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10年選手ザ・ブラディーのいい仕事
['04年10月6日/東京・後楽園ホール(全女)/前川久美子 VS ザ・ブラディー]
10月13日発売の『週刊ゴング』1043号にて、あの“GK”こと金澤克彦編集長が退陣。次号より吉川義治新編集長が指揮を執る。そのことと、このスロスポの更新が遅れたことは全く関係ございませ〜ん。
では本題。全女10・6後楽園のメインイベント、高橋奈苗&Hikaru組VSアジャ・コング&A・KONG組の「WWWA世界タッグ王座決定戦」は、“今まで何度も”修羅場を潜ってきたHikaruの驚異的な粘りによって、今年下半期のベストバウト候補に数えられる熱戦に終わった。
※『今まで何度も』は、Hikaruのテーマ曲の一つ。念のため。
しかし、この日の興行は平日とあって東西南北どの客席もガラガラ。そもそも日曜昼の興行でさえ5〜6割の入りに落ちている全女は、あとがない状況に追い詰められてきた。僕が一ファンだったとしても、今の全女に5千円払えるかどうかは疑問だ。
その理由は、選手の減少によるカードのマンネリ化と「お笑い」場面の増加にある。現在の全女の所属選手は渡辺智子、前川久美子、高橋奈苗、サソリ、前村早紀、Hikaru、そしてA・KONGの7名(ミゼットは除く)。プラス、練習生として、出戻りの廣瀬桂子がセコンドの仕事をこなしている。
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この中で「全女らしさ」を継承し、毎月の後楽園で身体を張って闘っているのは、奈苗とHikaruの二人だけと言っていい。ベテランの渡辺と前川はカード次第で試合内容に大きく差がある。中堅のサソリは、AtoZの西尾美香と絡む時だけ熱くてあとはダメ。小兵の前村は6月のHikaru戦が良かったものの、以降は大事な試合をハズしまくっている。
前村はまだ若手の範疇なので、張り合って共に伸びて行く同世代のライバルが必要だ。その存在を未来(AtoZ)に託したのだが、両者の余計なプライドが邪魔して物語は続かなかった。二人には今も後遺症が残っているはずだ。
「お笑い」に関しては、『週刊ゴング』1041号の「俺にも言わせろ!」で書いた通り。1回の興行に、笑いを取ろうとする試合は一つで十分だ。それがいくつも続くと観ているほうは辟易する。ことNEOに限っては、小会場での小劇団っぽいノリが受けているが、NEOマシンガンズが全女に出場するとかなりの違和感があった。
自前の選手だけでは興行が打てないのだから、他団体やフリーに頼るのは仕方のないこと。だが、その人選にテーマがなければトイレタイム=捨て試合が増えるだけだ。
10・6後楽園のセミファイナル、前川VSブラディーも、大部分の観客にはテーマなき戦いだったろう。
ザ・ブラディー、本名・加藤直美は平成6年11月3日、全女の神奈川・いすゞ自動車大和工場体育館大会でデビューした。早くに全女を退団した加藤は、平成8年に旗揚げした吉本女子プロレスJd’において、マスクを被ったザ・ブラディー・フェニックスとして再出発。その後は覆面を脱いだザ・ブラディーとしてJd’のトップヒールに君臨した。今年4月、JDスター女子プロレス(旧Jd’)の路線変更に伴い同団体と決別し、ファング鈴木ら同志たちとTeam OKなるユニットを結成。フリーとして全女、NEOなど数団体に参戦するほか、9月20日には東京・北沢タウンホールでTeam OK旗揚げ戦を行なったばかりだ。
一国の主となり、デビュー10周年をひと月後に控えたブラディーが、古巣・全女の後楽園大会でセミファイナルのシングルマッチを務める。相手は新人時代にしごかれたであろう先輩の前川。そのシチュエーションに、僕はなんとなく期待するものがあった。
今年6月20日、JWPの東京・八王子市民会館大会で、ブラディーは大ベテランのジャガー横田と対戦した。この試合をリングサイドで撮影していた僕は、師であるジャガーの威嚇を軽妙にいなすブラディーを見て、彼女なら現在のジャガーに何ら劣るものはないと確信した。その日はジャガーの勝ちだったが、次に戦う時は結果は覆るし、覆してほしいと思っている。
前川と対峙したブラディーは、時折笑みを浮かべて先輩を挑発し、最後は強烈なキックの波状攻撃に沈んだ。試合後のブラディーのコメントで、この一戦を振り返ってみる。
「前川さんとのシングルは地方に続いて2回目。その時は最悪の試合で、前川さんに『あんた何年?』って聞かれたんですよ。私は10周年で、今の女子プロ界ならレスラー生活の半分。最もノってる時期じゃないといけないと思うんです。前回は前川さんを怒らすことができなかった。今回もちょっとしか怒りを引き出せなかった。それが私の未熟さ。昔の全女ならこんなに簡単にセミやメインを取れなかった。それを、フリーのユニット組んでる自分でも上げてもらえるんだから、これからも毎回セミやラストに行けるような、そういう価値のある選手になりたい。今後も全女さんに上がりたいので、次に繋げる試合にしたかったんですけど…。どうですか?」
そう質問されて、僕は「良かったよ。でも、それまでの試合がひど過ぎたから」と答えた。ブラディーは「じゃあ、ダメってことですね」と肩を落としたが、そうは言っていない。タイトル戦にもかかわらず、股間攻撃の応酬に終始したNEOマシンガンズVS極ラブ同盟(渡辺智子&井上貴子)でダレきった場内の空気を、休憩を挟んでまともなプロレス会場のそれに戻したのは、前川を「ちょっと」でも怒らせたブラディーの功績だ。Hikaruの大爆発に繋がる“火種”を残しておいたことで、この日のブラディーは十分にいい仕事をしたと思う。(記:10月13日) |
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