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PROFILE (HTML版)
渡辺祥子 宇田川幸洋

2003.9.30 UPDATE  



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大胆なセットを見るのがフェリーニ映画の醍醐味!

――この秋、フェデリコ・フェリーニ、カール・ドライヤー、オタール・イオセリアーニといったヨーロッパを代表する監督たちの作品が次々と公開されます。そこで、今回は“ヨーロッパの巨匠たち”というテーマで進めていきたいと思います。まずは、今年で没後10年を迎えるフェリーニですが、今度の<フェデリコ・フェリーニ映画祭>では彼が亡くなる前年に行われたインタビューをもとに構成されたドキュメンタリー『フェリーニ〜大いなる嘘つき〜』も公開されますね。

『フェリーニ〜大いなる嘘つき〜』
フェリーニの映画製作秘話に迫るドキュメンタリー。ロベルト・ベニーニらが証言者として出演。
<フェデリコ・フェリーニ映画祭>
シアター・イメージフォーラムにて11/1(土)〜12/5(金)公開
『甘い生活』
マスチェロ・マストロヤンニがゴシップ記者を演じる名作。狂騒と乱痴気騒ぎに彩られた退廃的な映像は圧巻!
渡辺 フェリーニのインタビューと、スタッフ、出演俳優の証言でできた『フェリーニ〜大いなる嘘つき〜』には、ちょっとがっかりしちゃった。彼の自伝的な『8 1/2』('63)の映像はいろいろ使っているけど、『甘い生活』('60)が入ってないの。彼の言葉に『8 1/2』のシーンを重ね、そこからフェリーニ像を浮かびあがらせようとしているのだけれど、作品が偏っていてものたりない。

宇田川 ほとんど『8 1/2』からばかり引用していましたね。あと『そして船は行く』('83)と『世にも怪奇な物語』('68)、『カサノバ』('76)。その他少々といったところで、シーンの引用のはなやかさはありませんでしたね。全体に地味な印象のドキュメンタリーだった。フェリーニ自身が語っているのは、いまとなっては貴重だけど。

渡辺 オープニング・タイトルにはニーノ・ロータの曲が流れ、フェリーニの映画らしくカメラがセットの中をどんどん進んでいくんだけど、ここはCGなの。でも、フェリーニの好きなセットとCGではかけ離れているし、「ちょっと違うんじゃない?」って思っちゃった。だって、フェリーニの世界をCGでやっちゃったら簡単じゃない? だから簡略された絵のように思えてがっかり。

宇田川 フェリーニの映画って、実際にサーカス小屋を建てちゃうように、でっかいセットをつくるのが本人のたのしみだったんだろうし、こっちもそれを見るのが醍醐味っていうのがありますものね。あの、つねに「つくりもの」っぽい、裏も見せてしまうようなセットに、フェリーニの人生観みたいなものが出ていたし。

――『カサノバ』('76)では、ビニールシートを使って、海までつくっちゃってますものね。

渡辺 フェリーニのセット好きは有名よね。あと、『フェリーニ〜大いなる嘘つき〜』の最初の方で、彼が演出しているシーンが出てくるんだけど、彼ったら役者にセリフじゃなくて数字をいわせたりするの。だからフェリーニ映画の字幕スーパーをつける人は本当に大変だと思うわ。聞きとれないセリフを唇のうごきで推測するなんてできないから。

宇田川 サイレントの時代から適当に口をうごかしているというのは、ひとつの方法としてありますよね。セリフおぼえの悪い役者の場合にもそういう方法が使われていた。

渡辺 フェリーニの映画はほとんどがアフレコ。彼の映画を見ていると、「セリフって何だろう」って思っちゃう。香港の監督にもそういうところがあるんじゃない?

宇田川 香港映画は基本的にアフレコですから。セリフはあとでかえたりもしますし、どうでもいいみたいなところがありますね。

渡辺 私、'92年にトロントでマルチェロ・マストロヤンニに会ったんだけど、『フェリーニ〜大いなる嘘つき〜』でもいわれているように、彼がいちばんフェリーニと合っていたんじゃないかと思うの。ふたりは映画を撮り始める前から友達同士だったから、マストロヤン二はフェリーニが何を望んでいるかがすぐ分かったんだろうし、彼自身も「フェリーニと映画をつくるのがいちばんたのしい」っていってた。マストロヤンニもセリフをおぼえない人だから、「こう動いて、こう振り向いて」というフェリーニの指示どおりに動けばいいのが、楽だったのかもしれないわね(笑)。でも、イギリスで演技を勉強した人なんかは、そういう指示のされ方はイヤでしょう。『フェリーニ〜大いなる嘘つき〜』の中で、『世にも怪奇な物語』の「悪魔の首飾」に出たテレンス・スタンプもインタビューに答えているんだけど、奥歯にものがはさまったようないい方をしている。彼もイギリス出身の俳優だから、きっとプライドをズタズタにされたんじゃない(笑)。


ニーノ・ロータの死とともにフェリーニにも陰りが…

――先ほど、フェリーニのセット好きの話が出ましたけど、彼の映画の魅力って何でしょうか?

渡辺 “大いなる嘘つき”なところ! これ、フェリーニ本人がいっているのよ。

宇田川 ドキュメンタリーのタイトルそのまま(笑)。

渡辺 フェリーニの映画って芸術映画だと思うけど、ふつうに話がおもしろくて、大胆な映像を見せてくれるから、見ていてたのしい。変な人もいっぱいでてくるし、芸術といえども堅苦しい感じがまったくしないの。あと、フェリーニの映画は、とにかくニーノ・ロータの音楽がいいのよね。巨匠の中では、『アラビアのロレンス』('62)などのデヴィッド・リーンと並んでダントツに音楽の使い方がうまい監督だと思うわ。『フェリーニ〜大いなる嘘つき〜』では、ニーノ・ロータの音楽を最初からずっと使っている。

『女の都』
次々と現れる女性たちに翻弄されながら、迷宮の中に入り込んでいく男の姿を描く。マストロヤンニの軽妙な演技も見もの。
宇田川 『女の都』('80)の撮影前にニーノ・ロータが亡くなって、音楽がルイス・バカロフに変わりましたよね。ぼくはエリオ・ペトリ監督の『悪い奴ほど手が白い』('67)でルイス・バカロフが好きだったから『女の都』には注目してたんですけど、あのあたりからフェリーニのあぶらっこいところがなくなってきた。

渡辺 私も『女の都』あたりから、あまり好きじゃない。あと、『道』('54)は名作ではあるけれど、貧乏くさいから、私としてはちょっとね(笑)。

宇田川 ぼくも『道』は、あまり好きじゃないな。ずいぶん遅れて見たということもあると思いますが。リアルタイムではじめて見た『8 1/2』とか、それ以降の作品の方が好きですね。とくに『フェリーニのアマルコルド』('74)は何度でも見たくなっちゃいます。

渡辺 そう、映画ってリアルタイムで見るものよね。後からビデオで追っかけて見るのでは、感動の度合いが違うでしょ。

宇田川 古い映画でもはじめて出会ったときに感動するというのはありますけど、確かに封切りのときに見たものとはまた違う感動ですよね。封切りで見た映画って、流行歌みたいに、見た時代のこともついでに思い出したりしますね。

渡辺 そういえば、『フェリーニ〜大いなる嘘つき〜』に、劇中でフェリーニの赤ちゃんの頃の写真が出てくるんだけど、体は2頭身なのに目玉はギョロッ、唇は皮肉っぽくゆがんでフェリーニそのままなの! 目玉のフェリちゃんって感じで、あれは見ものよ!

宇田川 そうでしたね。全然おなじ顔つきで。ヘンな赤ん坊ですよね(笑)。


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