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第1回 「ブラッド・ピットのエビアン・ボトル」
第2回 「デンゼル・ワシントンと三つの招き猫」
第3回 「ギヨーム・ドパルデューのパープル・ヘア」
第4回 「ホアキン、ラッセル、ワイルド・ナイト」
第5回 「キアちゃん、キアロスタミ」
第6回 「キアヌ・リーブスがヘタくそバンドに一生懸命な理由」
第7回 「愛しのギアさま:Chapter1」
第8回 「愛しのギアさま:Chapter2」
第9回 「世界の黒澤と梅干しの味」
第10回 「エドワード・ノートンのヘンな日本語」
第11回 「ハリソン・フォードと“特別”なティー・タイム」
第12回 「エドワード・バーンズとNY“至福”旅行」
第13回 「初の“女”! おまけのジュリア」
第14回 「待ち焦がれて、ホウ・シャオシェン…」
第15回 「ジャコ・ヴァン・ドルマル監督と共に涙したあの日」
第16回 「ヴァンサン、オスカー女優が義姉で良かったね!」
第17回 「思いおこせば10年前だね〜、キューザック!」
第18回 「やっぱ前評判は信じられない!とっても良い人(ビリー・ボブ)の乳首」
第19回 「監督は真実を語る/スキャンダル編」
第20回 「監督は真実を語る/アノ映画の裏話」
第21回 「ホントにイイ子に育ちました。映画大好き青年ディカプリオ!」






2003.2.6UPDATE

金子裕子
text by Yuko Kaneko


第22回●「早口な2大巨匠スコセッシ&スピルバーグ、
    さてお仕事の速さは…?」


 
 念願というのは、突如、叶うことがある。長年にわたってスターを追いかけてきた私だが、監督にはわりと縁が薄い。そりゃそうでしょ。美形に目がくらむあまりに、いつだってインタビューのセッティング時には、「監督と男優、どっちにします?」と問われりゃ「もちろん、顔のイイほう」と応えてきたんだもん。自業自得? しかし、そんな私も映画界に身を置くエンピツ芸者(いやー、古くてゴメン! いまやパソコン芸者というべきか?)。まぁ、とにかく、いっぱしに大物監督には会ってみたい、話を聞いてみたいとは思っているのだよ。

 で、その双璧が、やはり20世紀の巨匠マーティン・スコセッシとスティーブン・スピルバーグ。この2大巨星の業績&功績は、いまさら私なんぞが語らなくても、みんないやというほど知っているはず。で、そんな巨星たちに、なんと、ほとんど同時期にお会いするという光栄に浴したのだから、ご報告するっきゃないでしょ。

 
 まず、スコセッシは2002年の12月に。もちろん、構想30年、撮影3年という、なんとも思い入れも年月も金もかけた『ギャング・オブ・ニューヨーク』のプロモーションで来日。精力的にインタビューをこなしてくれたんだが、その条件が、なかなかにキビシイ。女性誌はダメ、私生活についての質問はダメ、インタビュアー以外の人間(編集者)の同席もダメと、ダメ&ダメづくし。まぁ、アイドル人気のレオナルド・ディカプリオ主演作でもNYのルーツを描いたシリアス・ドラマだからミーハーに書かれたくないんだろうし、数年前に娘のような女性と4度目だか5度目だかの再婚をして孫のような娘が生まれたし。叩けばホコリの出るカラダ(?)って、ことなんだろうが…。

 
 それでも、目の前に登場した巨匠は、すこぶるゴキゲンで、気さくで、陽気。9.11のテロ事件に端を発し、編集が遅れに遅れて公開が1年も延びてしまった理由についても「最初からあの公開スケジュールでは無理なんだから、いくら遅れたって知ったこっちゃないさ」と豪快な笑い。私生活についても、「僕が金持ち役で出演してるシーンには、妻も娘も出演させたんだ。彼女は、もともと上流階級の家柄の出だから、ちょうどいいと思って。娘もにとっても、あとでいい記念になるし…」なんて、問わず語りだもの、好感は増す。いやー、それにしても、あの早口にはまいったけどね。TVなどのインタビューを見ていて、一応は認識してたんだけど、実際、耳にしてみると、スゴイよ。身振り手振り付きでのマシンガン・トークは。いかにせっかちなのかがよ〜くわかるもの。それにしても、こんなにせっかちで頭の回転も早いのに、どうして、映画作りはモタるんだろうなぁ。それが、とっても不思議だよなぁ。

 
 そこへいくと、スピルバーグの場合は、同じように早口なんだけど、でもその素顔どおりに映画作りもテキパキ。『マイノリティ・リポート』は、そこそこに時間を費やしたけれど、次の『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』なんて2か月足らず、だんもんね。同じくレオナルド・ディカプリオ主演でも。「だいたい僕は、迷わずに撮るほうだしね。最初に綿密な話しあいと準備をしておけば、そうそう時間はかからないんだ。編集も、その日のうちに撮ったものを、その場でしていけばいいし…。まして『キャッチ・ミー〜』みたいなロード・ムービーはリズムが大切だから、その場の雰囲気さえ大事にしてどんどん撮っていったほうがいいんだ」

 なるほど、横にいたレオも「ワンテイクのスピルバーグってか?」と笑っていたっけ。なんでも、多くのシーンを一発決めしていたそうな。



 illustration by hiroyuki ijichi


 
 ちなみに、ふと思いだすのは、かつて黒澤明監督にインタビューしたときのこと。『地獄の黙示録』('79)で編集にモタついていたフランシス・フォード・コッポラ監督に、「その日に撮ったものはその日に編集」と教えたのは黒澤監督だ。きっとスピルバーグも敬愛して止まない日本の巨匠の教えを実践していたに違いない、と私は思うのだ。となると、『夢』('90)にゴッホ役で出演したこともあるスコセッシはどうなるのか? 彼だって、黒澤監督の仕事ぶりは見ていたはずだし、もちろん、少なからず尊敬もしていただろうに。でも、そのやり方を実践はしていはないのか、してもなお迷うのか? まぁ、「ほかの監督のやり方なんか、知ったこっちゃないよ」、なのかもしれないが(笑)。

 
 それにしても、小柄で早口で、名声を得てもなお精力的に仕事をし続ける、共通項の多いふたりを比べてみると、興味深い。なにしろ、60歳のスコセッシは、若妻をゲットするだけあって、まだまだ色気も漂う男ぶり。かたや55歳のスピルバーグは、“永遠に少年の心を持つ監督”といわれながらも、私生活では2人目の妻ケイト・キャプショーと実子と養子に囲まれて、「妻の権力絶大で、家庭じゃ僕がマイノリティさ」、なんてニコニコ顔。なんだか、ヒゲ面にちっこいメガネの風情も、枯れちゃってる雰囲気で、それはそれで好感が持てるのだが。

 今思えば、貴重な体験をしたもんで、今後、再会のチャンスがあれば、巨星の素顔の変遷に、より注目したいと思ってます。えっ、個人的にどちらが好みか、って? うーん、幸せにしてくれるのはスピちゃんだろうけど、苦労しても男として愛せるのはスコセッシのほう、かもね(笑)。


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