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プロローグ:もうひとつの『もののけ姫』
第1回 ゴダールの『映画史』
第2回 アンナ・カリーナとともに
第3回 映画と観客
第4回 美少女チャン・ツィイーに捧げた愛の詩
第5回 アニメーションの冒険
第6回 映画の宝物
第7回 羽仁進とジャン・ルノワール
第8回 誰が映画を殺すのか
第9回 映画の後で











 この夏の映画興行はロボットと恐竜と猿と豚に真珠だったということにつきるのだろう。映画館の入口には連日「只今お立見になります」という看板が目につく賑わいだった。

 ティム・バートン監督の『PLANET OF THE APES/猿の惑星』を見る前に、ジョン・ホイットマンによるノベライゼーション(小説化)「ティム・バートン版 猿の惑星 New Blood」(矢口誠訳、角川文庫)を読んでしまって、あまりにもおもしろかったので、じつは映画を見るのがちょっとこわくなって、映画館がこんでいるのをいいことに、夏も終わろうとしているのに見ていない始末だ。ティム・バートン監督が映画公開のためのキャンペーンに来日して、テレビや新聞であまりにも雄弁にしゃべりまくり、朝日新聞(7月25日の朝刊だったか夕刊だったか)の「徹夜で字幕、どたばた編集」という見出しの特別紹介記事では日本公開版の編集に立ち合っていないので「まだ完成版を見ていないんだ」などと無責任にほざいているのも気にかかって、警戒心からつい腰も重くなる。

『ティム・バートン版猿の惑星
New Blood』

ジョン・ホイットマン著
矢口誠訳
角川文庫分
514円(税抜)


 日本映画の―― これはノベライゼーションではなく、原作でもないのだが――『親分はイエス様』(斉藤耕一監督)のモデルとなった元ヤクザのキリスト教伝道集団ミッション・バラバの男たちと結婚した女たちについての実録「バラバの妻として ―― ヤクザだった夫が生まれ変わった」(坂口さゆり著、NHK出版)もおもしろそうで、映画を見る前に読んでしまいそうだ。

 映画のほうもおもしろそうだが、というよりも、どんな映画だっておもしろいにきまっているのだから、問題は映画料金がそのおもしろさに見合うかどうかということになり、その点を無視した大新聞の映画時評が―― 試写で映画を見る「映画評論家」には、当然ながら、映画料金のことなど念頭にあるわけがないのだが――「シナリオがいただけない」「お話があまりにもありきたりで曲がない」「登場人物はそろって単色で、深みがない」「これ見よがしの、しかも無意味な場面も目立つ」「俳優たちもなべてさえない」「繊細な感じは出しているものの、鋭さを欠く」「何もかも度がすぎて、かえって感興を殺いでいる」等々と無造作に(あるいは意図的に?)書いてしまったら、それだけでもう映画は観客から失われたのも同然だろう。
 
 
『ドリブン』
 
以上すべて、シルヴェスター・スタローン脚本・主演、レニー・ハーリン監督の『ドリヴン』について書かれた「朝日新聞」の評からの引用だが、これから映画を見るかもしれない観客の存在や気持ちを無視した批評かと思いきや、「ただ観客の興味をつなぐだけでいい、そう腹をすえてかかった作品に違いない。それはそれでいいとして、彼らの自己満足に終わっては台なしである」と書いていて、どうやら観客の代表としての自覚的発言らしい。あまりにも傲慢ではなかろうかと自省をこめて ―― 私もいちおう「映画評論家」なので ―― 思わずにいられなかった。もっとも、いまや、「映画評論家」の妄言など、大新聞であろうとなかろうと影響力がないといわれるが、しかし、それにしても、映画のあやうさは、作品として独立した存在ではなく―― すでに古典としての映画史的評価が定まった作品はともかく、いや、それとて――作った側と見る側のあいだにただよい、ゆれる存在なのである。あるいは、見せる側(配給・興行側)と見る側(観客側)とのあいだに、すなわち、その場合は映画館を中心に存在するだけのものになる。興行価値、興行成績の面では、「入場料金は安い方がいい」というのは観客側の都合にすぎず、「配給=興行側からすると、ちょっと話が違ってくる」(大高宏雄「入場料金は安い方がいい?」、キネマ旬報連載「大高宏雄のファイトシネクラブ Round29」)というわけである。入場料金を安くしても、観客がふえるかどうかわからないので、無謀な冒険よりは確実な安定路線(敗北主義?)をということなのだろう。ゆえに、大高宏雄氏の言葉を借りれば、映画戦線異状なし。現状維持あるいはむしろ値上げに向かっていくというのが趨勢のようだ。

『親分はイエス様』
2001年 日本・韓国映画
監督・脚本:斉藤耕一
出演:渡瀬恒彦
   ナ・ヨンヒ
公開中
配給:グルーヴコーポレーション


『バラバの妻として ヤクザだった夫が生まれ変わった』
坂口さゆり著
NHK出版
1500円(税抜)







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