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| 『突然炎のごとく』 |
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| 『突然炎のごとく』 オリジナル版ポスター |
(10)のニコラス・レイは、トリュフォーの偏愛的映画作家です。とくに『大砂塵』(1954)という西部劇は、ふつうの西部劇ファンには耐えがたいほど恥ずかしい、異様な、西部劇らしからぬ西部劇なのですが、西部劇ぎらいのトリュフォーにとっては唯一の見るに耐える、いや、それどころか、「心から愛する」西部劇なのだそうです。『暗くなるまでこの恋を』のなかで、ジャン=ポール・ベルモンドとカトリーヌ・ドヌーヴが逃避行の最中に見る映画が『大砂塵』です。カトリーヌ・ドヌーヴは心から感動し、ベルモンドは「そう、繊細で情感豊かな美しい恋愛映画だ」と言います。トリュフォーも『大砂塵』は「西部劇をさかさまにした物語」なのであり、「女のジョーン・クロフォードが拳銃をふりまわして男のようにふるまい、男のスターリング・ヘイドンのほうがデリケートでセンチメンタルで女のようにふるまう」ところが現代的で感動的なのだと語っています。『大砂塵』は「詩的な西部劇」なのであり、「ジャン・コクトーを想起させる唯一の西部劇、感覚と情動の西部劇」なのだとすら言うのです。「人生の苦渋や悲しみやノスタルジーにあふれ」、せりふも「リアルな会話でなく、古典悲劇のような強い情熱と感受性にみちた諧調のある長ぜりふ」で、「その点でもジャン・コクトーの『双頭の鷲』(1947)などを想起させるし、「見事に様式化された美しい格調ある特殊な西部劇」なのだと言うのです。『暗くなるまでこの恋を』では『大砂塵』についての話をするだけですが、『突然炎のごとく』には『大砂塵』をそっくりそのまま引用したシーンがあります。ジャンヌ・モローが古いラブレターを焼くと、ネグリジェに火がついてしまい、あわてて、ジュール(アンリ・セール)に消してもらうシーンですが、『大砂塵』ではジョーン・クロフォードの純白のドレスに火がついて、「ジョニー!」と叫ぶと、ジョニー・ギター役のスターリング・ヘイドンがあわてて火を消すシーン。なんとも倒錯的なエロチシズムです。『暗くなるまでこの恋を』から、『大砂塵』と『突然炎のごとく』を合わせて見てみましょう。『大砂塵』の原題は『ジョニー・ギター(Johnny
Guitar)』で、ペギー・リーが歌った主題歌(こちらは「ジャニー・ギター」で知られています)が映画以上に大ヒットしました。ラストシーンでこの美しい主題歌が流れてくるところもついでに見てみましょう。 |
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