙らしい。見出しには「豊田のガイア参戦でささやかれるさまざまな疑惑」「木村一廊社長に核心を直撃」「裏工作があったなら『全女が1番!』とは言わせなかった」と、怪しい文字が躍る。疑惑とは、GAEAが全女在籍時から豊田に声を掛け、引き抜きをしたのではないか、ということだ。木村社長はこれを否定。あくまでも誘ったのはフリーのアジャである、という主旨の発言をした。

 その翌週には『週プロ』が、佐藤編集長を「聞き手」として木村氏にインタビュー。ここでも氏は、自らが切り出す形で「キーパーソンはアジャだった」と述べている。『ファイト』の取材を受けたことで、思考が整理されたのだろう。

 この2週に渡る露出がなければ、僕は木村社長の話を聞こうとは思わなかった。あくまでも主役はリング上の選手たちであり、フロントは補足的な短いコメントだけ、マスコミに出してくれればいい、というのが僕の考えだ。『ゴング』のページをもらって最初に考えた企画が、里村明衣子&浜田文子の対談だったことからも、そのことは理解頂けるだろう。しかし、2件の木村社長インタビューを読んで、そうも言ってはいられなくなった。確実に矛盾した点と、憶測だけで語っている部分があり、それを追及したい気持ちに火が点いてしまったのだ。正しいことを明らかに。これはもう、僕の名前から来る性分なので抑えようがない(笑)。


『週刊ゴング』(vol.930)
 まず『ファイト』で気になったことが一つ。7・7大阪で、アジャが突発的に豊田をリングに呼び寄せた時、豊田の(昔の)テーマ曲がタイミングよく流れた。それを氏に突っ込んで訊いた箇所である。木村社長は次のように答えた。

「アジャが『言った瞬間にかけてくれればそれでいい。理由はない』と指示したCDを、スタッフが預かってたのは事実です」

 その日は『ファイト』は取材に来なかったから、僕の『ゴング』での試合レポートを読んだか、もしくはネットでファンの書き込みをチェックしたのだろう(『週プロ』は、豊田が入場曲をバックに姿を現したことには1行も触れていなかった)。緻密な演出で知られるGAEAが「理由はない」というCDを預かり、メインイベント終了後にかけるとは考えにくい。『ファイト』の着眼点は良かった。ただ、現場にいなかったことで具体的な証拠を挙げられなかったのは惜しい。

 次に『週プロ』で気になったのが、豊田が移籍した理由について、さもギャラの問題があったかのような記述をしたことだ。編集長の巻頭特集しかり、それを受けた翌週の木村社長インタビューしかり。後者の号では、全女の今井広報も取材を受けている。ならばその際に、ギャラの件を確認するべきだった。僕は豊田真奈美を知る者の一人として、彼女が「金のために動いた」とは絶対に思わない。そこですぐさま全女に連絡。「(H9年9月の)倒産前の未払いはあるけれど、新生になってからは遅れても出している」という証言を得た。こんなことは調べればすぐに分かるのに、過去の男子の例や思い込み、一般論で書いたとしか考えられない憶測記事に、当事者の選手ならずとも首をひねった。

 いずれはアジャ&豊田の「元全」(もとぜん)から真実を聞き出してみたい。だがその前に、もう一つ整理しておきたい問題があった。

 アジャ・コングはGAEA7・14後楽園大会で「全女イズムがこのリングを支配する」と堂々アピール。GAEAにとって禁断のライバル団体の名前を連呼したことで、大いに物議を醸した(僕は聞いていて楽しかったが)。その場でこうも言った。「全女を否定してアルシオンなんてもんもやってみたけど、大失敗しちまってさ」と。これに対するアルシオン側の声がどこにも載っていない。僕はアルシオンの7・21後楽園ホールで生え抜きのAKINOにアジャ発言を伝え、面白い答えをもらった。だが、誌面の都合でカットせざるを得なかった。今度は正式にAKINOの取材を申し込もう。それは里村&文子に次ぐ“新世代プッシュ”シリーズとなる。6月末には中西百重(全女)の「お見舞いインタビュー」をしたから、短期間で僕が推す四天王の取材を相次いで行なうことになる。ところが『ゴング』編集部の反応が鈍い。AKINOはその後楽園大会で膝を負傷して欠場中だから、取れても中西と同じモノクロ1ページのお見舞い企画だ。よし、だったら10・20川崎のプロデュースを買って出たロッシー小川も付けよう。これでなんとか2ページを確保。アルシオン小川社長に取材を申し込んだ。
 




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