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2002.8.1 UPDATE
田中正明
text by Masaaki Tanaka
| 【第12回】 北条志乃×田中正明 〜数少ない「同業者」対談〜(後編) |
司会=栗尾知幸(Slow Train編集長)
田中が豊田真奈美を怒らせた一言 |

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――前編は北条さんがライターになるまでの経緯や、『レディゴン』の中で北条さんがベビーフェースであり、田中さんがヒールを目指していたという互いの役割分担の話でした。後編は、取材対象とトラブルを起こした際の対処法などをお聞きしようかと。 |
北条 トラブルはねぇ、発生するんですよ。
田中 アハハ。
――原稿に書いたことについて、選手から「これは違うだろ」と文句を言われる類いですか。
北条 いや、それは田中君だけでしょう(笑)。
田中 「○○が怒ってるらしい」という噂は聞くんだけど、それを面と向かって言ってくる選手はいませんでしたね。雑誌が出た直後に選手と会うことって、意外と少ないんですよ。プライベートでの選手との付き合いもほとんどないし。現役選手で、たまに食事に行くのは吉田(万里子)さんくらい。彼女は僕の書いたものを旦那さんと一緒によく読んでるらしくて。「田中君が、またこんなキツイこと書いてるよ」とか(笑)。全女では向こうが先輩だったけど、学年で言えば同い年ですから。
北条 私も仕事以外で選手と話すことは、電話ですらもないんですよ。一度だけ三田英津子の家に招かれて、そのことはあとで原稿に書きました。あれは例外中の例外。
田中 あの記事は大好評でしたね。選手の意外な素顔が見れたと。
――お二人とも、あえて選手から離れたスタンスを取っているんですか。
北条 ムキになって「選手との付き合いはしない」と思ってるわけじゃないですよ。伊藤薫と、お互いの愛犬を掛け合わせたこともあるし。でも、元々プロレス村の住人ではないから、完全には浸かり切れないというか、距離はあったと思います。
田中 逆に不気味な時がありますよね。あんなに厳しく書いたのに何も言ってこないぞ、と。読んでて何も言わないのか、読んでいないのか。それもまた癪に触るし。
北条 アハハハ。選手もプライドがあるから、『レディゴン』ごときに書かれたことを気にしている風には見せない。
――選手の側に主張が感じられない場合、こっちから叩いて響かそうという試みをしましたよね。例えば、昨年の正月号に載った編集部の座談会。
田中 あれで豊田真奈美に嫌われた。「豊田は自分で言うようにオバチャンだから」という僕の発言が載ったら、「全国誌にこんなこと書かないでよ。地方のファンはこれしか情報源がないんだから」と。どうやら実家(島根県益田市)のお兄さんか誰かが読んで、何か言われたらしいんですね。
北条 田中君は「豊田さんは最近、太ってきた。昔のキレがない」と思ったわけですよ。そこで「プロならば最低限、自分のベストコンディションを保つ努力をしなければならない」と警告したかった。それは分かるんです。でも後日、怒った本人を目の前にして「豊田さんは太股の肉がたるんでる」というような言い方をしてしまったの。それは怒りに油を注ぐよ、田中君が悪いよ、と私も言ったんですけど。
田中 正直者なんですよ(笑)。
北条 またそんなことを。もうちょっと言葉を選んでね、「豊田さんがもう一度トップに立ちたければ、身体を絞った方がいいですよ」と言えばいいんであって。田中君が言ったことに向こうがムカついたら、そこで取材がストップしてしまう。せっかくテーマはいいのにもったいないじゃないですか。まあ、それも面白いんだけどね。
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| 『Lady's週刊ゴング』(vol.62) |
田中 あの「オバチャン」発言のあと、自ら立候補して豊田真奈美のインタビューをしたわけです。会って「おはようございます」と挨拶したら、豊田はプイと横を向いて無視したんですよ。あ〜、分かりやすいなぁと(笑)。
北条 その会うまでが一悶着あって。全女は『レディゴン』の取材ということで、勝手にインタビュアーは私だと思い込んでたんですよ。いつも上の選手を担当していたから。
田中 僕が電話で申し込んだのにね。
北条 当日になって田中君だと分かって、広報から私のところへ連絡があった。「豊田さんが『行かない』と言っている」と。そう言われても、私は編集部の人間じゃないし、関係ないじゃないですか。あとは全女と『レディゴン』の問題だから。で、なんだかんだ言いつつ現場に行ったわけだから、その辺は全女の仕切りも悪かったと私は思います。
田中 とにかく席に着かせて、なだめすかして60分間、話を聞いた。あとで写真を見たら笑顔も撮れている。あの60分は、ライターとして貴重な時間でしたね。元々、豊田真奈美は僕のフェイバリットなレスラーだったわけだから。
北条 それは分かるんだけど…。最終的には私が豊田さんと会って、田中君の原稿に手を入れたんだから。私を巻き込まないでよ(苦笑)。
田中 アハハ。だからそのインタビューは、僕でもなく北条さんでもなく、荒井澄司(あらい・すみし)というクレジットにしたんです。これは映画通の人には笑ってもらえると思うんですけど(笑)。要するに僕の“トラブル対処法”は、相手が怒っているという情報が入った時に、無理やり取材を入れて本人に会うこと。そこで理解し合えなければしょうがない。堀田祐美子に、試合後に「あんな危ない技を使っていたら、いつか怪我人が出ますよ」と言った時もそう。堀田の控室での怒りが多田さん(全女・広報)から北条さんに伝わり、宮地さんを経て僕のところに回ってきた。たまたま『レディゴン』で「女子プロレスラー全員インタビュー」を予定していたので、じゃあオレが堀田を担当する、と。それで全女の事務所に行ったわけです。
北条 で、私はドキドキして。別の選手の取材で全女に行った時に、堀田ちゃんに「大丈夫だった?」って聞いたら「うん、大丈夫、大丈夫」って。
――田中さんとしては、取材に行く時に葛藤はなかったんですか。「やりにくいなぁ」とか。
田中 う〜ん。やりにくいからこそ、面白くなる予感があるわけで。そこで二の足を踏むことはないですけど。ただ、全女系のベテラン選手は、僕なんかペーペーだと思ってるはずなんですよ。
北条 元は全女のスタッフだからね。そういう人に雑誌で何か書かれて余計にムカついたりとか。そういうことはあったでしょうね。
――書く時に、相手が先輩であるか後輩であるかで論調が変わったりしたことは?
田中 それはないですね。
北条 うん。田中君はその辺、貫いてるよね。相手が先輩でも負けずに書き続けたと思うし。それに対して、ハッキリと正しいことを書く人だと、選手が認めてきた部分もある。悲しいことに、今の時代、女子プロレスラーに厳しいことを書こうと思えば、いくらでも書けるんですよ。
田中 書ける、書ける。
北条 そこをどのくらい突いていいのか。野放しにできないことはいっぱいあるから、要所要所で田中君が言うような厳しい意見が必要だと思います。 |
北条が工藤めぐみに再度謝りたいこと
――北条さんがトラブルを抱えたことはないんですか。
北条 う〜ん、私は別に。あっ! トラブルではないけど、失敗談ならある。
――ぜひ聞きたいですね。
北条 これはあとで本人にも謝ったんですけど…。『女子プロレス・グランプリ』の初仕事でFMW(=当時。現在はタレント)の工藤めぐみさんにインタビューした時に、頼まれた仕事で仕方なく行って、「私、FMWって嫌いなんですよね」って言っちゃったんですよ。
田中 うわぁ〜(笑)。選手や団体への興味のあるなしは、誰にでもありますけどね。その分、北条さんは思い入れの深い選手に対して、熱のこもった文章を書くんだけど。
北条 私の場合は特に、そういうのが激しいかも知れない(苦笑)。工藤さんには完全に裏目に出て、「私は新日が好きで、大仁田(厚)さんのプロレスには全然、興味がない」と。そうしたら工藤さんは「はあ…。そうですか。人それぞれですから、そういう人もいますよねえ」って。当時、工藤さんは同期のアジャ・コングに対戦を迫っていて、アジャ選手はWWWAのチャンピオンとして最強を誇っていた時期だから、「アジャさん強いですよ。勝てますか? いい試合できますか?」と。今思い出してもゾッとするほど挑発的なことを、山のように言ったんです。そのあと『女子プロGP』は団体担当制になって、私は全女を任されたから、工藤さんと会う機会はなくなったんですけど。仕事を重ねれば重ねるほど、私はなんて失礼なことをしてしまったんだろうと。
――ハハハ。
北条 その年(1993)の暮れにアジャVS工藤戦が実現して、これがすごくいい試合だったんですよ。「もう、私ったらなんてことを!」と。あんなに人に対して恥ずかしくなったことはないですね。何年か経って、『レディゴン』で工藤さんとジャガー(横田)さんの対談を取材した日に、「私、前にすごく失礼なことを言ったんですけど…」と話し掛けたら、「ああ、新日が好きな方ですよね」って。
田中 アハハハ! 覚えてた。
北条 申し訳なかったですと謝ったら、あの優しい顔で「いいえ」って。向こうの方が全然、大人だった。工藤さんに会ったらもう一度謝りたい。それが最大の失敗ですね。
田中 なんだ。『レディゴン』があれば「北条志乃のお茶しませんか?」に呼べたのに。惜しいですね。
北条 言える。よし、『レディゴン』復活だ!(笑) |
『レディゴン』の女子プロレス界における役割
――『レディゴン』が休刊して選手たちの反応は?
北条 う〜ん、どうなんでしょうね。個人的に喋った相手は「淋しいじゃん」とか「北条さんはもう会場に来ないの?」という程度。私がどうとかじゃなくて、専門誌がなくなって業界はどうなるの、という危機感が希薄かもしれない。
田中 多分、広田さくらや(ライオネス)飛鳥さんが、試写を見れなくなって残念がってるくらい。
――豊田選手の言葉にもあったように、地方の人は雑誌でしか情報が得られない。そこで潜在的なシンパを掴んでおいて、いつか興行と相乗効果で盛り上がるのが、定期刊行物の役目だと思うんですね。それがなくなってしまうと先につながらない。自分の観たかった試合がどう書かれているか、気になるじゃないですか。それはどのジャンルの雑誌も同じです。
田中 僕は編プロにいた頃、映画の情報ページを担当したことがあるんですけど、映画の場合はラストシーンを克明に書くことはできない。でもプロレスはそれができて、地方の読者も会場で観てきたかのように感動を共有できる。そこが好きなんですよ。僕が「ラップアップ」を担当していた頃は…。例えばA対Bのタイトルマッチを、15字×40行で書くとしますよね。まずは、なぜ二人が戦うことになったか、それがどういう意味を持つか、いつ以来の対戦か、などの背景を10行ほどでおさらいします。次にファイト内容がおよそ15行。試合の流れを変えた攻防と、フィニッシュの技名を必ず載せます。ファンは好きな選手がどの技で勝ったか知りたいものですから。そして勝者、できれば両者のコメントを抜粋して10行ぐらいで伝え、最後にその試合の短評や、今後の展望を5行程度で締める。そういう書き方をしていました。記者がどう見たか、という主観を40行丸々書いたら、その試合を観ていない読者にはチンプンカンプンでしょう。大部分を客観的な記録としてまとめ、それでいて記者の主観もチクリと盛り込む、ということを僕は心掛けていました。「ラップアップ」は署名原稿ではありませんが、知り合いのライターさんから「あの試合は田中君が書いただろ」と褒められたことがあります。
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| 『Lady's週刊ゴング』(1996.10.13) |
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――「ラップアップ」はその1ヵ月の各団体の試合が、ダイジェストで並んでいたじゃないですか。実は『レディゴン』全体が、女子プロ7団体の動静を総括する場だったんですよね。勢いがあるのはどこか、とか。それは業界にとって必要なことで。週刊誌では、7団体の情報が同時に載ることは、あまりないでしょうから。
北条 そうですね。各団体のホームページにも、試合結果や選手のコメントは載りますけど、それは団体側の主観…いわゆる“大本営発表”が混ざっていますからね。自分が行けなかった試合の感想を聞くのに、団体の人に電話してもしょうがない。やっぱり田中君とかを捕まえて、どうだったのか聞かないと、客観的なことは分からない。
――客観性は大事ですよ。団体の広報紙を取って、「今度の試合は頑張ります」なんてコメントを読んでもつまらないわけで。雑誌はそれだけじゃないから面白い。本が出たあとで、ライター個人の見方に対して、読者が「自分もそう思った」とか「それは違う」という反響が来たことは?
田中 プレゼントの応募ハガキに、細か〜く感想が書いてあったりして、毎号楽しく読んでましたね。
北条 そういう論議を提供する場にも、『レディゴン』はなっていたと思います。その役目はこの先、誰が負ってくれるの?と。そもそも『レディゴン』には、女子プロレス界の公式見解みたいな役割があったと思うんです。
――ああ、なるほど。
北条 この一冊で女子プロレス界の今が分かる、と。表紙を見て「今はこの選手が旬なのか」とか、インタビューを読んで「この選手はこんなことを考えていたんだ」とか。その雑誌がなくなったことは、女子プロレス界にとってすごく大きな損失だと思う。別に自分たちがやってきたことを「偉い」と言ってるわけじゃなく。プロレスは大河ドラマのようなもので、その流れが会場に来ない人には伝わらないということを、選手たちは分かっているのかな。例えば誰かが引退する時に、その情報をどれだけ世間にアピールできるか。『レディゴン』があればカウントダウン企画や(名勝負の)プレイバックをしてあげられるけど、週刊誌ではそこまで細かく載らないでしょう。私は自分が仕事を失ったことよりも、選手たちがかわいそう。 |
小説のような女子プロレスが観たい!
――北条さん自身は、今後どうされるんですか。
北条 私はもう、『レディゴン』がない以上、どうしてもこの世界で仕事を続けたいとは思いません。誘いがあって、たまたま自分がやりたいテーマなら、その話に乗るかも知れない。でも今は静観しようかな、という感じですね。もちろん個々の選手には頑張ってほしいし、女子プロレス界全体への愛はあります。
田中 たまに男子プロレスを観にいくと、「やっぱり女子は面白い。いや、もっと面白くできるはずだ」と思うんですけどねぇ。女子の方がナマの感情が出るんですよ。
北条 そう。感情が観たいと思うんですよ、誰しも。今、中西百重が女子プロ界の一番人気だと思うんですけど…。
田中 意義なし。
北条 彼女はずっと、浜田文子、里村明衣子と共に新世代のリーダーとして並び称されてきたわけです。文子と里村にはそれぞれの形があるんですけど、モモには形がないんですよ。その時々の状況に応じて、技も表情も刻々と変化するんですね。これからどれだけ変わっていくかも分からない。そこにファンが感情移入してると思うんです。本人は意識してやっているのかも知れないけど、観る側のイメージとして、そこに生身の彼女を感じるんですよ。それがモモの魅力だと思う。
――そういう興味深い選手のことを、一冊丸々、単行本に書いてはどうですか?
北条 いいですね。豊田真奈美だったらやってみたい。井上貴子とか。私なりの世界を出せる仕事であれば。試合レポートは得意じゃないんですよ。技の名前が分からないから。そこは田中君と正反対のところで。私、一言で言えば「プロレスで文学したい」派なんです。だから、文学できるような仕事ならチャレンジしたいですね。
田中 『別冊宝島』から10年でしたっけ。これは前から聞きたかったんですけど、北条志乃独自の文体は、いつ頃確立されたものですか?
北条 いつということはないけれど、ふと、自分の書いたものはなんて大ゲサなんだろうと(笑)。ちっぽけなことを、よくぞこんなドラマに仕立て上げる才能があるなぁ、なんて自画自賛して。それは『女子プロGP』の頃に気付いたの。最も力が入るのは、選手の引退。バット吉永とか、みなみ鈴香とか、そういう時の自分の文章がすごいんですよ。次から次へとカッコいい言葉が出てくる。それは全てのジャンルには通用しないけど、プロレスという世界ではありだな、と。
田中 引退ものに力が入るのは分かりますね。僕も府川(唯未)の引退カウントダウンがライターとしてピークだったから。そういう思い入れのある対象を失ったことで、昔、思い入れのあった豊田真奈美に、必要以上に噛み付いた部分はあったかも知れない。
北条 田中君はどうするの? これから。
田中 ヤバイですねぇ(笑)。でも仕事が減って改めて分かったことは、僕は雑誌が好きなんだなぁ、と。平日は暇だから毎日コンビニや書店に行って、新しい雑誌が出ていないか探すんですよ。それこそ入口近くのレディコミから奥のエロ雑誌まで。それと、僕は北条さんのようにボキャブラリーが豊富じゃないので、長いものを書くには無理がある。子供の頃からマンガが好きで、プロレスはマンガに近いところがあると思ってるから、マンガ調の文章を試すにはプロレスが適している。当分、この業界にしがみつきますよ。さすがに最近は文章作法にも目覚めてきたので、あまり「!」は使わなくなりましたが。
北条 文章作法って、ライターを続けるごとに難しくなっていくよね。その雑誌好きというところも、田中君とは正反対。私は書店に行ったら、ずっと小説の棚の前にいるんですよ。そこに何時間でもいられる。
田中 ああ、僕は違います。雑誌、ノンフィクション、マンガ。
北条 私はノンフィクションって嫌いで、実はスポーツ・ノンフィクションもあまり読まないんですね。今読んでる小説があれば、『レディゴン』が届こうが『Number』を買おうが、その小説を最優先に読む。とにかくフィクションが好き。エッセイも嫌いなんですよ。選手の自叙伝があるなら、事実だけじゃなく、読んだ人が「すごい!」と思うような肉付けがあってもいいんじゃないか、というのが私の考えです。読み物として面白ければ。私がプロレスに求めているのは、そういうフィクションに似たドラマ。サラ・バレツキーって読んだことある? 『私がウォシャウスキー』の。
田中 映画は観ました。キャスリーン・ターナーの。内容は忘れましたけど。
北条 そのウォシャウスキーさんの捜査は決してスマートに行かないんだけど、すごいバイタリティで不正を暴いていく。苦境に立たされ、落ち込み、這いつくばったとしても、最後には事件を解決する。読んでて力が湧いてくるの。そういう達成感、ロマンをプロレスに求めてる。私が思い描く“フィクションのプロレス”の方が面白いから、現実のリング上がつまらなく見えることがあるんですよ。自分だけが先走って、みんながついてきてくれない。
田中 まるでマンガや小説みたいな展開だけど、そこにいるのは鍛えられた女性たち、つまりノンフィクション。そういう女子プロレスが観たいのは、僕も同じ気持ちです。
――女子プロレスに託す夢は尽きることなし。お二人にとって、それぐらい愛情を注ぐ対象であるということですね。意見がまとまったところで、そろそろ幼稚園に未蘭ちゃんを迎えに行く時間のようです。北条さん、ありがとうございました。
北条 これは余談ですが、北条志乃は、初めは“神秘の主婦”だったんです。それが『レディゴン』では座談会に顔を出してニコニコ笑ってたり、子供が生まれたからってその話を編集後記に綴ったり。「そんなことじゃ北条志乃は終わりですよ」と、ある人に言われました。いいんです。私はみんなと一緒にプロレスを語るところにいるんです。でも、そう言われてみると、昔は自分の世界に入り込んで、夢の物語を紡(つむ)いでいたんだなあ、と。改めて思いましたね。 |
●対談後記
北条サザエと田中カツオのライター談義。楽しんで頂けただろうか。この原稿をまとめている最中、豊田真奈美が全女を電撃退団し、GAEAに戦場を移すビッグニュースがあった。その時、『週刊プロレス』は豊田のフリー第1戦を表紙に器用して、佐藤正行編集長が巻頭特集を書いた。対する我らが『週刊ゴング』は、最終ページに程近いカラーグラビアに、外様の僕が担当した試合レポートを載せただけ。専門2誌の“女子”に対する扱いの差は歴然としている。『レディゴン』があればなぁ、と思うところだが、僕はもう、死んだ子の歳を数えるのはやめにした。北条さんとの対談を企画したのは、僕が当欄で『レディゴン』の記憶を綴る最終回にしようと考えたからだ。次回より、このコラムでは女子プロレス界の“今”を伝えていく。フリーのもの書きとしては割に合わない商売となるだろうが、自分の会いたい人に会え、聞きたいことを聞ければ良しとしよう。そういう旨味がなければこの職は楽しめない。楽しんで働くからこそ、「仕事」ではなく愉快な「お仕事」なのだ。 <田中>
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