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「世界最高峰の“映画復元師”」というヨハン・プライス氏の講演「ナイトレート・フィルム復元の原理と実際」を東京国立近代美術館フィルムセンター小ホールに――入場無料だったので――聴講に行く(2月20日)。満席である。
「講演会では、映画復元の過程で生じるさまざまな問題点やエピソードを、豊富なサンプル映像とともに語っていただきます。現像所や映画会社の方、研究者など専門家の方はもちろん、一般の映画愛好者の方にも十分お楽しみいただける内容です」というフィルムセンターのチラシの文面に誘われて、早めに列んでいい席につくことができたものの、「単なる映画ファンも来ておられるようですが、ちょっとむずかしすぎるかと思われます」とセンターのお役人が薄ら笑いを浮かべて挨拶。
なるほど、むずかしい。映画復元の方法とその技術についてのきわめて専門的な講演というよりも、講座、授業であった。化学の知識すらない私にはちんぷんかんぷんだ。復元作品の上映を期待して行ったのだが、ほんの付け足し程度の「サンプル映像」で、それもすでに見たことのある断片集だった。
「デジタル復元が脚光を浴びる昨今、フィルムによるフィルム復元の限界にあえて挑む」ヨハン・プライス氏とのことだが、『スター・ウォーズ』シリーズの最新作『エピソード2/クローンの攻撃』(2002)のジョージ・ルーカス監督のこんな宣言を伝えた昨年のカンヌ映画祭報告(深津純子、「朝日新聞」)の記事を思いださずにはいられなかった。ジョージ・ルーカスいわく――
すべての芸術はテクノロジーだ。美術の世界の主流がフレスコ画から油絵に移り、より多様な表現が可能になったように、映画もケミカル(フィルム)からデジタルへ移るだろう。
ただ映画を見てたのしむだけのファンは、ケミカルとかデジタルとか、いずれにしてもそんなことにはまったく無知で罪深い存在ということになるのか。
だが、ケミカルだろうとデジタルだろうと、映画の復元というのはなにやら人間の脳死の問題に似てないこともない。ほっといてくれ、自然死なのだからこのまま死なせてくれ、とひそかに望んでいる映画たちもいるのではないか? 神の思し召しということもあるのではないか? それに、ときには完全版あるいはそれ以上の版が、ディレクター(監督)がもはやこの世に存在しないのでチェックもできず、とくにメモやシナリオも残っていないことすらあるというのに(いや、たとえ残っていたとしても!)、「ディレクターズ・カット」としてよみがえらせるというのも奇怪である。神をもおそれぬ映画復元師といったところか。
しかし、神は万能でも、復元にはいたずらに金がかかりすぎるというのが実情らしい。 |
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