トリュフォーの映画的記憶を探る19章
(1) エッフェル塔
(2) 813
(3) リュミエール
(4) 「カイエ・デュ・シネマ」とヌーヴェル・ヴァーグ
(5) ロベルト・ロッセリーニとネオレアリズモ
(6) ジャン・コクトー
(7) ジャン・ヴィゴ
(8) ドタバタ喜劇(ローレル/ハーディ)
(9) マックス・オフュルス
(10) ニコラス・レイ
(11) チャップリン
(12) ハワード・ホークス
(13) ヒッチコック
(14) フリッツ・ラング
(15) ジャック・タチ
(16) ジャン・ルノワール
(17) 映画への愛
(18) アンリ・ラングロワとシネマテーク・フランセーズ
(19) アンドレ・バザン
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 (7)のジャン・ヴィゴは、映画を「天職」として選んだ世界最初の映画作家としてトリュフォーがおそらく最も崇拝していた監督です。『大人は判ってくれない』には、ジャン・ヴィゴの『新学期・操行ゼロ』(1933)の学童たちの散歩シーンがそっくりそのまま再現、引用されています。つづけて見てみましょう。『新学期・操行ゼロ』の自由放任主義の先生の役を演じているジャン・ダステは、ジャン・ヴィゴの長篇映画『アタラント号』(1935)の若い船長の役も演じていますが、この俳優をトリュフォーが『野性の少年』(1970)や『恋愛日記』(1977)にも使っていることは周知のとおりです。また、『アメリカの夜』(1973)ではロケ地に向かう撮影隊の車がニースのジャン・ヴィゴ街を通っていきます。ここもちょっと見てみましょう。





『ピアニストを撃て』
 (8)ドタバタ喜劇、とくにローレル/ハーディ(日本では極楽コンビとよばれました)のスラップスティック・コメディーはサイレント末期からトーキー時代につづくもので、ゴダールもトリュフォーも、このチビではにかみ屋のスタン・ローレルとデブの大男で気むずかし屋のオリヴァー・ハーディの名コンビが大好きだったらしく、『勝手にしやがれ』では2人組の刑事、『ピアニストを撃て』では2人組のギャング(どちらにもハゲ頭のダニエル・ブーランジェというシナリオライターが出ています)をローレル/ハーディのコンビに見立てています。ローレル/ハーディのいくつかのシーンとくらべて見てみるとよくわかります。トリュフォーの『突然炎のごとく』の冒頭、タイトル・バックでドタバタ調にふざけ合うジュールとジムのコンビもローレル/ハーディを想起させます。ゴダールの『ウィークエンド』(1967)の交通渋滞のハイウェイのシーンはローレル/ハーディの初期の傑作『極楽交通渋滞』(ジェームズ・パゴット監督、1928)のずばりリメークです。これらもつづけて見てみましょう。

 トリュフォーの『夜霧の恋人たち』にはローレル/ハーディのお面をそれぞれつけた小さな双子の兄弟が出てきたり、『家庭』(1970)には夫婦のベッドでジャン=ピエール・レオーがクロード・ジャドの胸をのぞきこんで、ふたつの乳房の大きさが違う、「まるでローレル/ハーディだ」などと冗談を言います。ふたつのシーンをつづけて見てみましょう。

 おふざけの好きなトリュフォーは、『ピアニストを撃て』では、即興的ジャズ奏法のホンキートンク・ピアノの軽やかなメロディーにのせて、さかんにダジャレ、冗談を飛ばします。2人組のギャングが車のなかでホラを吹き、「うそだろ」と子供に言われて、「うそじゃねぇ。おふくろの命にかけても!」と言うと、そのとたんに、おふくろらしい老婆が卒倒するカットが一瞬入る爆笑のギャグがあります。ここも見てみたいと思います。





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