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日本映画史上最大のヒット作になった『千と千尋の神隠し』の勢いに便乗した形で、メルヘン、ファンタジーのブームをさらにあおる『ハリー・ポッターと賢者の石』(クリス・コロンバス監督、2001)が日本全国の映画館の3分の1を独占して拡大ロードショーをつづけ(『ロード・オブ・ザ・リング』がそれをしのぐ勢いで公開中だ)、残りの3分の2の映画館をあと何百本かの映画が分け合っているという異様な映画興行の現状らしい。
作品の出来についてはともかく、ハリー・ポッター役のダニエル・ラドクリフという、じつに感じのいい少年には少なくとも文句がない感じ。聡明で多感で純真な少年のイメージがとてもいい。たぶん誰からも愛される稀有な子役と言っていいだろう。この少年こそハリー・ポッターだ!――とクリス・コロンバス監督が思わず叫んだという、ダニエル・ラドクリフ少年の出るイギリスのテレビ映画『デビッド・コパーフィールド』(サイモン・カーティス監督、1999)をDVDで見る。じつはダニエル・ラドクリフの子役ぶりをちょっと見るぐらいのつもりだったのだが、ボブ・ホスキンス、マギー・スミスといったベテランの名優たちが脇を固めてドラマがしっかりしているうえに、なにしろ原作の物語のおもしろさにひきずられて、最後まで見入ってしまった。
「小説の大職人」と中野好夫(英文学者でありディケンズの翻訳者でもある)もよんでいるサマセット・モームが「世界の10大小説」の1冊に選んでいるディケンズの同名の小説が原作である。一人称で書かれた自伝的作品として知られるが、おもしろいこと、このうえない。ディケンズの小説は、「二都物語」にしても「大いなる遺産」にしても、「オリーヴァー・トウィスト」にしても、読みだしたらやめられないおもしろさだ。
『デビッド・コパーフィールド』は孤児デビッドが数々の悲惨な体験をへて、苦難をのりこえ、自らの運命を切りひらいていく人生行路を描く物語なのだが、デビッドが孤児になるまでの少年時代、つまりダニエル・ラドクリフが演じるデビッドが美しいけれども男にだまされる愚かな母親の再婚から残酷な義父に鞭打たれて(鞭は鞭、「愛の鞭」などありえないことをディケンズは教えてくれるのだ)、「家にいる場所もない」ことを悟らされ、それでも世間には捨てる神あれば拾う神ありのたとえよろしく、心のかよい合う出会いもあって人間らしく成長していくところまでが、圧倒的にすばらしい。かつての愛らしい名子役、といっても、戦前のジャッキー・クーガン(チャールズ・チャップリン監督『キッド』、1921)やジャッキー・クーパー(キング・ヴィダー監督『チャンプ』、1931)のような達者な子役スターではなく、『子鹿物語』(クラレンス・ブラウン監督、1947)のクロード・ジャーマン・ジュニアや『シェーン』(ジョージ・スティーヴンス監督、1953)のブランドン・デ・ワイルドや『小さな恋のメロディ』(ワリス・フセイン監督、1970)のマーク・レスターや『チャンプ』(フランコ・ゼッフィレーリ監督、1979)のリッキー・シュローダーといった少年のイメージがよみがえる。
『デビッド・コパーフィールド』
監督/サイモン・カーティス
原作者/チャールズ・ディケンズ
1999年イギリス映画
3時間
¥5800(税別)
発売:アイ・ヴィー・シー |
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