2007年05月31日
「Academy アカデミー」 高橋マリ子インタビュー

“ヴィクトリア・カレッジ・オブ・アーツ”(VCA)。ダンス、美術、映画、音楽など芸術分野における、オーストラリアのこの名門大学出身のギャヴィン・ヤングス監督が、同校をモデルに作った映画『Academy アカデミー』。日本からのスタッフ&キャストも参加した本作へ、エキセントリックな日本人留学生・千穂役で出演したのが、TVCMや女性誌のモデルなどで活躍する高橋マリ子だ。アメリカ人の父親と日本人の母親のハーフである彼女が二つの故郷を飛び出して、異国オーストラリアで“女優”としての新境地を迎えた。
≪profile≫
1984年4月24日サンフランシスコ生まれ。8歳からモデルとして活躍。2000年頃より「キユーピーハーフ」「J-PHONE」「キスミント」などスタイリッシュなTVCMで幅広く注目を集める。また、『世界の終わりという名の雑貨店』(01)、『凶気の桜』(02)、『ナイスの森』(06)などで映画にも出演、女優としても活躍の場を広げていく。現在は「コカ・コーラ アクアセラピー ミナクア」「資生堂HAKU」TVCMに出演。
取材・文/大場徹
撮影/根本悠
ハイテンションでエキセントリックな千穂は
英語の演技だからこそ、演じられたのかも
――今回、どんな経緯でオーストラリア&日本の合作映画である本作に参加されたんですか?
オーディションとかそういうのはなく、いきなり「千穂役をお願いします」というお話をいただきと、英語の台本がオーストラリアから届いたんです。台本……というより大まかな筋書きでしたけど、そこに書かれていた千穂に、すごく惹かれるものがあって、それで「ぜひ、やらせていただきたい!」って返事をしました。
――その返事の後、ギャヴィン・ヤングス監督とオーストラリアのスタッフと会われたわけですね。
そうです。ギャヴィン監督とは最初会ったときに英語でスッと意思疎通でき、親近感を感じられて、すぐ仲良くなれました。でも現地のプロデューサーは最初、私に大人しそうなイメージを抱いたようで、「この子が千穂で大丈夫か?」って、不安がっていたみたいです(笑)。
――でも、TVCMや過去作の印象からは、大人しそうなイメージがします。実際はどうなんですか? 千穂に似てるんですか?
確かに大人しそう、クールって印象はよく持たれます。しゃべらなそうとか(笑)。千穂については、両親や友達には「似てる」とか「結構、地だね」って言われました。でも、彼女ほどエキセントリックではないし、性格も違います。違うんですけど……オーストラリアで演技してるうちに影響を受けたのかな、千穂っぽく、少しエキセントリックな性格になっちゃっいましたね。撮影中、日本の友達へ電話したら「どうしたの!?」って驚かれるほど。電話口の私が、すごくハイテンションだったみたいで。
――ハイテンションになった、役に影響されたというのは、オーストラリアで撮影したことも影響しているのでは?
(共演の)杉浦太陽くんが言ってたんですけど、オーストラリアでは、知っている人が誰もいないという“アウェイ感”がいつも感じられて。そういう環境で演技しているうちに“ちょっと日本を離れたから、普段の自分じゃなくてもいいかな?”みたいな気持ちが生まれたんだと思います。
――英語で演技するほうが、開放感が強い?
そうですね。私は日本の学校へ通っていたので、むしろ日本語のほうが得意なんです。でも演技の場合、英語のほうがリズムがあって自分の気持ちを乗せやすい。日本語ってけっこう平坦な言葉ですから。英語のリズムがあったから、自然と千穂のリズムを作れたんですよ。日本語で演じていたら、また全然違いますね、きっと。口グセとか、ギャル言葉とかを入れたら、演じやすいかな?とは思いますけど(笑)。

自分の演技って、見るのも恥ずかしかったけど
千穂のおかけで客観視できるようになったみたい
――千穂の役作りはどんなふうにされたんですか?
ギャルっぽい役だということで、普段読まない雑誌を見たり、ギャル向けのお店に足を運んだりして、まず、ファッションから入りました。ファッションって、けっこう気持ちを左右するんです。日本でまず外見を作って、あとはオーストラリアに入ってからですね。
――オーストラリアには撮影の2週間前から入られたそうですね。
早く現地入りしたほうが役作りしやすいかなって思いました。それに、VCAを見学して、そこの空気に浸りたかったんです。いろいろ案内して頂いたんですけど、美術科の個別スペースが並んだ部屋、あれ、映画とまるっきり同じなんですよ。あと、演劇科の役作りもすごかった。教室に大きなロール紙を広げて、そこへ人間関係や感情の変化を、グラフみたい書いていくんです。私も太陽くんと一緒に書きましたよ。千穂がこうなったら、こういう感情がわいて、周囲がどうなるっていうのを延々と……(笑)。
――ギャヴィン監督とは、千穂についてどんな話をされたんですか?
ギャヴィン監督が「千穂はビョークに似ている」と言うので、ビョークの研究をしたり、監督と一緒に彼女のDVDを見たり、曲を聴いたりしました。
――そんな2週間で、千穂の相手・マシュー役についても、いろいろあったそうですね。
そうなんですよ。マシュー役の俳優がイメージと合わないということで、別の方をキャスティングすることになって。私もスカウトに街へ出ましたよ。イタリアン・レストランでウェイターに「映画に出てみない?」って声をかけてみたり。ナンパだって思われますよね? 恥ずかしい……(笑)。
――貴重な体験ですね(笑)。そういうことも含めて、今回、千穂を演じて自分の中で変わったことは?
いままでは自分の演技を見るのも恥ずかしかったんです。でも、恥ずかしいって気持ちもなくなって、「ああ、これはちょっとダメだったかな」とか、客観視できるようになったことが大きいですね。千穂みたいなエキセントリックな子、いままで演じたことなかったんです。彼女を演じたことや、アウェイでの体験が、自分を突き抜けさせてくれた気がします。
――高橋さん自身が、実際にこの美術科へ入学して強制退学までのカウントダウンを強いられたら?
退学したい!というのが千穂ですけど、私だったら……真面目に勉強しますよ。卒業したいので。
――最近、大学卒業されたばかりですよね?
はい。そっちも真面目に……卒業したかったんで(笑)。
★EDITOR'S VOICE★
★CMや写真の「クールで大人しそう」というイメージは、あくまで「~そう」なだけだった。実際の高橋マリ子はとても気さくで、よくしゃべる。2年近くも前の、撮影当時の出来事を思い出しながら、質問に丁寧に答えてくれる。時折「何の話でしたっけ?」ととぼける姿もご愛嬌。明るい彼女が、オーストラリアでも輝いていたことが伺い知れる取材だった。ただ、その微笑みと黒目がちな眼差しを、あまり直視できなかったのは私的な反省ですけど……。
「Academy アカデミー」
6/2(土)~ 渋谷Q-AXシネマにてレイトショー公開
■STORY:
成績が振るわなければ、1年後に強制退学させられる芸術大学の名門“オーストラリア・アート・アカデミー(AAA)”。この大学の映画科へ留学した隆(杉浦太陽)は、1年先輩のウェイドに見初められて、ゲイ・ムービーに出演することに。一方、親に嫌々入学させられた美術科の留学生・千穂(高橋マリ子)は、「退学したい!」という願いを叶えるべく、彼女に気のある音楽科のマシューと一緒に学内で次々と騒動を起こすが、逆に彼女の評価を上げてしまう……
オフィシャルサイト>>
(c) M2RF PRODUCTIONS
2007年05月07日
「14歳」群青いろインタビュー

2004年ぴあフィルムフェスティバル(PFF)でグランプリ(「ある朝スウプは」高橋泉監督・脚本、廣末哲万主演)と準グランプリ(「さよなら さようなら」廣末哲万監督・主演、高橋泉脚本・出演)をかっさらった映像ユニット・群青いろ。同作品は、カナダ、香港の映画祭でも高い評価を受け、彼らは『期待』の新人として一気に脚光を浴びた。ただ、2人は「グランプリをとったことで自分たちの作品を見てくれるきっかけになれば」(廣末)「次も(何かやるだろうと)期待されることになったので、多少身動きがとりづらくなった(笑)」(高橋)と、いたって穏やかで自然体。そして「僕たちはブレませんから」と口を揃える。しかし、(PFFの)スカラシップを前提にした新作への取り組みは、意外な迷走に陥ることに
≪profile≫
群青いろ(ぐんじょういろ):自主制作映画をつくるメンバー募集の記事で出会った高橋泉、廣末哲万が2001年に結成した映像ユニット。2004年PFFアワードでは群青いろの2作品(『ある朝スウプは』『さよなら さようなら』)がグランプリを独占する。これまでも20本以上もの自主映画を制作。既存の映画手法やルールにとらわれないスタイルが注目を浴びている
廣末哲万(ひろすえひろまさ):1978年高知県生まれ。10代から小劇場を中心に演劇活動を続ける。初監督作は『さよなら さようなら』。俳優としては市川準監督によるNTTドコモのCMに出演。山下敦弘監督の『天然コケッコー』でも重要な役を演じている
高橋泉(たかはしいずみ):1973年、埼玉県生まれ。脚本と映像を独学で学び、日本シナリオ作家協会主催の新人シナリオコンクールに選出される。現在は、脚本家として『親指さがし』をはじめ多数の作品を執筆中
取材・文・撮影/curio
「14歳」では…入り方というか取り組み方を間違ってしまって、
第一稿を書いてから、半年ぐらい悶々としていました
-「14歳」という題材を選んだきっかけを教えてください
まず、制作費があるので、いろんなロケーションを想定したり、幅広いターゲット層にむけたもの、つまり、いつもの自主制作映画では難しいことをやりたいと思いました。あと、もともと触りたい題材でもあったし。
ただ、第一稿を書いた時点で、これでいいのか? という疑問がむくむくと沸いてきて。最初は「14歳」の子たちの視点で書いていたんですけど、もう自分は14歳でもないのに、もう忘れちゃってるのに、無理に思い出して書くのはどうなんだろう? 第一稿を書いてから半年くらい悶々としていました。
だったら、素直に大人の側、つまり「14歳」のことがわからない今の僕の側から書こうと。そう思ったらすっと入り込めて。
-そういう葛藤は、この「14歳」(の脚本執筆)に限ってのことだったんですか
「14歳」に限って…ですね。そう考えると、入り方というか取り組み方が間違ってたんです。いつもなら感情的な部分から入るんですよ。いつも話しているような日常の会話や見えている景色とか、そういう部分がベースになって。
今回は“お金が使える”“年齢層をどうしよう”とかから入ったので、ヘンなことになってしまったという。
-高橋さんからの第一稿をもらって廣末さんの感想は?
多少、釈然としないけど、描けるよ、と。イマイチ乗らないというかいつもと違う感じでした。
そう感じてるだろうなってことを感じてました(苦笑)。
-そこで脚本を2人で詰めていくという形になるわけですが、どうでしたか? 初めての体験だったと聞きましたが
いつもは高橋さんが書いてくれて、僕が撮る場合、撮影に入ってから変えていくんですけど、今回はできない状況だったんですね。スケジュール的には決めておかないといけないことがあって、ある程度、脚本で示しておかないといけなかったので。そのあたりが自主制作映画と違うわけで。
まぁ、やったことがなかったことだし、最初はよそよそしいというか、どこまでいっていいのかわからなかったんですよ。お互いに領分というようなものがあったようにも思います。僕は脚本をひとつの作品と捉えていて…
その作品はそれでひとつの完成したもので、僕はその脚本をもとに、もうひとつの作品を作るという感覚なんですね。
なので、2人で練っていく、詰めていくといっても僕はやはり映像的な感覚でしかいえないし、高橋さんは脚本的な感覚でしか語れないわけですから。
それでも決めておかなければいけない状況なので、僕はやりたい感覚とかシーンを話して、高橋さんに盛り込んでいってもらうという作業でした。
-そういう共同作業のなかで、なにか新たな発見はありましたか? また、今後もこういう創作方法もありえるんでしょうか
発見というより、自分たちを再確認したという感じだと思います。
これからもこういうことってあるのかね?
きついかったけど、ありだとは思いましたよ。それが部分的なものになるのか、どうかわかりません。もちろん、作品によるんでしょうけど。
「14歳」のあとに、もう一本作ったんですよ。そのときは「14歳」を経てだったので、当然改稿するものだと思っててシーン・ナンバーも何もふってないのを渡したら、それがそのまま決定稿になっちゃった(笑)。
前の形に戻っていたという(笑)。スタッフがみんな手書きでナンバー書いてましたね。
そんな風に“書けたらすぐ撮っちゃう”、みたいな瞬発力的なものも自主制作映画の醍醐味だとも思います。その一方で、「14歳」みたいにじっくりと時間をかけて書く・作るというのも(今後も)試してみたくはあります。

撮影現場で細かいことまでこだわると破綻してしまうと思った。
香川さんのひと言でだいぶ救われました
-「高橋さんの脚本をまず読むのが楽しみ」な廣末さんと、撮影時に「自分の脚本がどんな風に変わっていくのか」が楽しみだった高橋さんですが、「14歳」ではそういう愉しみはなかったわけですね。では、事前にいろいろ決めておいたおかげで撮影はスムーズにいったんですか
そうですね、スムーズというか意外とやることがなかったんですよ。スタッフの方がなんでもやってくれるので、僕たちはやることがない! 自主制作映画では、自分たちが全てやらなければいけないですし、それが当たり前だったので、勝手が違うというか。
-そういう廣末さんの戸惑いは、高橋さんにも伝わりましたか
気持ちのもっていきかたが難しそうでした。やっぱりたくさんのスタッフの方々にかかわっていただいているので、その準備や段取りに時間が要するのは当然なんですよね。ただ、気持ちが途切れるというか。自主制作の現場だとずっとなにかしらにかかわってるからテンションが続くんですよ、熱さとかダウンな気持ちも含めてね。今回は待ってるあいだとか端っこでタバコ吸ってましたもん。
-自分たちが全てを把握している状況下での撮影に慣れている廣末さんは、現場ではストレスを感じませんでしたか
いい悪いの問題ではなく、しょうがないと思ってました。カメラのアングルとか、あまり細かいことをいうと破綻しちゃうとも思いました。カット割と編集のことだけ考えてたかなぁ。
そういう気持ちを汲み取ってか、香川(照之)さんが救いの言葉をかけてくれて。「どんな(カメラの)アングルでも役者がそこにいるだけで生きるんだよ」。それだなって。
アングルとか照明とかに目がいくのは芝居がしっかりしてないから。芝居さえしっかりしてればそこには目がいかないよ、という意味で言ってくれたんですけど、とにかく、それでいってみようと思えました。
やっぱり、香川さんの演技は圧倒的でした。小林(教師の役)という男の匂いまで感じられるほど、役に存在感を持たせてくれて。大人の俳優の方々は、僕がすごいと思っていた人を選ばさせていただけたので良かったです。映画における役者の“役割”というものを再確認できました。
-生徒役はオーディションで選ばれたそうですね。彼らに演技をつけるのは難しくはなかったですか
500人のオーディションをしたんですが、そういうことが出来る子たちを選んだので子役だからどうというのはありませんでした。役について、シーンについても、彼らと相談することもなかったですし、話し合うことなく(彼らは)出来ていたので、そういうことなんだと思っています。ただ、この映画の「14歳」の生徒たちと、彼らも年齢が近いわけですから、ここでは笑ってるけど、学校では違うのかな?って勝手に心配してたりしました。

自分が一番、高橋さんの真価をわかっている
僕の脚本読むと、廣末くんは赤面すると思うよ
-群青いろはどれくらいのペースで作品を制作してるんですか?
早いと思いますよ、僕らは。2人いるので。あと、今はとくに拍車がかかっているのかなぁ、次から次へと撮ろうみたいな。
そうですね。商業映画から自主制作映画に戻ってその反動みたいなものがあるのかもしれないですね。なんだ、自主制作って自由じゃん!みたいな(笑)。
-お二人の今後について。高橋さんは、群青いろ以外でもすでに脚本を手がけられているわけですが、廣末さんは少しさびしかったりするんじゃないんですか
寂しいとかないんじゃないですか。あくまで職業として脚本家をやっているので。
そうですね。ただ、僕は群青いろの高橋さんが好きです!というだけ。
でも、たぶん、僕のそっち用の脚本を読んだりしたら、顔真っ赤にすると思うよ(笑)。
-廣末さんは
出る側として自分が必要とされるのであれば(役者として)出ていきたいですし、監督としては、コンスタントに群青いろの作品を作っていきたい。制作費とか関係なく、自分たちのスタイルで出来るものを撮っていきたい。
-お二人はどういう関係なんでしょうね。お互いに群青いろ以外の活動をしていたりしたら、ジェラシーとかあるのかなって勝手に思ったりしたんですけど
うーん、どうなんでしょうね。ただ、僕は高橋さんの真の力を知ってますよ、という(笑)。バッテリーみたいなものなんでしょうか。
-群青いろでは社会的テーマ色の強い作品を、今後も作り続けていくんでしょうか
というか、基本的に人間を、何かにつまづいている人間を取り上げたいんですよ。自分もそっち側の人間だからかもしれないですけど。社会を描いているわけでなくて。
日常の人間を描くと当然、社会が背景にあって、それが自然に結びついていく。当たり前のリアルを描いていきたいですね。
-群青いろにスカっと明るい、楽しい作品はありえるんですかね
あるのかなぁ…というか、日本人は基本的に暗いと思うんですけど。
ずっと明るいまんまというのはないかもしれないですね。やっぱり僕らが描くと、どうしても悲しみや痛み、みたいなものが伴ってしまう。
楽しい、に関しては、ムスっとしてるようでも楽しんでるときはあるんですけどよ。これでもね(笑)。
★EDITOR'S VOICE★
公開を間近に控え、主要の子役たちと、雑誌の取材時に久しぶりに再会した群青いろのおふたり。廣末監督は彼らと撮影後もメールのやりとりをしていたのだが、徐々に遠のいていたのだとか。ただ、たまにコメント程度の短いメールが突然届くらしく、その返信はとても長文に。こんな長いメール返したら、どう感じるのかなぁと少し不安だったりするのだそうです。

笑ってくださいってリクエストされても慣れてないから出来ないでしょう?
と聞くと「いつも困ってます」と照れ笑い
「14歳」
5/19(土)~ ユーロスペースにて公開

■STORY:
14歳のとき、飼育小屋の放火事件の犯人に疑われ、教師を彫刻刀で刺してしまった深津は(並木愛枝)、12年後、中学校の教師になっていた。その事件を目撃した杉野(廣末哲万)は、深津の学校の男子生徒にピアノを教えるアルバイトをしていた。偶然、再会を果たす2人。ときを同じくして、深津は生徒たちからのイジメに合い、杉野は自分が教える生徒との関係に辟易していた。やがて、2人はいまの14歳たちに翻弄されていくのだった…。
2007年02月10日
「聴かれた女」山本政志監督インタビュー

日本一ロックな映画作家、山本政志。
とにかくアツイ。
映画が好きで好きで堪らない。
その渇きにも似た映画への“激情”からか、「ヤクザに囲まれてのゲリラ撮影」「大企業社長への直談判」「NYパンクスたちとの豪遊」という、何ともクレイジーな逸話を持つ監督である。
・・・ハッキリ言って怖い。
ここはひとつ、私の得意(?)分野である“エロ”の話に終始しよう。最新作「聴かれた女」のインタビューは、そう決意して、ビビりまくりで臨んだ…。
取材・文/戸田美穂
最終的には全部シナリオ通りになってんだよ
ま、俺って天才だから(笑)
──異端の監督。ロックな映画作家。そんな、とかく“ハード”なイメージで語られる山本監督の“エロ”映画。興味をそそられた人間は、私だけではないと思うのですが。
ロックな映画作家って意味分かんねぇよな(笑)。この「聴かれた女」の前に、初めてデジタルムービーに挑戦してみたんだよ。デジタルって低予算でスピーディーに撮るには、本当にいいんだよね。中編もやってみたかったし。「聴かれた女」のプロットは、1日で書き上げたよ。それに今回の企画は、蒼井そらの起用が条件だったんだ。
──蒼井そらさん、今回すごくいいですね。女性の目から見ても本当に魅力的。でも男性から見て…というより、監督の目から見て、やっぱり彼女、セクシーでした?
「やりたかったか」って聞かれたら、それは、なかったよ(笑)。彼女、男っぽくてサバサバしてるからさ。
──でも、彼女のあのハスキーな声ってめちゃくちゃセクシーですよね。今回の映画も、彼女が盗聴される女性の役だから、すごく彼女の声がポイントになってますし。彼氏との会話も妙に生々しいというか、リアルで…。でもそれがいいんですよ。
確かに彼女の声はすごくポイントになるよね。それに、撮影前には自分の映画の時は必ずリハーサル期間を持つんだけど、もう数分で「あ、これは大丈夫だな」って。とにかく勘が良いんだな。俺がこれまでやってきたナチュラルな芝居は、彼女ならできるって確信したね。だから途中から、そらの台本を取り上げたよ。自然なセリフを喋るには、脚本を覚えるんじゃなく、状況を掴むことが大事だからね。

──じゃあ、蒼井そらさんの会話はアドリブだったりするんですか?
それが、最終的にはシナリオ通りになってんだよ。
──???
ま、俺って天才だから(笑)。
直接的なベッドシーンより
やるせない空気が漂う…
そんな情感たっぷりの場面がいいね
──ところで、この映画のキャッチーは、エロでポップで、サスペンス。山本監督、エロに挑戦と言っていたわりには、「聴かれた女」はエンタテインメントですよね。
どうしても、俺がやってると“笑い”と“サスペンス”を入れちゃうんだよ。ま、セックスは撮るより、実際やる方がってことかな(笑)。ベッドシーンも3回も撮ったら飽きちゃった(笑)。途中で「そら監督、お願いします」って、そらに演出してもらった部分もあったよ。でも、オンナの感性って男と全く違うから、面白いよね。ジェーン・カンピオンの「ピアノ・レッスン」('93)とかさ。ああいうの、絶対男には撮れない映画でしょ。
──いわゆる官能映画で、ほかにオススメの映画はありますか?
かなり昔だけど、「愛の嵐」は好きだなぁ。うん、情感たっぷりな映画がいいね。「聴かれた女」も、終盤、主人公の二人がいいムードになってキスを交わすけど、男が躊躇ってできない。あのシーンが一番好きだね。直接的なベッドシーンより、二人の想いが伝わるからね。なんか…こう、やるせない空気が漂ってて…。
──そんな山本監督の、(笑いとサスペンスを抜きにした)純然たるエロ映画も観てみたいです…。
だから俺がやると変わっちゃうんだって。エロ修行が足んねぇのかもな(笑)。
★EDITOR'S VOICE★
蒼井そら“監督”が演出したというベッドシーンは、実は「聴かれた女」ではなく、同じ物語を、蒼井そら扮する主人公・皐月の視点で描いた「聴かれた女の見られた夜」にあり!
これは、2/24(土)開催のオールナイトでのみ限定公開されるとのこと。当然気になるオンナ側の視点。監督、コレは観たくなります! 策士ですねぇ。
「やっぱりベッドシーン自体の出来では、そらの演出の方がいいんじゃないかな。な~んかこう、カメラの見せ方とか、アイツ熟知してからさ」とは山本監督の弁。
ちなみにピンポイントに最もオススメの1シーンを挙げるならココ!⇒⇒⇒⇒⇒⇒
終盤、お互いに好意を持っていることに気づき始め、キスを交わし、ベッドへ…。手を彼女の胸に伸ばしたその時、急に体を硬直させてしまう彼の心理。う~ん、やるせない。山本監督のイチオシの“エロ”シーンでもあります。
ところで私がこの取材で一番印象的だった監督の言葉は、
「『聴かれた女』の1本くらい、全然疲れたって感じがしない。へっちゃらだね。そこはこだわり抜く、フィルムの映画とは全然違うんだよ」というひと言。
「でもデジタルムービーは、とにかく安くて早い。『聴かれた女』も撮影開始から完成までジャスト1ヶ月。でもクオリティは決して下げてないよ。デジタルムービーの可能性。全然あるよね。若いやつらもどんどん挑戦した方がいい。俺も今度はプロデュース業、してみようかって考えてるんだ」
ちなみに監督のベストムービーは、ロバート・アルトマン監督の「ナッシュビル」('75)だそう。監督、次回作「ジャップ(仮題)」も期待してます!
「聴かれた女」
2/10(土)~ ポレポレ東中野にてレイトショー公開
■STORY:
出版社勤めのリョウ(大野慶太)は、新しいアパートに越したばかり。新居での生活を始めたある日、隣室から女性の声が漏れているのに気づく。CDを聴いている音、シャワーを浴びる水音、そして彼氏と思しきオトコと愛し合う甘い声…。やがて彼女が皐月(蒼井そら)という名であることを知ったリョウは、まだ見ぬ皐月に妄想を膨らませ、恋心さえ抱くように。一方、毎日かかってくる脅迫電話に悩んでいた皐月。家族とも疎遠の彼女は、彼氏の雄太(加藤裕人)を唯一の心の拠りどころにしていた。そんな皐月は、隣室宛の宅配便を預かったことから、リョウと知り合うことに。偶然を装い、皐月と急速に親しくなっていたリョウだったが、ある日、彼女の脅迫電話の犯人を偶然知ってしまう。
2006年11月24日
「コワイ女」小林裕子インタビュー

鬼才(奇才?)監督たちによるオムニバス・ホラー「コワイ女」。その中でも第1エピソードの「カタカタ」は、強烈な恐怖をゴリゴリ押しつけてくるようなジェットコースターホラーである。
とにかくこの「カタカタ」、中越典子扮するヒロインを追い詰めていく“異形の女”がモーレツに怖い! その動き、表情というか形相(ギョウソウ)、存在感、まさに目をつぶれば思い出してしまう、悪夢級のモノなのだ。その“異形の女(カタカタ)”を怪演した女性、小林裕子さん、じつは麿赤児率いる舞踏集団<大駱駝艦>に所属するダンサー。そしてなんと、夏には後楽園の夜のお化け屋敷で幽霊役としてすでに7年ほど出演している。身体表現のベテランでもある小林さんに恐怖演技の妙味、愉しみを語ってもらった。
<profile>
麿赤児率いる<大駱駝鑑>に所属し、2004年には初演出作品「リンカ」で振鋳(振付)を務める。舞台以外にホラーゲーム「サイレン」シリーズのモーションキャプチャーや映画『チェーン』(2003)にも出演。2007年5月には振鋳・鋳態として、吉祥寺シアターにて3年ぶりに新作を発表
取材・撮影・文/curio
ホラーにありがちな動きはダメ
何がなんだかわらかない動きだから怖い
-今回の異形の女・カタカタの演技にあたり、撮影前にリハーサルというか練習を行ったと聞きましたが
そうですね、撮影の10日前に、2・3日ほど監督やスタッフの方と練習をしました。そこでカタカタはどんな感じの動きをするのか、というのを詰めていきました。事前に絵コンテを渡されていたので、キャラクターのイメージを作ったりして。まぁその絵コンテはCGを含んだものだったので、身体が伸びたり縮んだりしていて「こんなの出来ないよ」と笑ってはいましたけど。雨宮監督のなかでカタカタに対するイメージ像があって、そこを話し合いながら作っていくという感じでした。練習をして、その風景をビデオで撮っていて、それを見て、打ち合わせをして、また練習をして…それを繰り返しました。

-舞台やお化け屋敷とは違う、映画ならではの難しさとかはありましたか
難しさは……ありましたね。やはりカメラのフレームに収まらないといけない。だからMAX値までいきたい!という気持ちを抑えながらの演技になるので、そのあたりが難しかったです。監督もすぐに私が暴れるタイプだって察知したらしく、私が暴走すると「オーイ、行き過ぎだぞぉ、帰ってこーい」「あ、すいません、すいません」みたいな感じでしたね。枠の中に収まらないといけないし、収まっていると小じんまりしてしまう。そのバランスをつかむのに時間がかかりました。
-雨宮監督のカタカタ像と小林さんのカタカタ像、最初はイメージのズレとか無かったんですか
監督のなかで、見たことがあるものはやりたくない、という想いがあったと思います。だから、ホラーでありがちな動きをやるとダメ(と、首をカクカクする動きをしてくれる)。いろいろ試しながら「あり」「無し」を決めていきましたね。「カタカタはこういう動きだ」というのを決めてもらえればわたし的にも楽なんですけど、イメージを創っていく過程で、もっと崩して、決めないで、といわれ続けました。そうやって変化し続けていって、何がなんだかわらかない動きになるから怖いのであって、それがカタカタなんだって。そうやって創った動きのはずなんですけど、本番のときは全然、違う動きをしてましたね(笑)。監督もとくに、ダメって言わなかったですよ。
-身体的にとくに気を使ったのは
手の動きをとくに細やかにしてほしいといわれました。指や手だけの動きではなく、こう身体の内側から絞りだしていくような感じで(とコチラに迫ってくる腕の動きをしてくれる。特別動画は一番下↓)。あと、顔にしてもMAX値の表情だけでなく、そこに至るまでの過程も大切だといわれました。監督はやはりSFXアクションをたくさん撮られている方なので、ディレクションが的確で明解。内面的なイメージも伝えてくれますし、CGを加えてからの具体的な映像なども教えてくれるので、こちらとしても演技をしやすかったです。
CGも加わったカタカタに感動
あの動きをCG無しで自分(の身体)で演じてみたい!
-いよいよ撮影に臨むわけですが、本番はどうでした?

やはり衣装を着て、メイクもして、現場の美術とかを見ると気分は高まってくる。とくに中越さんの怖がっている表情を見るとノッてきますよね。動き自体はとくに問題はなかったと思いますが、相変わらず、フレームを外れてNG出してましたけど(笑)。あと市街地での撮影もあったので、それは新鮮でした。屋内だとグッと入っていく感じなのですが、屋外だとバっと発散するような感じ。真夜中の電柱の側に立って追いかけるシーンでは、ノリすぎて「ワァ~!!!」と叫んでしまって「はい、テンションはいいけど、声ナシでお願いします、夜中なので」といわれてしまいました(笑)
-現場の難しさは?
長丁場なので集中力が持続できないこと。夜遅くなってくると、ぱっとすぐにはMAXにもっていけなくて、そうすると監督も目とかでわかるらしく撮り直しになる。本気モードになるまで待っててもらって。そのon/offの切替が大変でした。舞台だと出ていないときでもずっとつながっているという感じなのですが。でも逆に映画だと自分がどうしても納得できないときはやり直しが出来る。舞台はその一瞬一瞬が勝負。そういうアプローチ方法が違うので勉強になりました

-撮影自体を楽しめたようですね
そうですね、なかでもメイクしてもらえたのが嬉しかったです。カタカタのメイクは数タイプあって、その最高に怖いメイクをされた自分がすごく好きだったんです。自分で撮って待ち受け画面にしたりしてました。その姿でウロウロしたりして。やっぱりここまでしてもらえることってめったにないので
-完成した作品を見て、自分の動きはどうでしたか?
編集であったり、CGであったり、そういう撮影時から後の作業がすごく効果的で、物語や怖さに緩急を生み出している。やっぱり映画だなぁ、おもしろいなぁと思いました。CGとミックスされるとカタカタの動きがさらに不可解になっていて、いい感じだなぁと。ああいう動きがCG無しで出来れば最高なんですけど
-なにか話を聞いていると、そういう異形なるものへの憧れがあるような
確かに(笑)。本当は人でないものになっていきたいという願望があるのかもしれません。実際、私のなかでは、この作品の結末に登場する(最高に怖い)カタカタでさえ、進化の過程だと思っているんですよ。もっともっと怖い“何か”に変化していく途中だと。そのときは人の形すらしてなくて…、そう、それをやっぱりCG無しで表現してみたい。そのあたりは見果てぬ夢なんですけどね(笑)
★EDITOR'S VOICE★
~小林裕子さんのインタビュー裏話!~
ホラー女優ならではの裏話を聞けましたので、ご披露。
①幽霊屋敷で、幽霊役の人たちは「今日何人飛ばせたか?」を競い合っているとか。人が本当に驚くと、キャー!と叫ぶのではなく、後ろにふっ飛ぶらしい。もちろん小林さんのヒット数は高い。
②ロケ現場には中越典子さんのサインを待つ子供たちが控え室などに集まっていた。そこへ超メイクな小林さんがカタカタよろしくのノリで登場。ギャー!の絶叫がこだました。
現在は、大駱駝鑑の「天体のズー」(2006.11/22~26・大駱駝艦・壺中天)で音響オペレターを担当。スタッフとしての舞台のかかわり方も「勉強になる」と意欲的。もちろん、今回の映画体験も「自身の公演にも何らかの形で生かせれば」。
「今は何でも勉強になるし、それを次に生かすよう心がけているので何でも楽しい」と話す小林さんの、身体表現へのあくなき探求はまだまだ続きそうである。
「コワイ女」
11/25(土)~ シネマート六本木、シネマート心斎橋にて公開
■STORY:
OLの加奈子(中越典子)は、婚約者・田崎(豊原功補)と分かれた帰り道“カタカタ”という奇妙な音を耳にする。その直後、マンションの上から落ちてきた“何か”にぶつかり気を失ってしまう。帰宅後、田崎から彼の元妻に刺されたとの連絡をもらう加奈子。そのとき、振り返ると包丁をもった、赤いワンピースの女(小林裕子)が立っていた…。
(C)2006「コワイ女」製作委員会
特別映像>>ウニウニ
2006年09月15日
「ストロベリーショートケイクス」
矢崎仁司監督インタビュー

映画作家、矢崎仁司。「女性が女性である故の痛みを、なぜこんなに“知っている”のだろう」──矢崎監督が撮った映画を観ると、いつも、そう思う。1980年に発表した初の長編「風たちの午後」以来、手がけた映画はわずか4本。そんな寡作な映画作家として知られる矢崎監督の待望の新作「ストロベリーショートケイクス」が、いよいよ9月23日より公開される。自主映画でなく、いわば初めて商業映画として公開される同作の公開を前に、矢崎監督は今、何を思っているのだろうか?
取材・文/戸田美穂
『strawberry shortcakes』を
自分の映画にしたい、
素直にそう思いました
──6年ぶり、の新作ですね。「寡作な映画作家」という言葉が、まるで矢崎監督の代名詞のようになっていますが…。
何とかそのイメージは払拭させたいと思っています。でも、去年はテレビの仕事や短編映画(『大安吉日』狗飼恭子脚本)とか、色々やってはいるんですよ。
──ファンの希望的観測ですが、矢崎監督の場合、詩や音楽が突然生まれるように、“何か”が生まれるまで待っているからではないか…そう思ってしまいます。
いやいや、単に仕事が来ないだけです(笑)。僕は、来る仕事は基本的に拒まないようにしているんですよ。そりゃね、私に『ゴジラ』を撮れと言われたら、一晩くらいは悩みますけど。…それでも結局受けると思います(笑)。
──『ストロベリーショートケイクス』の場合は、魚喃キリコさんの原作との出会いが会ったからですよね。原作を読んで、映画化したいとご自身から提案されたと聞きましたが。
そうですね。魚喃キリコさんから初版が送られてきて読んだのが始まりです。ただ、もともと「痛々しいラヴ」とか、彼女の漫画は映画化したいとは思っていたんです。でも、『strawberry shortcakes』を読んだら、登場人物の女の子たちが、みんな愛しくて、大好きになってしまって…。ああ、本当に私の撮りたいことが描かれている、これを自分の映画にしたい、素直にそう思ったんです。
だから、原作の持つ空気や世界観というのは大切にしたかった。映画を観た後と、原作の読後感は変えたくなかったんですね。狗飼恭子(小説家・『ストロベリーショートケイクス』脚本)さんのシナリオを最初に読んだ時、自分が初めて原作を読んだ時と印象が変わらなかったので、大丈夫だとは思っていたんです。完成した映画を観て、生身の俳優さんたちを抱きしめたくなりました。
日々の断片的な記憶を埋め込むことで
何かを思い出してもらいたい

──実は『ストロベリーショートケイクス』だけに限った話ではないのですが、矢崎監督の映画を観ると男性の目線で捉えた作品だという気がしないんです。「ああ痛いなぁ、ああ鋭いなぁ」って。
ソレ、よく言われるんです。でも僕自身、女性だからとか、男性だからとかという形で捉えていないんです。ただ、普通に人間として見てるだけ。演じる人が女性であれば、女性の部分は映りますからね。
──そういえば、撮影されている時、矢崎監督はモニターを見ずにカメラの横に立って、俳優の演技をご覧になっていますね。あれはナゼですか?
モニターはね、騙されちゃうんですよ。俳優の表情やその場の空気って、全体から出てくるものだから。(カメラで)切り取ったものはカメラマンに任せるけど、どこをどう切っても大丈夫だという空気が決まるまでは…やっぱりね。例えば、友達2人が会話しているシーンで、片方をアップで撮っているとするでしょう? モニターだけを見ていたら、表情的にはOKなんですけど、2人の立ち位置を見ると、友達とは思えない距離に意外と立っていたりするんです。第一、俳優にとっての最初の観客は監督ですから、凄い演技を肌で感じたいですよ。
──空気…ですか。確かに矢崎監督の映画は、匂いと言うか色と言うか、ものすごく抽象的な例えですけど、独特の世界観を感じますね。
う~ん、フツーに日常を生活していて、積み重なった断片的な記憶が、映画にはかなり反映されていると思うんです。それは、現場でも説明がつかないことがすごく多くて…。例えば、晴れているのに登場人物が傘を持って電車に乗っていて欲しかったりするんです。多分、いつかの僕の記憶なんでしょうけど、助監督や美術の方はワケわかんないでしょうね(笑)。ただ、そういう自分にとっての記憶みたいなものを埋め込むことで、見ている人に何かを思い出してもらいたい──そんな思いで映画を作っているような気がします。
──映画作家・矢崎仁司の日々の記憶を紡いだ映像…それだけで、もう興味があります(笑)
でも個人的には作り手の見えない映画が好きですね。単純に作り手の顔が見えちゃうと感動が薄れちゃう気がしません? 僕がいつも心がけているのは、僕の前作を好きだった人を常に裏切る映画を創りたい、ということ。ただ、「ストロベリーショートケイクス」がどう違うのかは、あんまり口に出して言いたくない。こっそり舌を出したい部分なので…(笑)。
★What's “矢崎仁司”?★
矢崎仁司監督をよく知るこの2人に『カントクをひと言で例えるなら・・・』ズバリ伺いました!
■石井勲さん(撮影)
~一連の“矢崎作品”の映像を手がけてきた、まさにカントクの頭の中を最も知る人物~
「うん、う~ん、う~~~ん? コダワリの人かな」
「矢崎さんはね、撮り直す時よっぽどの事がない限り『ココをこうして』とか言わないな。いつもは、ただひと言、『もいちど、やってくれる?』って言うだけ」
■露無栄さん(アップリンク)
~映画宣伝担当者。公開が決定してからカントクと行動を共にする毎日を送る…~
「(即答)カッコイイ人!」
「毎回お会いする度に、私の中の“矢崎カントク像”がいい意味で裏切られるんです。あ、いい意味でですよ! このスーツ姿ってすごく監督を表していると思います」
★EDITOR'S VOICE★
~矢崎仁司監督のインタビュー裏話、暴露しちゃいます!~
「好きな映画監督は? 『ハワード・ホークスが好きだけど、最近は観てないなぁ。マノエル・ド・オリヴェイラかな』──ふむふむなるほど。それでは最近観た映画は? 『トリック2』 ええええ?何だか違うくないですか? 『いやいや僕は基本、ミーハーですから(笑)。必ず観に行く映画といえばね、アンジェリーナ・ジョリーの出演作ですよ』」…とまぁこんな具合に、私の矢崎カントクへの“繊細”なイメージはすっかり崩れ去った今回の取材。「苦手なんだよな~」と言いながら、カメラを向けるとそれまでの笑みは消え去り、しかめっ面。でも何だかつれなくされると、近寄りたくなる…。カントク、人を惹きつけるフェロモンが出てるってご自身で気付いてないですねぇ。(戸田美穂)
「ストロベリーショートケイクス」
9/23(土)~
渋谷シネ・アミューズほかにて全国順次公開
■STORY:
恋に恋するフリーターの里子(池脇千鶴)、売れっ子デリ
ヘル嬢の秋代(中村優子)、結婚願望の強いOLのちひろ
(中越典子)、過食症のイラストレーターの塔子(岩瀬塔子)。
恋と夢と友情と・・・日々の暮らしの中で、彼女たちが感じる
ささやかな幸せと絶望を紡ぎだしてゆく。自分だけの城=テ
リトリーに留まる彼女たちの“痛い”日常の感覚は、女流漫画
家・魚喃キリコの原作コミックの読後感と相通ずるものがある。
投稿者 mtoda : 16:32