トリュフォーの映画的記憶を探る19章
(1) エッフェル塔
(2) 813
(3) リュミエール
(4) 「カイエ・デュ・シネマ」とヌーヴェル・ヴァーグ
(5) ロベルト・ロッセリーニとネオレアリズモ
(6) ジャン・コクトー
(7) ジャン・ヴィゴ
(8) ドタバタ喜劇(ローレル/ハーディ)
(9) マックス・オフュルス
(10) ニコラス・レイ
(11) チャップリン
(12) ハワード・ホークス
(13) ヒッチコック
(14) フリッツ・ラング
(15) ジャック・タチ
(16) ジャン・ルノワール
(17) 映画への愛
(18) アンリ・ラングロワとシネマテーク・フランセーズ
(19) アンドレ・バザン
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 (2)の813という数字は、「わが人生の映画たち」からはちょっと外れるんですが、トリュフォーの映画にいつもほとんどフェティッシュなギャグのように出てくる数字なので、これを口実に映画のいくつかのシーンを見るのもたのしいかなと思って、例外的に小さな項目を立ててみました。「813」はトリュフォーが愛読したモーリス・ルブランの小説「アルセーヌ・ルパン(フランスふうの発音ではリュパンですが)」シリーズの1冊の題名です。

『日曜日が待ち遠しい!』
 『柔らかい肌』(1964)では、ヒロインのスチュワーデス役のフランソワーズ・ドルレアックがリスボンで泊まるホテルのルーム・ナンバーが813、『華氏451』(1966)ではオスカー・ウルナーとジュリー・クリスティの夫婦が住んでいる家の住所の番号が813です。『暗くなるまでこの恋を』(1968)ではジャン=ポール・ベルモンドが運転する車に乗ったカトリーヌ・ドヌーヴがハイウェイの標識を見て、「パリまで813キロね!」と言います。『私のように美しい娘』(1972)ではフィリップ・レオタールの運転する車に乗ったベルナデット・ラフォンが「パリへ、パリヘ、パリヘ!」と叫ぶと、「パリまで813キロ」と記された標識が見えます。『終電車』ではナチ占領下のパリの劇場の地下にカトリーヌ・ドヌーヴがかくまっていたユダヤ人の夫(ハインツ・ベンネント)が、やっとパリ解放の日に地上に出てくると、「813日の地下生活をへて…」というナレーションが入ります。トリュフオーの遺作になった『日曜日が待ち遠しい!』でもヒロインのファニー・アルダンがニースのホテルの813号室に泊まります。813はトリュフォーのこだわりの数字だったんですね。生涯に1度だけ、馬券を買ったときも、馬番8と1と3をからませた連勝複式に賭けたそうです(結果は見事にすってしまったとのことですが!)。





 (3)のリュミエールは、世界最初の映画、スクリーンに上映された最初の映画を撮ったルイ・リュミエールです。オーギュストとルイのリュミエール兄弟がシネマトグラフを発明し、兄のオーギュストは機械や技術の開発のほうに専念、弟のルイが撮影をして、そのルイ・リュミエールが撮った有名な『庭師』(1885)――『水を撒かれた水撒く人』などのタイトルでもよく知られた作品です――が、トリュフォーの短篇処女作『あこがれ』(1957)のなかに、いわば映画のはじまり、映画の原点への挨拶のように引用されます。では、リュミエールの『庭師』とそれがそっくり再現、引用されているトリュフォーの『あこがれ』のテニスコートのシーンを見てみましょう。フィルムによる再現、引き写しですね。もちろん、これも演出されたものですが、心をこめた目くばせ、オマージュと言ったらいいか。好きなものをこんなふうにいろいろと「引用」することがヌーヴェル・ヴァーグの方法のひとつでもあることはジャン=リュック・ゴダールの映画などを見てもよくわかりますね。ゴダールも『カラビニエ』(1963)のなかでリュミエールの『列車の到着』(1897)と『赤ん坊の食事』(1895)を再現、引用してみせます。『カラビニエ』の兄弟、ユリシーズとミケランジェロの弟のほう、ミケランジェロ(アルベール・ジュロス)が生まれて初めて映画を見に行くシーンですね。列車がスクリーンから客席に向かってくるので脅えたという伝説をパロディーにしています。では、リュミエールのオリジナルと『カラビニエ』にパロディーとして引用されたシーンをつづけて見てみましょう。




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