トリュフォーの映画的記憶を探る19章
(1) エッフェル塔
(2) 813
(3) リュミエール
(4) 「カイエ・デュ・シネマ」とヌーヴェル・ヴァーグ
(5) ロベルト・ロッセリーニとネオレアリズモ
(6) ジャン・コクトー
(7) ジャン・ヴィゴ
(8) ドタバタ喜劇(ローレル/ハーディ)
(9) マックス・オフュルス
(10) ニコラス・レイ
(11) チャップリン
(12) ハワード・ホークス
(13) ヒッチコック
(14) フリッツ・ラング
(15) ジャック・タチ
(16) ジャン・ルノワール
(17) 映画への愛
(18) アンリ・ラングロワとシネマテーク・フランセーズ
(19) アンドレ・バザン
<< 第16回TOPへ







『隣の女』
 (9)のマックス・オフュルスは、トリュフォーの映画にいろいろな形で影響を与えていますが、とくに『ピアニストを撃て』のニコル・ベルジェの自殺のシーンはオフュルスの『快楽』(1952)の第3話のシモーヌ・シモンの自殺のシーンのほとんど再現、引用と言っていいと思います。つづけて見てみましょう。『快楽』はモーパッサンの3篇の短篇小説の映画化ですから、第3話(「モデル」)のシモーヌ・シモンの飛び降り自殺も原作にあるものと思われますが、トリュフォーの『隣の女』(1981)に出てくる老婦人がむかし絶望して飛び降り自殺を図って脚を折り、不自由な身になったという思い出話をするところは、客席の奥のほうからご質問された方の推測どおり、『快楽』のマックス・オフュルスにはるかにトリュフォーなりの敬意を表した言及なのかもしれません。トリュフォー自身は、あのステッキをついて歩く老婦人にジャン・ルノワールのイメージを重ねていたかもしれないと語っていましたが……。





「スロウトレイン」に掲載の記事・写真・カット等の無断転載を禁じます。© Works m bros.