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第1回 「ブラッド・ピットのエビアン・ボトル」
第2回 「デンゼル・ワシントンと三つの招き猫」
第3回 「ギヨーム・ドパルデューのパープル・ヘア」
第4回 「ホアキン、ラッセル、ワイルド・ナイト」
第5回 「キアちゃん、キアロスタミ」
第6回 「キアヌ・リーブスがヘタくそバンドに一生懸命な理由」
第7回 「愛しのギアさま:Chapter1」
第8回 「愛しのギアさま:Chapter2」
第9回 「世界の黒澤と梅干しの味」
第10回 「エドワード・ノートンのヘンな日本語」
第11回 「ハリソン・フォードと“特別”なティー・タイム」
第12回 「エドワード・バーンズとNY“至福”旅行」
第13回 「初の“女”! おまけのジュリア」
第14回 「待ち焦がれて、ホウ・シャオシェン…」
第15回 「ジャコ・ヴァン・ドルマル監督と共に涙したあの日」
第16回 「ヴァンサン、オスカー女優が義姉で良かったね!」
第17回 「思いおこせば10年前だね〜、キューザック!」
第18回 「やっぱ前評判は信じられない!とっても良い人(ビリー・ボブ)の乳首」
第19回 「監督は真実を語る/スキャンダル編」
第20回 「監督は真実を語る/アノ映画の裏話」
第21回 「ホントにイイ子に育ちました。映画大好き青年ディカプリオ!」
第22回 「早口な2大巨匠スコセッシ&スピルバーグ、さてお仕事の速さは…?」
第23回 「中国3人娘のビミョー(?)なカンケイ」
第24回 「ブラッド・レンフロ、涙のハグ」


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2003.10.22UPDATE

金子裕子
text by Yuko Kaneko


第25回●「恐るべし! タラちゃんのぶっ飛びマシンガン・トーク」

 
 久しぶりにクエンティン・タランティーノに会った。そう、97年の『ジャッキー・ブラウン』以来、じつに5年ぶりの最新作『キル・ビル』のプロモーションを兼ねたインタビューでだ。場所は、ロサンゼルスの高級ホテル。前日に、まだサウンドトラックも未完の、ホヤホヤのワークプリントを世界で初めて日本人ジャーナリストたちにお披露目したばかりなので、もう、テンションはあがりっぱなし。なにしろ、前日はお披露目を祝したパーティで12時過ぎまでしゃべりまくってというのに、翌日のインタビューには早々と登場し、予定時間の30分ほど前から取材開始。いやー、かつてインタビュアーを狂喜させ、しまいには辟易もさせた(失礼! だってテープ起こしが大変なんだもの)マシンガン・トークは健在です!

 
 思えば、タラちゃんと会ったのは、91年『レザボア・ドッグス』が日本で公開されることになった時だ。まだ20代で、ド新人の監督で、でも、すでにとんでもないバイオレンス映画を撮ったと話題になり、いわば“ハリウッドの寵児”との評判が芽生えたころ。

 その第一印象は……映画オタク。とにかく、ひとつの質問の答えに必ず数本の過去の作品が例にだされる。しかも、「ほら、あん時のあいつがこう言うと、相手役がこう動いてこういうじゃん。で、そん時カメラはこう撮って、スゲエ! スーパー・クール! スーパー・スーパー、クールだぜィ」といった風。正直、その例の半分以上はすっごくマニアックで、日本では公開されていないポルノ映画なんかもあって、ハナシについていけなかったし、そのあふれんばかりのエネルギーに圧倒されっぱなし。つ、疲れたぁ……。でも、当時アメリカではほとんど知られていない香港映画と日本映画についても詳しいことだけは、さすがに感心したけどね。



 illustration by hiroyuki ijichi


 
 で、2度目の会見は、たった1作でメジャーの注目を集め、デビュー作とは比べ物にならない製作費を獲得した『パルプ・フィクション』のプロモーションで来日した時。こちらとしては、あのマシンガン・トークと濃すぎるコメントを覚悟して、ほぼ2時間近い取材時間をゲット。取材前日には良く寝て、良く食べてスタミナも蓄えて取材現場に臨んだ。これ、冗談でなく、本当の話。だって、体力なけりゃ、あの毒気(笑)にあてられて、ツッコミの質問もできなくて、ヤラれっぱなしになっちゃうもんね。……まぁ、結果は、やっぱりヤラれちゃったんだけど(笑)。

 とにかく、ジョン・トラボルタ、ユマ・サーマン、ブルース・ウィリスという長年憧れまくってたスターを一堂にそろえてやりたい放題の作品を撮ったばかりのタラちゃんに怖いものなし!

 
 「ブルースの出演? あれは、ハーヴェイ・カイテルの海辺の家のバーベキュー・パーティーにいったら、ブルースがいて。んで、浜辺に呼びだされて肩組まれちゃってさ。“俺のいいたいことはわかるよな”ってこぶし握られちゃ、出さないわけにゃいかないだろ。俺としちゃ、“いつものギャラは出せない”っていうのが、精一杯だったよ、ガハハッ」

 この情景を、俳優経験もあるタラちゃんが即興で演じるんだから、もう、インタビュー・ルームは爆笑の渦。ほかにも、「ファッキン、コンピュータなんかクソくらえ! 俺は大嫌いだぜ。だいたい、俺の頭ん中がコンピュータみたいなもんで、ちょっとアイコンをクリックすれば、世界中の映画のデータがどんどん出てくるんだから。俺の頭脳はスーパー・クールだからな。ファッキン・コンピューターなんかの世話にはならないよ」といいつつ、実際にコンピュータになった気分で、“カチャッ”と口でクリックするごとに映画の細部をまくしたてる(文字で書くと、バカみたい?)。

 とにかく、振り返ってみると、やっぱりそのオタクぶりと、ファッキンとスーパー・クールしか思い出せないもんなぁ、不覚にも。

 
 さて、そういうプロセスがあっての、3度目の会見。いまや、ハリウッド待望の作品『キル・ビル』を完成し、しかも、大手スタジオのミラマックスが彼のやりたい放題を認めて、異例の前後編公開も了解したという大物ぶり。インタビュー場所だって、初回は映画会社の会議室だったのに、いまや高級ホテル、フォーシーズンでっせ。

「最初は小さな、小さな復讐劇にするつもりだったんだぜ。でも、いつのまにかさぁ」といいつつ小僧のようにニヤリと笑うタラちゃん。暗に、最初から「長くなっちゃっても、なんとかなるさ」、もしくは「1本で終わらないほど長くて濃い内容にして、結果、前後編にしちゃおうぜ」といった目論見が透けてみえるような笑顔。「ち、違うって! 最初は1本で完結しようとしたんだって」と反論しても、あの口元と目が笑ってるもんなぁ。

 
 もちろん、『キル・ビル』本体の質問の答えも、相変わらず、多くの映画の例を引き、絶好調。ルーシー・リュー演じる女ヤクザは『修羅雪姫』の梶芽衣子だとか、刀鍛冶を演じたソニー千葉こと千葉真一への思いとか、ユマ・サーマンが大立ち回りを披露する青葉屋のシーンの黄色い衣装はブルース・リーへのオマージュだとか、枚挙にいとまなし。おかしかったのは、ユマが60人以上の黒スーツのヤクザと対決するシーンについて、私が『マトリックス リローデッド』の100人のエージェント・スミスのようだといったときだ。

「エクス・キューズミ! 忘れてもらっちゃ困るよ。ハッキリいってやるが、ブラック・スーツにサングラスは『レザボア・ドッグス』で俺が流行らせた、専売特許。『メン・イン・ブラック』も『マトリックス』も、クソくらえ! 俺がパイオニアだ(笑)」

 
 もう、ムキになっちゃって、やんちゃ坊主丸出しなのさ。ま、そんな風にワキワキのインタビューだったが、前編の最後に“深作欣二に捧ぐ”というクレジットについて質問が及んだときには、さすがのタラちゃんも神妙。『バトル・ロワイアル』のすごさをひとしきり語り、新作に出演した栗山千明を紹介されたときの摸様を話し、うっすらとまぶたを濡らしていた。この姿、亡き深作監督への深い敬愛が真実であることがビンビン伝わって、こちらもほろりとさせられてしまった。

 
 うーん、ほぼ10年ぶりに再会したタラちゃんだったが、すでに40歳になろうというのに、体型はデップリと変化しても、やっぱり超のつく映画オタクのまんま。やんちゃ坊主なキャラが、ホント、好感だ。そうそう、正直、出会った最初の頃は、オタクの原動力だけで映画を作り続けられるのだろうか? といった疑問も抱いていたし、ビギナーズ・ラックで終わるのでは? という危惧もあったけど、ここまで貫けば、立派なもの。とにかく長年のオタク心が強烈にさく裂した『キル・ビル』前編を見たとき、ワン・アンド・オンリーな監督だと認めざるおえなかったものなぁ。まぁ、『キル・ビル』後編がどんなふうになるかが、今後の真価の分かれ道かもしれないけど……、ハリウッドの映画史に名前は刻まれる監督であることは間違いない。


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