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2003.3.4 UPDATE

11月26日 取材・文/戸田美穂(編集部)


profile>>瀬々敬久 (ぜぜ たかひさ)
1960年、大分県出身。京都大学在学中より自主映画(16ミリ『ギャングよ 向こうは晴れているか('85)』)を製作し、86年に獅子プロに入社。「課外授業 暴行」('89)で監督デビューを飾ると“ジャパゆきさん”“湾岸戦争”“自衛隊クーデター”など、事件性の強い時事ネタを扱ったピンクらしからぬ問題作を次々と発表し、ピンク四天王のひとりとして注目を浴びる。97年に一般映画に進出した後も、古巣(?)のピンク界を離れることなく『アナーキー・イン・じゃぱんすけ』('99)『トーキョー×エロティカ』('01)を監督。成人映画館と一般映画館の双方で公開されたこれらの作品からも分かるように、ピンク映画と一般映画の両分野を行き来する稀有な監督として、今後も活躍が期待されている。
 11月9日より開催していた本特集のトリを飾るのが、滝田洋二郎監督作『連続暴姦』('83)と、瀬々敬久監督作『牝臭 とろける花芯』('96)の2本立て上映。これまで12名の監督を迎えてきた今回の特集だが、楽日の29日を目前に控え、最後のゲストとなる瀬々敬久監督が来場し、爆笑トークを披露。AV(アダルトビデオ)に押され気味だった90年代に活躍した異才らしく、当時抱いていたという反骨精神も覗かせながら、自身のピンク映画史を振り返った。


 『牝臭 とろける花芯』は、“街のハミダシ者”として気ままな毎日を送る2人の少女カラスとカモメが主人公。居場所を見つけ出そうとする彼女たちの日常に、2人を守り神と崇めるヤクザと、それを追いつめるアブナイ連中が絡んできて…って、実はコレ松本大洋の人気漫画“鉄コン筋クリート”が元ネタ。瀬々監督は、それを事もあろうに「“鉄コン筋クリート”を勝手にパクリました! 内緒ですよ」と、ガハハッと豪快に笑いながら言い切る。のっけから、ハイテンションだ。「松本大洋の絵自体が好きで、かなり前から大ファンだったんですよ。彼の漫画は横浜とか神奈川近辺の風景が多いんですが、この作品は実はお台場がロケ地。当時のお台場は、まだ埋立地があったり真新しい建造物があったりして、どこか中途半端な雰囲気でね。“鉄コン筋クリート”の雑然とした世界を見せるのに合ってたんですよ」

 ちなみにこの『牝臭 とろける花芯』は、瀬々監督が一般映画に進出する直前の96年に撮られた作品。瀬々監督がデビューしたての頃の話に遡ると「僕がデビューした90年代は、アダルトビデオが力を持っていた時代。AVのアイドル女優さんを、ピンク映画でも使ってくれないかという話も出たりしてね。デビューしたはいいものの、次作れるかどうか分からないし、誰も認めてくれないんだろうな、という不安は常にあった。それでも俺らは、ピンクとかAVとか自主映画とかっていうフィールドは越えてやろうぜ!って吠えてたんだよ(笑)」。この言葉どおり、瀬々監督らピンク四天王の出現を機に“ピンク・ヌーヴェルヴァーグ(=新しい波)”ともいうべきムーブメントが起こったのは、ファンなら周知の事実だろう。

 そうして97年に『KOKKURI こっくりさん』('97)、『雷魚』('97)で一般映画デビューを飾った瀬々監督だが、近年は、井川遥(『ドッグ・スター('02)』)やGackt、hyde(『MOON CHILD(4月19日公開予定)』)といったスターを主演に、いわゆる“エンターテインメント作品”を次々に監督している。それらを“ゆるい映画”と自ら称しながらも、ピンク映画との違いについては「お客さんにプレゼントする中身は変わらないけれど、それを包んでいるラッピングを小綺麗にしているってなもんで、根っこの表現は変わらない。でも今の時代、こういう“ゆるさ”だったら、あんた等認めてくれるの?という気持ちも少しは…ね」と、日本の映画業界に向けた皮肉めいた発言も! ほかにも最新作『MOON CHILD』に主演したGacktとの貴重な裏話も飛び出し、場内の笑いを誘っていた。

 また瀬々監督は、これまでロッテルダム、モントリオール、ヴィエンナーレ、香港…と数々の国際映画祭に参加してきたことでも知られている。最後にその映画祭でのエピソードを語ってくれた。「僕は海外の映画祭はロッテルダムが初めてだったんだけど、大先輩の高橋伴明監督も『愛の新世界』('94)で参加されていたんですよ。その時に伴明さんが壇上で「ピンク映画の世界では、壁とか困難とかいっぱいあるけれど、それを打ち破ろうとする新しい才能がどんどん出てきているので、観つづけて下さい」と言われたんです。グッときましたよ、僕も今同じ想いです」。そして約20分続いたトークショーを、瀬々監督はロッテルダム映画祭での伴明監督と同じ言葉で締めくくった。

 トークショーを終えて筆者がロビーに出てみると、『牝臭 とろける花芯』にも出演している若手俳優の川瀬陽太や、若手注目株の坂本礼監督らが、出番もないのにロビーをウロウロ…。仲間意識が強いピンク映画界に在って、特に後輩たちの面倒見が良いと言われているのが瀬々監督なのだとか。その兄貴のように慕われている瀬々監督の姿を目の当たりにして、ちょっとイイ気分で会場を後にしたのでありました…。


松本大洋の漫画について司会の林田氏が突っ込むと、笑ってごまかす場面も。「あんまり言及しない方がよさそうですね…」 90年代は吠えていたと語る瀬々監督。「会うと良い人だねってよく言われるんだ(笑)」


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