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新しいリアリズムを見せる海洋映画の佳作
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『マスター・アンド・コマンダー』 2月28日より日劇PLEXほかにて公開
ナポレオン戦争時代を背景に、フランスの戦艦を追う英国海軍のカリスマ艦長と乗組員たちの戦いを描く。
(C)2003 Twentieth Century Fox Film Corporation and Universal Studios and Miramax Corp. All Rights Reserved. |
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――ピーター・ウィアー監督の『マスター・アンド・コマンダー』が賞レースをにぎわしていることもあり、今回は海洋映画をテーマに進めていきたいと思います。海洋映画といえば、最近では『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』('02)が予想以上に大ヒットしましたね。
渡辺 『マスター・アンド・コマンダー』と『パイレーツ・オブ・カリビアン』ではまったくタイプが違うけど、海洋ものの公開が続くのは珍しいわよね。今の人って、自分の好きなジャンルの映画しか見ないでしょ。だから、そういう人たちにもっといろんなジャンルがあるんだということを知ってもらうためにも、いい機会だと思うわ。
宇田川 とはいえ、「海洋もの」ということばから想像できる範囲はジャンルとしては広すぎて、成立しない気がするんですが…。ぼく自身としても漠然としたイメージはあるけど、あまりジャンルとして意識して見たことはないなぁ。
渡辺 じゃあ、「海」「帆船」「チャンバラ」をキーワードにするのはどう?
宇田川 そうですね。蒸気船発明よりまえの時代の海ということですね。そうなると、海賊映画や『マスター・アンド・コマンダー』のような軍隊ものになりますよね。
――おふたりは『マスター・アンド・コマンダー』をご覧になられていかがでした?
宇田川 堅実なタッチが好感のもてる映画だと思いました。もっとハデに、末梢神経を刺戟するようなつくりかたもできたでしょうに、それをあえてやっていない。とても見識があるなと思いましたね。たとえば、最近の映画はリアルに見せるために、銃弾のとんでいるのが見えるようにCGでかき込むようになったでしょ。『プライベート・ライアン』('98)のような戦争映画だとそれでいいんだけど、なんでもそうすればいいってもんじゃないですからね。『マスター・アンド・コマンダー』は大砲の弾道をかき込もうと思えばできたのに、それをやっていないのがいいなと思いました。そういうスタイルを選択しているのですね。
渡辺 今風のテクニックはほとんど使ってないものね。自然のよさをいかしてる。
宇田川 でも、砲弾が当たって船腹の壁が吹っ飛ぶシーンは、衝撃が実感として伝わってくるぐらいリアルでしたね。あれは今までの海洋ものにはないリアルさだと思いました。あと、帆のたたみ方とか船を修理するところを丁寧にえがいているのがおもしろかったな。舳先についている女神の像を直すシーンなんて初めて見た。
渡辺 私はガラパゴス諸島に行っちゃうのに驚いた。進化論で有名なダーウィンのヴィーグル号の話なのかと思っちゃったわ(笑)。
宇田川 あれは楽しかったですね。プレスシートに書いてあったけど、劇映画ではガラパゴスで撮影したのは初めてなんですって。
渡辺 あと、ラッセル・クロウ演じる主人公オーブリーと、その親友で船医のマチュリン(ポール・ベタニー)が一緒に楽器を演奏するシーンはとてもステキだった。きっとあのシーンがあるから、映画自体も洗練されてエレガントな感じがするんだと思う。これも今までの海洋活劇映画とは違うところよね。
海賊役にふさわしい俳優の条件は"ぴょんぴょん"!?
渡辺 『マスター・アンド・コマンダー』は、原作の小説もおもしろいのよ。アメリカではすでに20巻まで出版されていて、今回映画化されたのはその10巻目にあたるところ。日本でも早川書房から4巻目まで出ているはず。
宇田川 ジャック・オーブリーって、どこかで聞いたことのある名前だなと思ってたら、小説が出てたんですね。だから聞いたことがあったんだ。
――原作は「オーブリー&マチュリン」というタイトルだから、映画と違ってこの2人の2枚看板になってるんですね。
宇田川 じゃあ、『マスター・アンド・コマンダー』の"マスター"がマチュリンのことかな?
渡辺 いや、そうじゃなくて、"マスター・アンド・コマンダー"という役職があるの。正式な勅任艦長に就任していない海尉が、階級はそのままに小型艦の指揮をとる場合の呼び名で、航海長(マスター)を兼任しているからそう呼ばれるみたいよ。それに、映画だけを見ていると男だけの世界に思えるけど、小説ではちゃんと恋愛的なエピソードもあるの。しかも、オーブリーはかなりの女好き(笑)。海上では勇士でも、陸にあがるとお金の計算もできないダメ男なのに、なぜか女にはモテモテなの。マチュリンはすごく腕のいい医者で、生物おたく。オーブリーは大男で、マチュリンは168cmしかない小柄だそうだから、映画のイメージとはちょっと違うわね。
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『戦艦バウンティ号の叛乱』
1987年に実際に起こった船員の叛乱事件を描く海洋映画。1935年度アカデミー賞作品賞受賞。
発売:ワーナー・ホーム・ビデオ
¥1500(税別)
2月28日発売 |
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宇田川 マチュリン役のポール・ベタニーが大きいから、ラッセル・クロウはそんなに大男には見えなかったですね。『グラディエーター』('00)のときは、エリザベス・テイラーの元夫でもあったリチャード・バートンに似ているなと思ったけど、『マスター・アンド・コマンダー』ではチャールズ・ロートンに似てると思いました。そういえば、『戦艦バウンティ号の叛乱』('35)はチャールズ・ロートンが主演でしたよね。これは、こんどDVDで出ますね。
渡辺 ラッセルがチャールズ・ロートンはひどい!(笑)。日本では『南海征服』というタイトルで公開されたものね。昔から"海洋映画といえば、『南海征服』"というぐらい代表的な作品。私が見たのは、メル・ギブソン主演で二度目か三度目にリメイクされた『バウンティ 愛と反乱の航海』('84)だけど。
宇田川 ぼくはどれも見てないんですけど、マーロン・ブランド主演でもリメイクされましたよね。『戦艦バウンティ』('62)というタイトルで。
――海賊ものと軍隊ものでは違うと思いますが、海洋映画に向いている俳優の条件ってあるんですか?
宇田川 海賊の元祖といえば、ダグラス・フェアバンクスでしょうね。
渡辺 彼もそうだけど、私は海賊というとぴょんぴょん跳ねるイメージがある。バレエにも「海賊」というのがあって、これも跳躍力を必要とする演目なのね。『刑事ジョン・ブック 目撃者』('85)に出演したこともあるバレエ・ダンサー、アレクサンダー・ゴドノフが踊るのを見たときも10分ぐらいぴょんぴょん跳ねっぱなしだった。だから海賊には跳ねるイメージがある。
宇田川 バート・ランカスターの『真紅の盗賊』('52)でも、飛んだり跳ねたりしてましたね。船は帆桁とかいろいろあるから、ランカスターの得意な器械体操みたいなことが、いくらでもできる。
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『海賊ブラッド』
19世紀末に暴れまわった海賊バカニアーズをモデルにしたラファエル・サヴァティーニの小説の映画化。
発売:ジュネス
¥4800(税別) |
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渡辺 ジーン・ケリー主演の『踊る海賊』('48)なんてミュージカルだから、もちろんそう。それに、『海賊ブラッド』('35)のエロール・フリンも飛んだり跳ねたりに強いでしょ。今は何でもワイヤー・アクションを使ってやってしまうから、中途半端なのが多いじゃない。昔はそういうものを一切使わないで飛んだり跳ねたりしているわけだから、バレエと通じるところがあったんでしょうね。よく淀川長治先生もおっしゃっていたけど、「エロール・フリンの動きはすごく美しく、まるでダンスを踊っているよう」だって。今の俳優たちは違う技術に頼っちゃうから、逆に身体能力が落ちてるんじゃないかと思う。
宇田川 とはいえ、ワイヤー・アクションもちゃんとやるなら、ジェット・リーぐらい鍛えないとダメでしょう。ただ吊るされているだけなら、普通の人にもできますけどね(笑)。
渡辺 だから、『パイレーツ・オブ・カリビアン〜』のジョニー・デップは意外な伏兵だったと思うわ。動きがとてもきれいだったし。役に入り込みすぎて最初、歯をすべて金歯にしちゃったから、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーが困って少し外してもらったらしいけど(笑)。
――ジョニー・デップは「子供の頃から海賊役にあこがれていた」っていってましたからね。アカデミー賞主演男優賞にもノミネートされたし、大満足なんじゃないですか。
渡辺 続編も契約したっていうし、よほど楽しかったんでしょうね。 |
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