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試写室で見た『真実のマレーネ・ディートリッヒ』(J・デイヴィッド・ライヴァ監督、2001)のすばらしさに圧倒される。配給はトライエムで、劇場公開は11月になるとのことだが、ぜひまた見たいと思う。
監督のJ・ディヴィッド・ライヴァはマレーネ・ディートリッヒの孫で、母親(マレーネ・ディートリッヒのひとり娘)マリア・ライヴァが書いた伝記「マレーネ」(邦訳、新潮社)をもとに、じつに豊富な映像ドキュメントを駆使して、偉大な映画女優として歌手として20世紀を生きぬいた女の一代記をこのうえなく感動的に描く。母親の書いた伝記の暴露的な下品さとはうって変わって、大スターであった祖母マレーネ・ディートリッヒについてのすべてをリアルに生々しくさらけだしながらも、気高く節度のある映画だ。
ハリウッド時代のジャン・ギャバンとディートリッヒの同棲生活をフィルム(それもカラー)で見られるとは思わなかった。プール付のその別荘の家主がグレタ・ガルボで、ギャバンとディートリッヒの愛の生活をいつものぞき見していたと暴露するのは、映画のなかの証言者の一人として出演するマリア・ライヴァだ。
ディートリッヒの娘、マリアは陽気でおしゃべりなおばさんだ。戦時中、ハリウッドの女優たちが出征する兵士たちを励ますために無料で接待したハリウッド・カンティーンで、心遣いのこまかいマレーネ・ディートリッヒが接客よりも台所の皿洗いにまわり、そのあとを追ってオーストリア出身の美人女優へディ・ラマールも台所に入りこむと、見るに見かねて(というよりも、めざとく見つけて)、にくにくしげに「あのドイツ女どもをひっぱりだして!」とどなったのがベティ・デイヴィスだったといった話など、抱腹絶倒である。
反戦歌「リリー・マルレーン」を不滅の名曲にしたマレーネ・ディートリッヒの歌いっぷりに心うたれながら、ハンフリー・ジェニングス監督のドキュメンタリー『リリー・マルレーンの真実の物語』(1944)を思いださずにはいられなかった。
神話的な女優および歌手としてのマレーネ・ディートリッヒの生涯を綴った記録映画としては、すでにマクシミリアン・シェル監督の『マレーネ』(1986)があったが、なぜかあまり印象がない。マレーネ・ディートリッヒの魅力が強烈に迫るところがなかったと思う。
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『モンタン、パリに抱かれた男』 |
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『モンタン、パリに抱かれた男』
発売:紀伊國屋書店
¥8000(税別) |
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『真実のマレーネ・ディートリッヒ』は、生きて愛して歌ったマレーネ・ディートリッヒの魅力でいっぱいの映画だ。マレーネ・ディートリッヒ以上の迫力で、20世紀を生きぬき、つい先ごろ(9月4日)101歳で亡くなったレニ・リーフェンシュタールの自伝(「回想」、椛島則子訳、文藝春秋)と彼女についてのドキュメンタリー『レニ』(レイ・ミューラー監督、1993)を想起させもするが、それ以上に、私は、イタリア生まれのフランスのシャンソン歌手で映画俳優のイヴ・モンタンが自らのナレーションで語るドキュメンタリー『モンタン、パリに抱かれた男』(ジャン・ラビブ監督、1994)を思いださずにはいられなかった。どうしてもまた見たくなって、ビデオを取り寄せ(紀伊國屋書店よりVHSで発売されている)、吸い寄せられるように見て、聴いて、堪能した。劇映画などふっとんでしまうような人間ドキュメントのおもしろさだ。宣伝用チラシに「……数々の歌や映画のシーンに、貴重なプライベート映像をまじえ、その素顔に迫る。21世紀に伝えたい偉大な歌手・俳優であるだけでなく、恋に生き、政治に生きた魅力溢れる男であった」とあるが、「男」を「女」に替えれば、そっくりそのまま『真実のマレーネ・ディートリッヒ』の核心を伝える惹句になるだろう。
ドキュメンタリーを「現実の創造的処理」と定義したのはドキュメンタリーという言葉を初めて映画に使ったジョン・グリアスンだが、『真実のマレーネ・ディートリッヒ』や『モンタン、パリに抱かれた男』はまさに「現実の創造的処理」という定義にふさわしく、フィクションをしのぐおもしろさだ。
テーマ主義のドキュメンタリーと人間主義のドキュメンタリーがあるとすれば、『真実のマレーネ・ディートリッヒ』も『モンタン、パリに抱かれた男』も、人間主義のドキュメンタリーの典型であり、人間主義のドキュメンタリーならではのおもしろさにあふれかえっているのである。『レニ』はインタビュアーである監督のレイ・ミューラーのテーマ主義とヒロインのレニ・リーフェンシュタールの人間的魅力が拮抗しつつ奇妙に渾然一体となっている作品だった。
マレーネ・ディートリッヒやイヴ・モンタンの魅惑の歌声に酔いつつ、その人間的魅力に圧倒される。マーティン・スコセッシ監督の『ラスト・ワルツ』(1978)も、ザ・バンドの演奏する曲の美しさとともに、そのメンバーの人間的魅力によって忘れがたいドキュメンタリーだった。
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