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第1回 「ブラッド・ピットのエビアン・ボトル」
第2回 「デンゼル・ワシントンと三つの招き猫」
第3回 「ギヨーム・ドパルデューのパープル・ヘア」
第4回 「ホアキン、ラッセル、ワイルド・ナイト」
第5回 「キアちゃん、キアロスタミ」
第6回 「キアヌ・リーブスがヘタくそバンドに一生懸命な理由」
第7回 「愛しのギアさま:Chapter1」
第8回 「愛しのギアさま:Chapter2」
第9回 「世界の黒澤と梅干しの味」
第10回 「エドワード・ノートンのヘンな日本語」

2001.2.5 UPDATE

金子裕子
text by Yuko Kaneko


第11回●「ハリソン・フォードと“特別な”ティー・タイム」

 
 私の長い映画ライター生活の中でも、“超&超”のつく“特別な時間”がある。いつかはこのコーナーで紹介しようと温めていたのだが、なんともスキャンダラスなきっかけで、書き始めることになってしまった。

 そう、ハリソン・フォードである。公私共にナイス・ガイのイメージが強固だったハリソンだが、なんと、2001年1月の現在、17年間も連れ添ったメリッサ・マチスン夫人との別居が伝えられている。主なる原因は、どうも夫の浮気という話もあるが真相は薮の中。それでも、どうやら離婚はさけられない様子なのだ。

 本当にショックだった。まぁ、スターのゴシップ好きの私にとっては、彼らの離婚や結婚などは日常茶飯事で、驚くに足らないのだが……。ハリソンだけはまるで我が事のように驚き、“夫妻には13歳の息子マルコムと11歳の娘ジョージアがいる”という文字に、やるせない思いを抱いている。というのも、この夫婦の仲の良さと、子供への深い愛情をこの目で見ているからだ。

 
 私がハリソン・フォードのロサンゼルスにある家を訪れたのは、いまから10年前だ。ロサンゼルスのビバリー・ヒルズよりももっと高級住宅地にあるその家は、門から長い坂に続く広い敷地に建てられてはいるものの、けしてきらびやかではなく、豊かな緑に囲まれた木造りのしっとりと落ち着いた佇まい。とても趣味の良いもので、夫妻の真摯にして飾らない人柄をうかがわせている。

 じつは、この“栄光の訪問”は、前日にハリソン自身にインタビューはしているものの、旅の同行者が夫人と旧知の仲ということで、招待されたもの。私はオマケでくっついていったにすぎない。しかし、夫人は、とても親しみやすい笑顔で、まるで仲の良い女友だちが訪ねてきたように出迎えてくれた。彼女の腕にはフォード家4代目か5代目にして初めて誕生した女の子ジョージアがおばあちゃんの手作りワンピースを着て抱かれている。そして居間に続く広いデッキにはヤンチャ盛りのマルコムが遊んでいた。まるでお人形のように愛らしいジョージアを抱かせてもらうと、うれしいことに彼女はなついてゴキゲン。それからずっと私の腕から離れないから、よけいにかわいくて、いとおしい。



illustration by hiroyuki ijichi


 
 そうこうしているうちに、坂をバリバリと駆け登るバイクの音が聞こえた。なんと、革ジャンに黒いヘルメットをかぶったハリソンのご帰還である。家に入った彼はにこやかに家族にキス。そして、私に抱かれているジョージアに腕を伸ばすと、彼女は泣きべそをかいた。すると、ハリソンは娘に人さし指をつきだして「チビ助、いつか仕返ししてやるからなぁ」と苦笑い。もう、その目がかわいくて仕方がないといった感じで、子煩悩ぶりがうかがえた。続くティー・タイムには、「ハニー、お客様にお茶を注いであげて」という夫人の言葉にしたがって、カップ・ケーキをほおばる夫がお給仕。そのスムーズなコンビネーションはさすが仲の良い夫婦ならでは。とても感じがいい。もちろん、私としては、もう、あのハリソン・フォードがいれてくれたお茶でっせ! しかもケーキまでお皿に乗せてくれて……。感激しまくりで、カップを持つ手も震えっぱなし。どんな味がしたのかまったく覚えていない。

 訪問時間は、約2時間半ぐらい。あれこれ質問を投げかける私に嫌な顔ひとつせずに、誠実に答えてくれるハリソン。娘の名前は大好きな名曲“ジョージア・オン・マイ・マインド”と故郷ジョージアにちなんで命名したんだと言いながら、少しだけメロディを口ずさんだりしてもくれて……。なんだか、納屋で“ワンダフル・ワールド”を口ずさんでいた『刑事ジョン・ブック 目撃者』とダブってしまい、まるでスクリーンのワンシーンのようで、ドキドキッ。居間の片隅には、彼自身が作ったサイド・テーブルも置いてあるしなぁ。



 とにかく、あまりに親しみやすく、記念写真まで撮らせてくれたのだから、時々彼が大スターであることを忘れてしまうほどに篤いおもてなしをしていただいたワケだ。しかも、帰り際には「君をジョージアのベビー・シッターと認定しよう」とにっこり。別れを惜しんでイヤイヤをするジョージアの泣き声を後にしたときは、ほんと、私も帰りたくなくてイヤイヤしたくなったくらいだ。

 ちなみに、この訪問にはちょっとした後日談(?)もある。それは、93年に『逃亡者』で来日したときは「ジョージアのベビーシッターに再会できてうれしいよ」と言ってくれ、95年『サブリナ』でニューヨークで会見したときも「ジョージアは近くの小学校に通ってるんだが、大きくなったよ」と、状況報告をしてくれたのだ。なにしろ、数時間前に会ったインタビュアーですら忘れてるスターの多い中で、なんとも律義というか、まさしく誠実な人柄。会うたびに感激させられた。

 と、まぁ、こんな蓄積があったのです。となれば、フォード家の家庭円満は永遠に不滅だと、私が思ってしまうのも、無理はないでしょ。そして、別居ニュースにどれだけショックを受けているかも、納得でしょ。

 それにしても、あの時に取材したのは『推定無罪』。そして、別居が公表された昨年の12月に公開されていたのが『ホワット・ライズ・ビニース』。どちらもハリソン演じる主人公が、魔がさしたように浮気をしてしまい騒動が勃発するといった展開。大いなるこじつけとはわかっているけれど、別居の原因が本当にハリソンの浮気だとしたら……因縁を感じるなぁ。






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