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プロローグ:もうひとつの『もののけ姫』
第1回 ゴダールの『映画史』
第2回 アンナ・カリーナとともに
第3回 映画と観客
第4回 美少女チャン・ツィイーに捧げた愛の詩
第5回 アニメーションの冒険
第6回 映画の宝物
第7回 羽仁進とジャン・ルノワール
第8回 誰が映画を殺すのか
第9回 映画の後で
第10回 映画戦線異状なし?
第11回 「映画」から遠く離れて
第12回 年末年始は映画三昧
第13回 いくつかの映画的「快挙」
第14回 『犬猫』『ヒッチコック・コレクション』『阪妻映画祭』など
第15回 ヌーヴェル・ヴァーグ再考
第16回 フランソワ・トリュフォー -わが人生の映画たち-
第17回 チェコアニメの夏
第18回 生きた、愛した、歌った。
第19回 『十七歳』を忘れないために
第20回 日常の映画的冒険
第21回 映画的日々雑録
第22回 『チェコ怪奇骨董幻想箱』など





『抜き射ち二挺拳銃』
ジュネス企画
¥5040(税込)
発売中
 
『抜き射ち二挺拳銃』
 『ウィンチェスター銃'73』でジェームズ・スチュアートの悪役の弟を演じたスティーヴン・マクナリーと『夜の道』でジェームズ・スチュアートの悪役の弟を演じたオーディ・マーフィーが共演するB級西部劇、『抜き射ち二挺拳銃』(ドン・シーゲル監督、1952)も出た(ジュネス企画)。「B級」の作品では、スティーヴン・マクナリーもオーディ・マーフィーも、もちろん、悪役ではなく、主役でありヒーローである。ヒロインもフェイス・ドマークというまったく記憶にない(と言っては失礼ながら)しがない女優だが、悪女の役である。

 オーディ・マーフィーは砂金掘りの父親を殺されて犯人をさがしているのだが、その犯人ユージン・イグレシアスの情婦がフェイス・ドマークで、彼女に首ったけの早射ちで知られる保安官スティーヴン・マクナリーが右手を怪我して指がきかなくなったことを情婦のフェイス・ドマークから聞いた悪漢イグレシアスが保安官に決闘を申し込み、あわやというときにこれまた早射ちのオーディ・マーフィーが代わって悪漢をやっつけるところが見せ場になる。「B級」のしがなさにあふれた西部劇だが、それにしても、とにかくさっさと筋を運ぶテンポの速さはおどろくばかりである!

 久しぶりにドン・シーゲル監督ならではのB級活劇タッチをビデオ(VHS)で堪能したが、より高画質のDVD版もあるのかもしれない。というのも、ジュネス企画では、このところ、映画史の古典と言っていい名作、佳作、珍品、日本未公開作などの数々をDVDで出しているからである。1930年代から50年代に至るハリッドの――撮影所時代の――すばらしい作品ばかりだ。

 文芸大作、社会劇などの巨匠ウィリアム・ワイラー監督の『偽りの花園』(1941)と『我等の生涯の最良の年』(1946)、フランク・キャプラ監督の抱腹絶倒ブラック・コメディー『毒薬と老嬢』(1944)、ルビッチ・タッチという表現まで生まれた名匠エルンスト・ルビッチ監督のシャレたセンスの艶笑喜劇『極楽特急』(1932)。

 ジーン・ティアニー主演の『幽霊と未亡人』(ジョゼフ・L・マンキーウィッツ監督、1949)、ラナ・ターナー主演の『郵便配達は二度ベルを鳴らす』(テイ・ガーネット監督、1946)と『悪人と美女』(ヴィンセント・ミネリ監督、1952)、リタ・ヘイワース主演の『カルメン』(チャールズ・ヴィダー監督、カラー、1952)、ジーン・ピータース主演の『拾った女』(サミュエル・フラー監督、1953)といったかつてのハリウッドの美女たち(男たちの運命をみちびくファム・ファタール=運命の女を演じている)を見るだけでもたのしい作品群もあれば、伝説の歌姫ヘレン・モーガン主演の『喝采』(ルーベン・マムーリアン監督、1929)、ジャネット・マグドナルド主演の『今晩は愛して頂戴ナ』(ルーベン・マムーリーアン監督、1932)から、本物のギャング出身の凄味のある色男ジョージ・ラフトと真のグラマー(知的な魅力の意味だった)女優といわれた美女キャロル・ロンバードが踊る『ボレロ』(ウェズリー・ラッグルス監督、1934)、不世出のダンサー、フレッド・アステアが至芸を見せる『踊るニューヨーク』(ノーマン・タウログ監督、1940)と『スイング・ホテル』(マーク・サンドリッチ監督、1942)をへて、ジュディ・ガーランド主演の日本未公開作品『ハーヴェイ・ガールズ』(ジョージ・シドニー監督、カラー、1946)に至る異色のミュージカル映画群、暗黒の帝王アル・カポネをモデルにしたギャング映画の名作、エドワード・G・ロビンソン主演の『犯罪王リコ』(マーヴィン・ルロイ監督、1930)とジェームズ・キャグニー主演の『民衆の敵』(ウィリアム・A・ウェルマン監督、1931)、戦前は『怪物団』の題名で公開された怪奇グロテスク映画(と双葉十三郎氏もその奇形人間たちの「邪劇」ぶりにへきえきさせられたという)トッド・ブラウニング監督の『フリークス』(1932)もあれば、ロマンチックな探偵映画『影なき男』(W・S・ヴァン・ダイク監督、1934)や終戦直後に大流行したセミ・ドキュメンタリーの名作『裸の町』(ジュールス・ダッシン監督、1948)や胸のすくチャンバラ活劇『スカラムーシュ(血闘)』(ジョージ・シドニー監督、カラー、1952)、ゲーリー・クーパーがルー・ゲーリックを演じる野球映画『打撃王』(サム・ウッド監督、1949)などもある。

 ハリウッド映画ばかりでなく、フランス映画も出ている。ジャン・ルノワール監督の『どん底』(1936)、ルネ・クレマン監督の『鉄路の闘い』(1946)、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督『犯罪河岸』(1947)といった名作だ。さらに、フランスのルネ・クレール監督がハリウッドで撮ったアガサ・クリスティもの『そして誰もいなくなった』(1945)も!!

 『ボレロ』と『スカラムーシュ』(何度も映画化されているのでその原作であるサバティニの同名小説)は小説家の川口松太郎の見事な翻案・脚色によって日本映画の2本の名作にもなったことはよく知られている。成瀬巳喜男監督の『鶴八鶴次郎』(1938)と衣笠貞之助監督の『蛇姫様』(1940)である。

 まだまだ、これからも目をみはる作品が出てくることだろう。




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