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第1回 「ブラッド・ピットのエビアン・ボトル」
第2回 「デンゼル・ワシントンと三つの招き猫」
第3回 「ギヨーム・ドパルデューのパープル・ヘア」
第4回 「ホアキン、ラッセル、ワイルド・ナイト」
第5回 「キアちゃん、キアロスタミ」
第6回 「キアヌ・リーブスがヘタくそバンドに一生懸命な理由」
第7回 「愛しのギアさま:Chapter1」
第8回 「愛しのギアさま:Chapter2」
第9回 「世界の黒澤と梅干しの味」
第10回 「エドワード・ノートンのヘンな日本語」
第11回 「ハリソン・フォードと“特別”なティー・タイム」
第12回 「エドワード・バーンズとNY“至福”旅行」
第13回 「初の“女”! おまけのジュリア」
第14回 「待ち焦がれて、ホウ・シャオシェン…」
第15回 「ジャコ・ヴァン・ドルマル監督と共に涙したあの日」

2001.8.8UPDATE

金子裕子
text by Yuko Kaneko


第16回●「ヴァンサン、オスカー女優が義姉で良かったね!」

 
 いまさらいうまでもないのだけれど、私が至福の“特別な時間”を過せるのは、取材をアレンジしてくださるスタッフのみなさんのおかげである。感謝! で、そのひとつに、毎年横浜で開催される“フランス映画祭横浜”のスタッフの方々も、入っている。というのも、毎年、来日予定の俳優の中から必ず“金子裕子が会うべき美形俳優たち”をピック・アップして、インタビュー時間をくださるからだ。

 で、今年の彼らのイチオシ美形俳優は、『ピアニスト』でカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞を受賞したばかりのブノワ・マジメルだった。『年下のひと』で共演したジュリエット・ビノシュも惚れて、未婚のままに子供を産んだほどの、イイ男である。しかし、映画祭の1ヶ月前に『王は踊る』のプロモーションで来日した彼にインタビューをしている私にとっては、残念ながらターゲットではない。

 そう、今年の“私の”ハイライトは、ヴァンサン・マルティネスだ!……、っていっても、あまりピンと来る人は、いないかもなぁ。だって、彼って、イゼベル・ユペールと共演した『肉体の学校(仮題)』で映画デビューしてから数本の作品に出演してるし、フランスではけっこう人気があるんだけど、どうも日本未公開作が多くて、知名度はイマイチだもの。そうそう、『プロヴァンスの恋』で話題になったセクシー系の美形オリヴィエ・マルティネスの弟といえば、なぜに私がこだわるか、わかってもらえるかしらん?

 
 もちろん、スタッフの方々は、タップリ1時間もインタビュー時間をくれましたよ。 で、部屋に到着した期待のヴァンサンはといえば、昨夜の寝不足がたたったのか、はれぼったい目を隠すためにデッカイ真っ黒のサングラスを着用(キレイな顔が見えなくて、ヤキモキ!)。それでも、脇役ながら強烈な印象を放っている出演作『カオスの中で(仮題)』について、雄弁に、誠実に語ってくれる。その姿は、兄オリヴィエにも劣らぬ好青年ぶり。しかも、「俺は、じつはコンサルバトワールで音楽を学んだ根っからのミュージシャン。俳優業は、自己表現の方法を磨くのにはいい勉強にはなるけど、やっぱり“本業は?”ってきかれたら、“ミュージシャンだぜ!”って答えちゃうだろな。いまだって、バンドを組んでいて、年内にはレコーディングもする予定なんだ」と、プライドの高いお芸術志向のフランス俳優とは一味違うコメント(好きだな!)。そして、その後は音楽談義に花を咲かせ、あげくの果てにはサングラスを外して黒い大きな瞳で私を見つめながら、ラブ・ソングまで熱唱してくれるサービスぶり。「君のために歌ったんだよ」なんてお世辞を口にされたヒにゃ、私、トロけそう! ってなわけで、とってもイイ気分で、インタビューは終了したのだ。

 しかし、なっ、なんと。これはほんのプロローグ。そう、本番は、2時間後に始まった。



illustration by hiroyuki ijichi


 
 ちなみに、“フランス映画祭横浜”は、「フランス文化を日本に浸透させよう」というフランス政府の胆入りだけに、毎年、多くのスターたちが、ほとんどギャラなしで来日してくれる。そして、全員が会場のパシコ横浜の隣にあるインターコンチネンタル・ホテルにご宿泊。となれば、スターたちも友人や仕事仲間と夜遊びしつつ、ほとんど修学旅行気分。だから、いつもよりググーンとくつろいで、ホテルのロビーやホヒー・ハウスをうろうろしている。

 で、ヴァンサンと別れた後に、もうひとりの俳優をインタビューした私は、コーヒー・ハウスでカメラマンと休憩していた。そこに、来たんですね。例の、まるでブルース・ブラザースみたいなサングラス着用のヴァンサンが。もちろん、目が合って、軽く会釈をした私だけど、後は斜め後ろの席についてひとりコーラを飲む彼を、礼儀として無視。ところが、5分もたたないうちに、ヴァンサンが私の横にやって来てビックリ。

「俺、君が帰った後に、本と、バカだと思ったんだ。だって、俺のバンドの名前を教えるの忘れちゃったんだもの」

 もちろん、それなら「書いて」と私が差し出した紙に“The Band of Marthines Vincet→FRISCO”と中腰で記入。そこで、「インタビュー、楽しかったよ!」と勝手に話しだすから、一応、礼儀として「座る?」というと、もう、ニッコニコの顔で私の隣に座ってしまったのだ。いやー、驚くやら、うれしいやら。で、少々夢見心地になりながらも、雑談に花を咲かせたんだけど、それが、もう、愉快で、愉快で。



私「お兄さんのオリヴィエは、いまどこに住んでるの?
彼「マリブ・ビーチに家を買ったんだよ」
私「誰と住んでるの?」
彼「そりゃ、妻のミラソルヴィーノといっしょにきまってるさ」
私「ヒョエー、結婚したの?」
彼「そうさ。ウチのオヤジなんか、息子の嫁がオオスカー女優だってんで大喜びさ。兄貴が初めてミラを家に連れてきたときなんか、もう、親戚まで詰めかけて大騒ぎだったんだから(爆笑)」
私「ハリウッドにいく気はないの?(俳優として)?」
彼「アメリカには、行ったよ。アニキの家に泊まってたんだ。もう、すごいよ。セクシーなミラが俺の義理のアネキだもんな。朝なんか起きると、楽しいよ。なにしろ、彼女ってコレもん(両手でボインのポーズをとりながら)じゃない、。ソレが、バスローブ羽織っただけの姿で目の前歩いてて、もう……マイッタのなんのって。ガハハハッ」

 
 爆笑の本番が続くこと約30分。いやー、スピッツのように人懐っこくて、可愛いヴァンサンにすっかり、魅了されっぱなし。これだから、アットホームでランダムな“フランス映画祭横浜”って、大好き! みなさんも、来年はぜひお出かけしてみたら? ひょっとして“特別な時間”が経験できるかもよ。


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