ご感想はこちらまで
|

ミゼットプロレス、後楽園に帰る
['04年8月29日/東京・後楽園ホール(全女)/ミスター・ブッタマン VS プリティ太田]
え〜と、7月は『レディゴン』の編集で忙しく、8月はその完成後の怠惰な日々が続き、気付けばもう9月。2ヵ月以上ぶりの更新は、『週刊ゴング』で書きたかったがスペースのなかった、ミゼットプロレスの“後楽園復帰”についてだ。
ミゼット(midget)とは小さい人…いわゆる小人(こびと)のことで、電車賃が半額になる小人(しょうにん)とは異なり、成人になっても身長があまり伸びない体型の人を言う。この辺、書き方が難しいな。「コビトは差別用語ざます」などと、どこぞの婦人団体から“言葉狩り”に遭いそうで。
多分、フジテレビの『全日本女子プロレス中継』があった時代に、そんな指摘を実際に受けたのだろう。昭和40年代には「女子・小人プロレス」と呼ばれてセットになっていた興行も、いつしか女子だけにスポットライトが当たり、小人の試合はテレビに映らなくなった。それこそ差別だっちゅー話。リトル・フランキーがフジテレビの『ラスタとんねるず』にレギュラー出演し“名誉回復”を果たしたのは、クラッシュ・ギャルズの結成から10年が過ぎた1994年のことだ。
そのリトルさんが2002年8月13日(寮で遺体が見つかったのは15日)に44歳の若さで亡くなり、奇しくも同じ年の4月28日に角掛留造が引退したことで、ミゼットプロレスは壊滅状態に陥った。残るミスター・ブッタマン一人では、試合が組めなくなってしまったのだ。
その後、全女を辞めて、また戻ってきたブッタマンは、事務所の電話番、試合会場の雑用、CMの着ぐるみの仕事、時には映画『花と蛇』で杉本彩の股間を責めるゲンコツ仮面などの役をこなしながら、日々を過ごした。全女の自社ビルが借金のカタに取られた今は、寮を失い新事務所に寝泊りしていると聞く。
苦節ン年。ついに、やっと、ようやく、ミゼットの新人レスラーが現れた。今年5月14日、北海道・倶知安町民体育館で、茨城県出身の26歳、太田ヒロユキ(博之)がデビュー。地方巡業でブッタマンと連戦をこなした。
ブッタマンは太り過ぎな上に、足の病気にかかり、階段がなければ自力でリングに上れない。そこで太田はブッタマンを場外に落とし、リングアウト勝ちを収める頭脳プレーで白星を重ねてきた。ただし、ブッタマンの「もう1回」という再戦要求を受けて、必ず負けてしまうのだが。
北海道巡業から帰ってきて、6・6後楽園のインフォメーションコーナーで、観客にデビューを報告した太田の試合を僕が初めて観たのは、6月26日、静岡・富士川町総合体育館にて。その日の太田はタイガーマスクの覆面を被るショーマンぶりで、目立ちたがり屋の本性を発揮した。うん、そうでなくちゃプロレスラーは務まらない。
そして8月29日。角掛引退から2年4ヵ月ぶりに、ミゼットプロレスが後楽園ホールに帰ってきた。太田は松永高司会長の命により、故プリティ・アトムにちなんだプリティ太田にこの日から改名した。
昨年、とある上映会でミゼットプロレスの6人タッグマッチの映像を見たが、試合のレベルの高さに唸ったものだ。身体は小さいけれど、みな鋼(はがね)のような肉体を持つ超人だった。
メキシコには、スター選手(エストレージャ)の衣装を模したミニ・エストレージャという小人レスラーが何人かいるが、まさにそういう感じ。前述の6人タッグ戦では、初代タイガーマスクのように華麗なドロップキックを放つ選手もいて、打点は低いけどチョー高い(伝わるかな、このニュアンス…)。小人同士だからこそ表現できる、独特の世界がそこにあった。
8・29後楽園で、太田は見事なトペ・スイシーダを放った。小さいことを利点として、ロープとロープの間をスルリと飛び抜けた様は痛快だった。
ちなみにこの試合は「ミゼット・ジャパン・グランプリ'04いきなり決勝戦!負けたら即引退スペシャル」と題され、太田と笹崎勝己レフェリーの連係による、ほいほい体固めで太田がフォール勝ち。この技は、フォールに乗った太田をブッタマンがほいっと放り投げると、それを受け止めたレフェリーがほいっと投げ返すもので、全女が旗揚げした昭和43年頃には、デイリースポーツにも記録された伝説(?)のフォール技だ。その頃のレフェリーは松永高司氏(当時の肩書きは社長)を始めとする松永兄弟が務めており、僕が見つけた同紙の試合結果では、プリティ・アトムがダイナマイト・キングをフォールしていた。なるほど、ここで「プリティ」が繋がるわけだ。
敗者のブッタマンは“即引退”のはずが、太田の「あんたがいなくなったら、オレが試合できないよ」のマイクアピールで、練習生からまた始めていいことになった。なんだかな〜。
蛇足ながら、試合中に場外カウントを数えた笹崎レフェリーと新米の今村貴則リングアナには、『ジャパン・グランプリ』は「完全決着のため場外カウントなし」が通例だよ、と、一言ツッコんでおきたい。(記:9月7日) |
|
|