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第1回 「ブラッド・ピットのエビアン・ボトル」
第2回 「デンゼル・ワシントンと三つの招き猫」
第3回 「ギヨーム・ドパルデューのパープル・ヘア」
第4回 「ホアキン、ラッセル、ワイルド・ナイト」
第5回 「キアちゃん、キアロスタミ」
第6回 「キアヌ・リーブスがヘタくそバンドに一生懸命な理由」

2000.08.26 UPDATE

金子裕子
text by Yuko Kaneko


第7回●「愛しのギアさま:Chapter1」

 
 ニューヨークでリチャード・ギアに会ってきた。これが7回目だ。まず、数人の外国人ジャーナリストの中に私の顔をみつけて「ああ、ユウコ、いたのか。2年ぶりかなぁ」とすかさず言ってくれた時には、じつは4年ぶりだったのだけどそんなことはお構いなしに、嬉しさでめまいがした。

 思えば、ほんと、久しぶりの会見だ。しかも、その4年の間にリチャードはシンディ・クロフォードと離婚をし、元ボンド・ガールの女優ケーリー・ローウェルと同棲を開始し、2人の間には息子が誕生した。まぁ、相手の女性が変わるのは、いつものことだし、ぜんぜん気にはしないのだが、50歳にして父親になった変化は大きい。そう、それはリチャードにとっても大きな人生のエポックだろうけれど、私にとってもかなり大きな出来事なのだ。なにしろリチャードを“愛の神”と崇めて18年(笑)。この業界に深く入り込んだのも、美形ハンターとしてスターたちを追いかけ始めたのも、リチャードあればこそ。その“愛の神”が、俗世とのしがらみともいうべき“子供”を持ってしまったのだ。となれば、熱心な信者である私も、このヘンで愛の総括をしておく必要があると思う。

 そんなわけで、今回の“特別な時間”は、“特別な人との特別な時間”ということで、少々長めになってしまうけれど、ご容赦。

 
 まず、リチャードと私のなれ初めだが、その前に初期の作品の変則的な日本公開の順番を書いておきたい。リチャードが映画界で注目を集めた77年製作の『ミスター・グッドバーを探して』は78年、『アメリカン・ジゴロ』は製作された80年、『愛と青春の旅だち』も製作された82年に公開。78年に製作の『天国の日々』は、83年の公開だ。

 で、私としては『ミスター・グッドバー〜』の時は、“ちょっと危険なイイ男”程度の認識しかなかった。それに続く『アメリカン・ジゴロ』と『愛と青春の旅だち』でも、一躍セクシー・スターの座を獲得したリチャードだけに、かなり好きになってはいたが、熱狂的なファンとまではならなかった。

 しかし『天国の日々』を見るに至って、これまでの“気になる人”が爆発して、すっかりやられてしまった。この作品は98年の『シン・レッド・ライン』で復活したテレンス・マリック監督の傑作。不況にあえぐアメリカを舞台に、労働者として農場から農場を渡り歩く若者とその恋人、そして若き荘園主の三角関係が美しい映像によって綴られる。



illustration by hiroyuki ijichi


 
 リチャードは荘園主が死期の近いことを知り恋人を妹と偽って彼に近づけ、結婚させて遺産をいただいてしまおうとする若き労働者役。その狡猾さと野心をチラつかせつつも愛に苦悩する姿がなんともいえない切なさをかもし出し、女心をワシづかみ。悲しい結末とも相まって、試写室を出た後も私は涙が止まらず、興奮状態。ばかりか、数日間はリチャードの泣きそうな顔が目に焼き付いてボーッとしっぱなしだった。

 そしてこの時、ある週刊誌の映画紹介記事を書き始めた駆け出しの私は、悔し涙にもくれたのだ。というのも、数年前に『アメリカン・ジゴロ』のプロモーションでリチャードが来日していたことを知ったからだ。“本物に会いたい、触れたい!”という思いは募り、“この仕事を続ければ、いつかチャンスは巡ってくる”と、思い詰めたのは当然だろう。

 もちろん、それからは“リチャード会いたさ”にお仕事に励みましたよ。来たる来日に備え、インタビューのページを確保するワザを習得すべく、チャンスさえあれば来日俳優や日本の俳優に会見する日々。もちろん、リチャードの旧作を見直し、『コットンクラブ』(84年)や『キング・ダビデ』(85年)といった新作も、少なくとも3回や4回は見て、準備万端怠りなし。



 そして、チャンスは3年後に。86年の『ノー・マーシイ/非情の愛』の宣伝で、遂にリチャード・ギア様、来日!

 いやー、燃えたね。なにしろ、来日するというニュースを聞いたとたんに映画配給会社に足を運び、“絶対に会わせて!”とお願いしまくり。それが聞き入れられた時から、今度は洋服探しに美容院。メイクアップ・アーティストの友人に、メイク法まで指南してもらったヒには、周囲は呆れまくりだった。でも、なんたって、3年分の思いが爆発する初の会見だもの、目一杯おしゃれしていきたいのは当然の女心でしょ?  もちろん、ファンとしてではなく、ジャーナリストとして会見することも忘れてはいない。質問も、嫌われないような内容で、しかも他の記者より印象に残るものをと腐心して、あれこれ作っては練り直し。そう、つまりは、相当に舞い上がってたって事です。

 そして、いざインタビュー・ルームへ。震える足を運ぶ私の目の前に、リチャードは立っていた。本物、しかも笑顔……。それを見ただけで、私はヘナヘナと椅子に座るのがやっとだった。(つづく)







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