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第1回 「ブラッド・ピットのエビアン・ボトル」
第2回 「デンゼル・ワシントンと三つの招き猫」
第3回 「ギヨーム・ドパルデューのパープル・ヘア」
第4回 「ホアキン、ラッセル、ワイルド・ナイト」
第5回 「キアちゃん、キアロスタミ」
第6回 「キアヌ・リーブスがヘタくそバンドに一生懸命な理由」
第7回 「愛しのギアさま:Chapter1」
第8回 「愛しのギアさま:Chapter2」
第9回 「世界の黒澤と梅干しの味」
第10回 「エドワード・ノートンのヘンな日本語」
第11回 「ハリソン・フォードと“特別”なティー・タイム」
第12回 「エドワード・バーンズとNY“至福”旅行」
第13回 「初の“女”! おまけのジュリア」
第14回 「待ち焦がれて、ホウ・シャオシェン…」
第15回 「ジャコ・ヴァン・ドルマル監督と共に涙したあの日」
第16回 「ヴァンサン、オスカー女優が義姉で良かったね!」
第17回 「思いおこせば10年前だね〜、キューザック!」

2001.11.2UPDATE

金子裕子
text by Yuko Kaneko


第18回●「やっぱ前評判は信じられない!
とっても良い人(ビリー・ボブ)の乳首」


 
 ビリー・ボブ・ソーントンに対するメディアからのインフォメーションは、けっこうスゴイ。

I: 結婚5度目
II: 4度目の妻への暴力が元で裁判所から“妻に半径1キロ以内の接近禁止”命令あり
III: 4人目の妻となるはずだったローラ・ダーンと同棲&婚約中にアンジェリーナ・ジョリーと電撃結婚
IV: 20歳年下の妻とたがいの血液を交換しペンダントに入れてぶらさげている……

 そんなワケで、会う前からどこか胡散臭い印象がぬぐえなかった。しかし、彼に会う前に2度ほどインタビューした現在の妻アンジェリーナが“イレズミ・フェチ”とか“自傷癖あり”といった前評判にもかかわらず、とても率直で誠実で、しかも明るい女性だったので、“前評判はアテにならない”とも思っていたのだ。そして、奇しくも『トゥームレイダー』(2001)の宣伝で初来日をした妻にビリー・ボブは同行してきた。そして、“遊んでても仕方ないから、インタビューを受ける”という。まずは、その心がけや良し。多くのスターがもったいぶってインタビューに多くの時間を割かないというのに。

 
 さて、そんなこんなで、会いました。初めてのビリー・ボブに。まず、驚いたのは、そのファッション。サテン地の黒いシャツのボタンをヘソの近くまで外し、胸には鎖や革ひもや、くだんの血液入りのペンダントやらがジャラジャラ。もちろん、腕輪も指輪もいっぱい。しかも、デコラティブなウエスタン・ブーツだもの、さながらロック・スターのよう。どう見ても売れっ子の演技派俳優でオスカー受賞の脚本家&監督には見えません。でも、これがまた、艶っぽくてカッコいいんだなぁ。46歳。熟年のやんちゃ坊主って感じで、妙にそそる(笑)。しかも、大きな黒い瞳が澄みきっていて、キラキラ光る。“目は心の窓”というのを信じるなら、まさに純粋な人柄を映しているとうだ。

 
 そう、そして瞳は嘘をつかなかった。その話しぶりは、誠実で、知的で、その上ヒューマン。たとえば、大作『アルマゲドン』('98)に出演した感想も正直に。
「あれは、ちょっと後悔している。あれだけいい俳優たちを使っていても、その人たちの演技をぜんぜん必要としていない。そんな映画が存在すること自体が、とてもショックだったよ(笑)」

 また、アカデミー賞脚本賞を受賞した初監督作『スリング・ブレイド』に続く監督第2作『すべての美しい馬』についても。
「自分の書いた脚本以外の監督は気がすすまなかった。しかし、原作が好きだったし、スタジオ側は“いっさい口を挟まない”と約束した。でも、そんなうまい話はなかったんだよなぁ。編集にも口を出すし、サントラも全部変えるし。僕は、元々がミュージシャンだし、今年の9月には『Private Radio』というCDも発売するんだ。その僕が、カントリーやブルースなどで渋いサントラを作ったにも関わらずだよ! あの大仰なサウンドで、作品は台なしさ……」

 こういう話をするときも、不平不満を言っている感じではなく、大事な映画を冒涜されて残念というか、とても悲しくて仕方がないといった風情だから、共感しきり。



illustration by hiroyuki ijichi


 
 もちろん、インタビューの中心となる出演作については、細かに、鋭い視点でコメント。対象は、コーエン兄弟が製作・監督をつとめた『Man Who was'nt there』(2002年春公開)と『バンデッツ』(12月下旬公開)。前者は、平凡な理髪師がちょっとした誘惑から殺人を犯すまでを寡黙な演技で。後者は、ブルース・ウィリス&ケイト・ブランシェットとトリオの銀行強盗を演じ、頭脳明晰なオシャベリ男を。風ぼうもまったく違えて演じ分けるワザには、いつもながら感服する。

 「結局、演技はメンタリティの問題。キャラクターの心を分析してその心に同化して。そうすれば、自然に演技できるものなんだ。なんでも、肝心なのはハートなんだ。演技も人生も。すべてがね」

 そういう言葉も、信じられる。だって、自分のハートに訴えかけて来れば、それに対して即、行動を起こすから。その顕著な現れがアンジェリーナがロケで訪れたカンボジアの難民の惨状を知るやいなや援助組織を設立しているし、アメリカの恵まれない老人たちにもボランティア活動を行っているようだ。テレたのか、多くは語らなかったけれど…。

 
 そんなわけで、すっかり魅了されたビリー・ボブ。じつは、1対1のインタビューの翌日にも、5人ほどのジャーナリストが彼を囲むラウンド・インタビューにも参加することになった。すると、2日目に会うやいなや、「ハロー! マイ・フレンド」と私の肩を抱き寄せ、周囲の人たちに「彼女は、僕と同じマインドを持つ友だちなんだ」と紹介をしてくれた。イヤー、やっぱり感激するね。何度会っても、顔すら覚えていないヤツラ(スターに限らず)の多い昨今。こうまでフレンドリーに接してくれると、ホント、“最後までついていきまっせ!”って、私が思ってしまうのも当然でしょ?

 しかも、インタビューが終わりみんなが部屋を出始めたころにサインをねだる私を、嫌な顔もせず、まだ友だちとして扱ってくれて雑談を開始。「二の腕にアンジェリーナの名前をイレズミしてるよね?」となにげなくいえば、シャツを脱いで、上半身のあちこちに彫ってあるイレズミを説明つきで見せてくれて……。それも、30センチくらい接近してて……、ビリー・ボブは背が高いから……。アンタ、ピンクの乳首が私の目の前に! ちょっと唇を突きだせば、吸い付ける距離だもの。いかに百戦錬磨(?)の私でも、マイッタ、マイッタ! 当のビリー・ボブは私の赤面を気にしてるそぶりもなく、「CDのサンプルができたら送るからね」とかいいつつ、もう一度肩を抱いてさっていったけど。私の方は、帰り道にもピンクの乳首だけがチラついて、なんだか妙な気分。そして、不埒にも、図々しくも、タッチしなかったことを後悔しているのであった。

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