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第1回 「ブラッド・ピットのエビアン・ボトル」
第2回 「デンゼル・ワシントンと三つの招き猫」
第3回 「ギヨーム・ドパルデューのパープル・ヘア」

2000.05.27 UPDATE

金子裕子
text by Yuko Kaneko


第4回●「ホアキン、ラッセル、ワイルド・ナイト」

 
 ローマに行ってきた。リドリー・スコット監督の『グラディエーター』に出演したラッセル・クロウやホアキン・フェニックスなどを取材するためだ。こう書くと、きっと“スター付きイタリア旅行なんて、いいなぁ”とお思いだろう。うん、確かに、悪くはない。しかし、お楽しみには苦しみも付いてくるのが、お仕事の常である。

 なんたって、この歳でローマまで3泊5日は強行軍だ。実年齢はバラしたくないが、徹夜しても一晩寝ればスッキリという年齢は遥か、遥か昔。留守中に締切りとなる原稿を徹夜で書き終えて、そのまま飛行機に乗って約16時間。モスクワ経由でローマのホテルに到着したのは夜の10時過ぎ。もう、最初からヘロヘロで足がもつれている。しかも、翌日午後にはロンドンから来た映画会社の本社スタッフと打ち合わせをし、引き続き『グラディエーター』の試写 となる。終了は夜の9時半。肝心のインタビューは次の日の午後から始まり、終了予定は6時。その日の午前中もインタビュー用の質問作りなどで忙しい。つまりは、到着翌日の午前中だけがフリータイムといった具合なのだ。

 
 ねっ、眩暈がしそうなスケジュールでしょ?しかし、だからといってお楽しみを放棄するような私ではないけれど。今回は貴重なフリータイムはヴァチカン博物館に投入。修復が完了したシスティーナ礼拝堂のミケランジェロのフレスコ画を堪能。『最後の審判』を見つつ、マーティン・スコセッシ監督の『救命士』のワンシーンはここから来ているのかとお勉強もして。とにかく充実の時を過した。

 しかし、もちろんそんなお楽しみは序の口だ。なにせ、自他共に認める“スター・フリークの申し子”。神様も味方だ。だって、そうじゃなければその夜の“出来事”の説明がつかない。そう、試写 が始まる前に私たちは(同業者2人)、数も5つまでしか覚えていないイタリア語とそれよりマシな英語を駆使してレストランを予約した。そして、試写 終了後に直行したのだ。



 illustration by hiroyuki ijichi


 
 ジャーン! いたんですね。ソコに。いまスクリーンで逞しいお姿にウットリしながら見ていたラッセル・クロウやホアキン・フェニックスの実物が。なんという運命! もう、いきなり奥に案内しようとするボーイさんに「ここ、ここがいいの!」と叫び、彼らの近くで仁王立ちになる私。思いどおりのポジションを確保してからは、オーダーも他人任せで熱心にスター・ウォッチングを開始。葉巻を片手にワインをガンガン飲むラッセルの豪快さに再びウットりしつつ、その隣でラッセルにすっかりなついた雰囲気で、これまたワインをガンガンのホアキンを愛でる。これを“特別 な時間”といわずして、なにといおうか!ってなワケでレストランに滞在すること4時間(もちろん、ボーイさんたちにはチップを弾んでね)。で、その途中には本場のパパラッチ数人がスターご一行にフラッシュを焚く現場も目撃して、まさに興奮の一夜。

 しかし、ここで話が終らないのが、“ミーハーの神の申し子”の所以。だって、その翌日のインタビュー・ルームでは、いきなりホアキンが近寄ってきて、「こらこら、君のこと僕知ってるもんね。昨夜はとんでもないワイルド・ナイトだっただろ(笑)」だって。私も負けてないから「そういうあなたも相当にワイルドだったと思うけど?」というと、「うん、飲みすぎちゃって、疲れた」。



 もちろん、こうして開始されたインタビューは、和やかにして実り多いもの。兄リバー・フェニックスの死の悲しみからいかにして立ち直ったかや家族の絆の強さなども素直に語ってくれた。「数年間は休業してたけど、演技以外にやりたいことがなかった。きっと演じることが心のセラピーになってるんだ」という哀愁の風情には、一発でヤラれた。しかも、交渉段階では嫌がっていた写 真撮影も、「日本用なんだね」といって快くOK。部屋を出るときには「Don't be Wild、tonight!」という言葉とウインクまで残してくれたのだから、惚れたぞ、ホアキン!

 うーん、ここで心残りがひとつ。そう、『グラディエーター』のヒロイックなお姿とワイルド・ナイトのヤンチャな素顔が相まってすっかりお気に入りになったラッセルだ。監督と2人そろってのインタビューだったせいか、妙にお行儀が良くって。心にタッチしたという実感が、どうしても得られない。“夕べのことは忘れたの?”って聞きたい感じ。個人的にはナニもなかったけど……。

 まぁ、それでもマスコミ嫌いという評判とは裏腹に役作りや俳優人生についてジョークも交えて機嫌よく語ってくれたのは嬉しいかぎり。しかも最後に「日本には2回ほど行ったことがあるんだ。また行くよ」というお言葉。ホアキン・ゲットで勢いのついた私は、“よーし、日本へ来たら今度は同じテーブルでワイルド・ナイトを過すゾ”と、新たなる野望を胸に、3泊5日の旅を終了したのだ。







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