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プロローグ:もうひとつの『もののけ姫』
第1回 ゴダールの『映画史』
第2回 アンナ・カリーナとともに
第3回 映画と観客
第4回 美少女チャン・ツィイーに捧げた愛の詩
第5回 アニメーションの冒険
第6回 映画の宝物
第7回 羽仁進とジャン・ルノワール
第8回 誰が映画を殺すのか
第9回 映画の後で
第10回 映画戦線異状なし?
第11回 「映画」から遠く離れて







東京国立近代美術館フィルムセンターで開催中の「イタリア映画大回顧」に ―― もうこんなすばらしいチャンスに出会えるかどうかわからないので ――連日通いつめていることもあって、といっても、じつは4回も当日券の売り切れで無駄足を踏み、無駄な時間とエネルギーを消耗することこのうえなく、原稿の締切(というか、約束)の日がとっくにすぎてしまったのに、未だにまったく仕事にとりかかることができずにいる。

DVDによる魅力的なタイトルと魅力的な映画の本の数々が次々にとびこんできて、ぜいたくなうれしい悲鳴をあげながら手つかずにいるので、今回は、栗尾編集長には本当に申し訳なく心苦しいのだが、年末進行とやらで急がされている他の原稿を先にかたづけさせていただくことにして、正月休みにじっくりとこれらのDVDを見て、これらの本を読んで、次回から私なりに思いを綴ってみたいと思う。今回は序論のみ――。




 DVDのなかには、すでに劇場公開のときにちょっとふれた宮崎駿監督のアニメ『もののけ姫』(とくにその見事な英語吹替え版や宮崎監督のすばらしいインタビューが収録されたドキュメンタリー『「もののけ姫」in USA』をふくむ)や、ラッセ・ハルストレム監督の愛のメルヘンとでも言いたいような『ショコラ』(DVDのパッケージもショコラつまりチョコレートのケースの洒落たデザインになっていてうれしい)や、ピリッとひきしまった演出で息もつかせぬアメリカ映画ならではの小味なサスペンス・ドラマ『ザ・コンテンダー』(ロッド・ルーリー監督)や、まるで成瀬巳喜男の映画を見るような、あるいは最も良質のフランス映画を見るような(といった短絡的な比喩には問題があるとしても、とりあえず心からの讃辞としてそんなふうに言ってみたくなる)ウォン・カーウァイ監督の『花様年華 IN THE MOOD FOR LOVE』などもある。さらに、その映像にもその芸術哲学にも正直のところ私の視覚と頭脳ではとてもついていけなかった『ゴダールの映画史』なども!


『花様年華 IN THE MOOD FOR LOVE』
 『花様年華 IN THE MOOD FOR LOVE』は、映画の内容を簡潔に要約したこんな素敵な字幕とともにはじまる ―― 「女は顔を伏せ/近づく機会を男に与えるが/男には勇気がなく/女は去る」。たんたんとして、さりげなく、静かで、美しい映画だ。朝日新聞の「回顧2001」のアンケート「私の3点」には宮崎駿監督のアニメ『千と千尋の神隠し』、フランス映画『エスター・カーン めざめの時』(アルノー・デプレシャン監督)とともに、『花様年華』を選んだ。できたら『ザ・コンテンダー』も『ショコラ』もつづけて入れたかったところだ。
というようなわけで、以下に、とりあえず、まずDVDのタイトルのみ紹介させていただくと、順不同で ――

(1)『背徳の性書 ザ・ポルノグラフィ』『背徳の性書 ザ・ポルノグラフィ2』
(2)『もののけ姫』『「もののけ姫」はこうして生まれた。』
(3)『ゴダールの映画史』
(4)『ショコラ』
(5)『ザ・コンテンダー』
(6)『花様年華 IN THE MOOD FOR LOVE』
(7)
オードリー・ヘプバーン名作選
  『麗しのサブリナ』『パリの恋人』『ティファニーで朝食を』
(8)『ホラー映画100年史』


 と列挙してはみたものの、まだまだあって(まさに、DVD時代来る!という感じだ)、まずは(1)についてのみ、以下に、DVD時代の映画鑑賞を試みると――。

 『背徳の性書 ザ・ポルノグラフィ』シリーズは、そのいかがわしく妖しく魅力的なタイトルにも誘われたが、何よりも、ホアン・ルイス・ブニュエルとミシェル・ボワロンという監督の名前をそこに見つけて、どうしても見たいと思ったのだ。
 ホアン・ルイス・ブニュエルは巨匠ルイス・ブニュエルの不肖の息子とはいえ、狂気の太鼓祭を描いた短編ドキュメンタリー『カランダ』(1966)のあと、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の『赤いブーツの女』(1974)などを撮っており、ミシェル・ボワロンは1950年代に、『この神聖なお転姿娘』(1956)とか『殿方ご免遊ばせ』(1957)とか『気分を出してもう一度』(1959)とか、題名からして軽妙でコミカルでちょっとエロティックな作品でブリジット・バルドーの最も可愛らしい魅力をひきだしてみせ、『お嬢さん、お手やわらかに!』(1958)というくすぐったくなるような「お色気青春コメディ」(というのが公開当時のうたい文句だった)では美青年アラン・ドロンをめぐるミレーヌ・ドモンジョ、パスカル・プチ、ジャクリーヌ・ササールという3人のフレッシュな美女を大暴れさせた忘れがたいフランスの監督だ。

 「図書館の奥深く、いかめしく気取った書物の裏に、禁断の書が隠されている。大作家たちが書いた秘められた作品の数々。公式には知られていないそれらの作品は著名作家たちがペンネームで書き、愛と美の戯れの物語を自らたのしんだものである。このシリーズは感性豊かなあなたに贈る秘密の愛の物語、歳月をへても香気の失せない秘本のページをめくります」―― というナレーションから

『人妻たちの賭』
『背徳の性書 ザ・ポルノグラフィ』シリーズははじまる。「セリ・ローズ」(Serie Rose)というフランス語のシリーズ名は「ピンク・シリーズ」ぐらいの感じだろうか。フランス版ロマン・ポルノといったところだが、ホワン・ルイス・ブニュエルとミシェル・ボワロンのフィルモグラフィーを寺尾次郎氏に調べてもらったところ、なんと、1984年から86年にかけてつくられたフランスのテレビ・シリーズであった。クレジットタイトルのデータに「Fujicolor」とあるから、ビデオ作品でなく、フィルムを使って撮ったものにちがいない。撮影監督にベテランのモーリス・フェルースの名前もある。30分ドラマで、終わりにはかならず、「このシリーズの秘密は誰にも教えないでください ―― あなたの愛する人以外には。では、また来週。たのしい夜をどうぞ」というささやくようなナレーションが入るので、たぶん深夜放送番組だったのだろう。おとなの時間の艶笑喜劇といった感じだ。

『薔薇の花弁』
秘本の原作者はマルキ・ド・サド、ミラボー伯、アントン・チェーホフ、マルグリット・ド・ナヴァール、ギー・ド・モーパッサン、ラ・フォンテーヌとさまざまで、ラ・フォンテーヌの寓話からミシェル・ボワロン監督が映画化した『人妻たちの賭』など、3人の裕福な若い人妻たちがいかにして夫の目を欺いて若い召使いと浮気(ずばりセックス)をするか、その戦略の巧妙さを賭けて競い合うというもの。3人ともかつてのパスカル・プチ級の美女なので、たのしめる。『お嬢さん、お手やわらかに!』ならぬ、『奥さん、お手やわらかに!』とでも題されていいような艶笑喜劇だ。もう1本、『薔薇の花弁』という売春宿を舞台にしたモーパッサン原作のものがあり、女優の質もだいぶ落ちるのだが、役柄相応のリアリズムか。

 ホワン・ルイス・ブニュエル監督の『放蕩貴族の計略』は女から女へと乗り移る若い美貌の貴族の話で、ミラボー伯の原作。
DVDでなければ見られない珍品と言えるかもしれない。



『背徳の性書 ザ・ポルノグラフィ』
監督:ミッシェル・ボアロン/ダレン・カロン/ジョン・ルイス・ブニュエル
1989年/フランス映画
1時間30分
¥3800(税別)
発売:パンド

『背徳の性書 ザ・ポルノグラフィ2』
監督:モーリス・ファスケル/ハリー・クーメル/ミッシェル・ボアロン
1989年/フランス映画
1時間30分
¥3800(税別)
発売:パンド

『もののけ姫』
監督・原作・脚本:宮崎駿
1997年/日本映画
2時間13分
\4700(税別)
発売:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテインメント

『「もののけ姫」はこうして生まれた』
1998年/日本映画
計6時間37分
\4700(税別)
発売:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテインメント
(C)1997二馬力・TNDG

『ゴダールの映画史』
監督・編集・出演・声:ジャン=リュック・ゴダール
1988-1998年/フランス映画
4時間26分
¥32000(税別)
発売:IMAGICA
販売:紀伊國屋書店
フランス映画社提供

『ショコラ』
監督:ラッセ・ハルストレム
2000年/アメリカ映画
2時間1分
¥3800(税別)
発売:アスミック/松竹/角川書店

『ザ・コンテンダー』
監督・脚本:ロッド・ルーリー
2000年/アメリカ映画
2時間1分
¥4700(税別)
発売:日本ヘラルド映画
販売:アミューズピクチャーズ

『花様年華 IN THE MOOD FOR LOVE』
監督・製作・脚本:ウォン・カーウァイ
2000年/香港映画
1時間38分
¥4700(税別)
発売:松竹

オードリー・ヘプバーン名作選
『麗しのサブリナ』
監督・製作・脚本/ビリー・ワイルダー
1954年/アメリカ映画
2時間10分
\4700(税別)
発売:CIC・ビクター・ビデオ

オードリー・ヘプバーン名作選
『パリの恋人』
監督:スタンリー・ドーネン
1957年/アメリカ映画
1時間53分
¥4700(税別)
発売:CIC・ビクター・ビデオ

オードリー・ヘプバーン名作選
『ティファニーで朝食を』
監督:ブレイク・エドワーズ
1961年/アメリカ映画
1時間54分
¥4700(税別)
発売:CIC・ビクター・ビデオ

『ホラー映画100年史』
監督・脚本:テッド・ニューソム
1996年/アメリカ映画
計10時間30分
¥30000(税別)
発売;クリエイティブ・アクザ



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