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第1回 「ブラッド・ピットのエビアン・ボトル」
第2回 「デンゼル・ワシントンと三つの招き猫」
第3回 「ギヨーム・ドパルデューのパープル・ヘア」
第4回 「ホアキン、ラッセル、ワイルド・ナイト」
第5回 「キアちゃん、キアロスタミ」
第6回 「キアヌ・リーブスがヘタくそバンドに一生懸命な理由」
第7回 「愛しのギアさま:Chapter1」
第8回 「愛しのギアさま:Chapter2」
第9回 「世界の黒澤と梅干しの味」
第10回 「エドワード・ノートンのヘンな日本語」
第11回 「ハリソン・フォードと“特別”なティー・タイム」
第12回 「エドワード・バーンズとNY“至福”旅行」

2001.5.8 UPDATE

金子裕子
text by Yuko Kaneko


第13回●「初の“女”! おまけのジュリア」

 
 賢明な読者の方は、そろそろお気づきかもしれない。そう、この連載も1年を過ぎたというのに、女優がまったく登場していないことを……。もちろん、これまでに女優のインタビューをしたことがないわけではない。しかし“特別な時間”として、ご報告するほどの興奮が、なかなか得られないのだ。だって、これも賢明な読者のかたならお気づきでしょうけど、私って、イイ男には目がないけれど、女にはとりわけキビシイんだもん。

 そこで、今回は、いかに女優に冷淡であるかの、ご報告をすることに。相手はハリウッド女優の中でいちばん高額なギャラをとる、しかも『エリン・ブロコビッチ』でオスカー女優にもなった天下のジュリア・ロバーツ。まぁ、なんの弁解にもならないけれど、私が『ザ・メキシカン』のプロモーションで今年の3月に会見したのは、候補のとき。まだ、オスカー女優にはなっていなかったのだけど。

 で、『ザ・メキシカン』とくれば、私の大好きなブラッド・ピットが相手役。スター様は単独行動が嫌いなのか、当然のごとくジュリアといっしょにインタビューを受けるという。場所は、ジュリアの出世作『プリティ・ウーマン』の舞台ともなった超高級ホテルのハリウッド・ウィルシャー・ホテル。奇遇かも? もちろん、神と崇めたリチャード・ギア様のことなどを思い出し、エレベーターに乗る時も懐かしさで胸がキューン!

 
 しかし、その心とは裏腹に、インタビュールームに着いた私が最初にしたことは、ブラッドの座る椅子と私の椅子の位置決め(目の前の幸せを追及するタチなんです)。とにかく、1センチでもブラッドの側に座って“ジュリアはその横でいいや”ってなもんです。

 そして胸ドキで待つこと1時間。あろうことか最初に部屋に入ってきたジュリアったら、ブラッド様ご予約のお席に着こうとするではありませんか。それに気付いた私は無我夢中で「ノー!」と叫んで、気がつけばジュリアを押しのけていた……。もちろん、天下のジュリアは一瞬ぽかんとして「アン・フェアー!」と吠えたんだが、そんなことでひるまない私。続いて入ってきたブラッドを予定の席に案内して、一件落着。

 といってもねぇ。落着したのは私だけ。きっとジュリアはハラワタ煮えくり返っていただろうなぁ……。しかし、そんな事はなにもなかったように、にこやかにインタビューを開始したジュリアって、さすが。大物の貫録が漂います。もう、大物すぎて、理路整然とよくしゃべる、しゃべる。隣のブラッドなんか、元来がテレ屋で面倒くさがりだから、ジュリアがしゃべってくれれば、「僕、ラッキー!」。質問をしても、短い答えだったり、モゴモゴしてたり。時には、例の100万ドルの笑顔でジュリアに助けを求めたりしてばかり。

「ブラッドって、本当は早口の私に着いてこられるのよ。でも、ここでそんなことをするとマヌケに見えるから、やらないのよ(笑)」

 3歳年下ながら、ジュリアのほうがどう見てもキレ者のアネキといった感じ。「映画の中の喧嘩でも負けたけど、実際に喧嘩しても僕が負けるよ」という、ブラッドのコメントには、大笑いしつつ、納得です。



illustration by hiroyuki ijichi


 
 それにしても、ジュリアの頭の回転の速いこと、速いこと。どんな質問にも当意即妙に答え、しかも異議があれば切り返すことも辞さない。たとえば、メキシコ・ロケをした新作「ザ・メキシカン」のザラついた美しい映像が気に入っているくだりでは、映画好きの一面を披露。

「70年代の『スケアクロウ』や『さらば冬のかもめ』などの映画と同じ感触ね。浮き彫りの地図のような、手で触れることができて、直接心に響くような、オールド・ファッションな映画の雰囲気があるの。最近の映画って、とてもツルツルしちゃって、触っても感触が得られない感じなのよね。それって、つまらないと思わない?」

 とても熱心に話し込むジュリア。かと思えば、『エリン・ブロコビッチ』の監督スティーブン・ソダーバーグのコメントを例に出し、“彼が、ジュリアはとても優れたチーム・プレイヤーだといってたが、自分ではどう思うか?”ときくと、いきなりご機嫌斜めに。

「チープ・プレイヤーってなんなの?(とブラッドに訊ねて)私は映画の中で裸にならないわよ!」(なんのこっちゃ?) そこですかさず「僕は、なるよ」と答えたブラッドって、大ボケ。ほんと、可愛い! そのボケぶりにちょっと気を取り直したジュリアは、再びコメントを続ける。

「人間、威張ってもしょうがないじゃない。チームワークを尊重するのは、保育園のルールよ。親切に物を分け合って、他の子供と仲良く遊びましょって、いうのはね。共演者やスタッフとの協調性を保つことは、そのルールの大人向けバージョンよ。それはブラッドもちゃんと守っていること。だからこそ、スティーブンは、次の『オーシャンと11人の仲間たち』に、私たちを雇ったのよ」



 2001年5月の現在。その新作『オーシャンと11人の仲間たち』の撮影は真っ盛り。ジュリアにオスカーをもたらしたソダーバーグ監督と、ジュリアに仕切られっぱなしのブラッドが、再びジュリアとのコラボレーションを望んだ。それはまぎれもなく、ジュリアがいかに優秀な女優であり、素晴らしい人柄であることの証明かもしれない。

 正直なところ、インタビュー中は、時折、突っかかるような物言いをするジュリアにビックリしたのだけれど、考えてみれば、これまで彼女がメディアからいかにひどい目にあってきたかを思えば、それも納得がいく。『プリティ・ウーマン』のモンスターヒットでいきなり“ハリウッド・シンデレラ”に祭り上げられてからは、その一挙手一投足が話題になり、ちょっとしたコメントもねじ曲げられて報道されたこともしばしば。となれば、慎重にもなるし相手の言葉や自分のコメントに敏感になりすぎても不思議はない。いや、その慎重さと過敏さ、そして負けん気があったからこそ、いま“ハリウッド・クイーン”の座を手にできたんだと思う。隣で笑顔をふりまいて、サラリとコメントをしている“ハリウッド・キング”のブラッドとの違いは、やはり感慨深いものがある。まだまだハリウッドは男女の差別があるらしい。

 とはいえ、もしかしたら、時々突っかかったのは、あくまでスタートの「ノー!」のせいかもしれないのだけど。そうだとしたら、ごめんね! 夢中だったもんだから、ブラッドに……。



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