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2001.8.10 UPDATE

取材・文 岡野琴美(編集部)


代表団による舞台挨拶。前列右から2人目がジャン=ジャック・ベネックス監督、花束を手にしているのがナタリー・バイ
総勢120名のゲストが横浜に集結

 6月20日から4日までの5日間に渡り、神奈川県にあるパシフィコ横浜で“第9回フランス映画祭横浜2001”が開催されました。毎回、多数のフランス人監督や俳優が来日し、にぎわうこの映画祭。本年度映画祭の団長を務めたのは、「ポルノグラフィックな関係」('99)でベネチア国際映画祭最優秀女優賞に輝いた実力派ナタリー・バイ。そのほかにもジャン=ジャック・ベネックス監督や、「年下のひと」('99)のブノワ・マジメル、「美しき諍い女」('91)のエマニュエル・ベアールら総勢120名が来日。期間中は天候にも恵まれ、約2万1000名以上の観客動員数を記録しました。

 会場内は、来日したゲストが歩き回っていて、驚くファンの歓声もあちこちから……。取材で訪れていた私も、“パリ・コレ”のモデル経験もあるルー・ドワイヨン(ジャック・ドワイヨン監督とジェーン・バーキンの娘)にばったり遭遇。こういうハプニングも、この映画祭の魅力なのです。また、上映後のゲストによるサイン会では、2時間以上待つ長蛇の列もあらわれるほどでした。

「青い夢の女」上映後に行われたベネックス監督のサイン会


  最終日には来年の映画祭についての記者会見が行われ、そこでスペシャルな発表がありました。第10回ということを記念して、1回目から9回目までの歴代の団長たちを全て招待するとか。また、ワールドカップ開催年にちなみ、サッカー好きの日仏男優をあつめた親善試合など、豪華なイベントの構想も告げられました。

 今年も大盛況で幕を閉じたフランス映画祭横浜2001。ものすごいことになりそうな来年が、今から楽しみですね。




1938年パリ生まれ。父である名匠ジャック・ベッケル監督の『モンパルナスの灯』('58)の助監督を務めたのをきっかけに映画界入り。1961年に『勝負をつけろ』で監督デビュー。フランスの片田舎で暮らす人々を、美しい映像美とともにつづった『クリクリのいた夏』('99)は、昨年日本でも公開され話題に

 新作『天国で殺しましょう』(2000)を引っさげて来日したジャン・ベッケル監督を、映画祭での上映が終わった翌日にキャッチ。会場の様子を見ていたという監督は、上映時の観客のリアクションが印象に残っているとか。
 「笑ったり手をたたいたりして映画を楽しんでくれていて、安心できたよ。みんな夢中になって楽しんでくれていたね。観客を現実から引き離すという、僕の映画作りの目標が実現しているのが自分の目で確認できたのが収穫だよ」
 『天国で殺しましょう』が、戯曲家であり映画監督でもあったサッシャ・ギトリ監督の『我慢ならない女』のリメイクだと言われていることに関しては
 「別バージョンのものと考えてほしいね。登場人物の性格が全く違うんだ。前作の『クリクリのいた夏』('99)に出演していたジャック・ビルレとまた一緒に映画を撮りたいと思っていて、『我慢〜』のキャラクター設定を変えて撮ろうと考えたんだ」と柔らかく否定。
「天国で殺しましょう」
妻から長年ひどい仕打ちを受けて来た男が、彼女を殺そうと計画。彼は優秀な弁護士のもとを尋ね、罪を問われない方法を聞き出してから、計画を実行しようとするが…

 『クリクリのいた夏』がロングヒットとなり、日本での認知度もますます高くなった監督。前作のほのぼの路線からうって変わり、『天国〜』はブラックな笑いに満ちたシニカル・コメディだ。
 「いつも『クリクリ〜』のような作品を撮ることはできないよ(笑)。同じ様な作品はつくらない。『殺意の夏』('83)も『エリザ』('95)もみんなテイストは違うだろ? “あの監督がこんな作品を撮ったの?”という驚きが、感動を呼ぶんだよ。その驚きは、前作と違った作風の作品を観れたという、うれしい気持ちにつながるものだしね」
“どうしてそんな当然のことを聞くの?”と言いた気な監督の表情に、前進し続けるおじいちゃん(現在63歳)のやんちゃぶりを見たような気がしました。




パリ生まれ。1985年のスクリーンデビュー以来、舞台と映画両分野で活躍中。映画の代表作には、脚本家としても参加したジャック・リベット監督作『パリでかくれんぼ』('94)、セドリック・クラピッシュ監督作『百貨店大百科』('92)、香港映画界のマギー・チャンと共演した『イルマ・ヴェップ』('96)など

 モデルのような長い手足に、凛とした表情が印象的な演技派ナタリー・リシャール。彼女の新作は、小説家としても有名なイラン・デュラン・コーエン監督作『カオスの中で』(2000)だ。
 「コーエン監督の著書は読んだことがありました。彼からは2つの注文があって、ひとつは“決っしてオーバーな演技をしてはいけない”ということ。小説家という肩書きをもつ監督ならではの、シナリオに忠実であれという要求だと理解しました。もうひとつは、コメディ的な部分を演じていても、決して笑ってはいけないということ。自分たちが思っていないところ、予想もしていないところから笑いが出て来るような演技を、彼は求めていたんでしょうね。小説家としても活躍される監督との仕事は、他の監督たちとの撮影と少々違っていたので、とても有意義なものでしたよ」
 主人公である中年男の要求をすべて受け入れてしまう、“ユニークなヒロイン”に扮したリシャール。演じた役柄について彼女はどうとらえているのだろう?
 「演じているだけであって、自分の個人的な思いを彼女に投じることはありませんでした。でも私と共通点があるとしたら、ひとりの人を強烈に愛するというところ、でしょうか」と自身の恋愛感も交えながらコメント。
「カオスの中で」
いつでも“ノン”ではなく“ウィ”と答えてしまう優柔不断な弁護士。そんな人柄につけ込むように、ある男は肉体関係を迫り、そして女は愛を求め、彼を混乱の渦へと追い詰めていく。やがて男は、ある選択をすることに…

 遠い日本で開催されているフランス映画祭は、仲間内の映画人の間でもよく知られている存在だとか。
 「本当にイキイキとしたフェスティバルですよね。観客が興味をもって作品を観てくれて、映画が好きなんだという気持ちがひしひしと感じられました。スタッフも観客も参加している雰囲気が感じられる、素晴らしいフェスティバル。参加できて嬉しかったです」
 スケジュールがたて込んでいて少々疲れ気味だと聞いていたが、そんなことを一切感じさせない彼女の応答に、フランスの女優魂を感じた。





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