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プロローグ:もうひとつの『もののけ姫』
第1回 ゴダールの『映画史』
第2回 アンナ・カリーナとともに
第3回 映画と観客
第4回 美少女チャン・ツィイーに捧げた愛の詩
第5回 アニメーションの冒険
第6回 映画の宝物
第7回 羽仁進とジャン・ルノワール
第8回 誰が映画を殺すのか











 すでに締切りがすぎてしまっているのだが、DVDでまたもおどろくべき新譜がひとつとびこんできたので、はしょって紹介させていただく。

 「アラン・レネ/ジャン=リュック・ゴダール短編傑作選」(紀伊國屋書店)は、前回でちょっと舌足らずの紹介しかできなかったもののわが座右のビデオ(DVD)になっているすばらしい「ジーン・セバーグ・コンプリート」(アップリンク)とならぶ「映画の宝物」になるだろう。少なくとも、「ジーン・セバーグ・コンプリート」の第1部『ジーン・セバーグの日記』(マーク・ラパポート監督、1995)と「アラン・レネ/ジャン=リュック・ゴダール短編傑作選」のなかのアラン・レネ監督作品(『ヴァン・ゴッホ』『ゲルニカ』『ゴーキャン』等々)を合わせて見れば、映画の「モンタージュ」の歴史と基本を、理論と実践を、まさに目から鱗が落ちる思いで学び取ることができるだろう。映画とは何か、などと大仰にこむずかしく問わずとも、映画のテクニックや創造の秘密に多少とも興味を持たれるファンには必見の2本のDVDなのである。

『アラン・レネ/ジャン=リュック・ゴダール短編傑作選』
DVD:6000円(税抜き)
紀伊国屋書店
『ジーン・セバーグ・コンプリート』
DVD:5900円(税抜き)
アップリンク・ファクトリー


 アラン・レネがまだ長編劇映画の監督として立つ前に撮った『ヴァン・ゴッホ』(1948)は、強烈な色彩の画家ゴッホの世界をあえてモノクロで撮り、モンタージュの力でゴッホの絵画の内面的な「物語性」を表現し、「色彩を殺すことによって、ゴッホの絵画の悲劇的構築を浮き彫りにした」画期的な映画的実験であった。

 アラン・レネの短編ドキュメンタリーとともに収録されている若き日のジャン=リュック・ゴダールの、才気喚発と言ったらいいか、女を口説くのにも「きみ、日本人? ミゾグチ、クロサワ」などといった奔放なダジャレに近いせりふもとびだす、はつらつとした短編劇映画の1本、『男の子の名前はみんなパトリックっていうの』(1957)について、若き日のフランソワ・トリュフォーが1958年に書いた批評を以下に引用して、今回は――もう時間がないので――筆をおくことにしよう。

 1930年のアヴァンギャルドはジャン・ヴィゴ監督の『ニースについて』であった。エリック・ロメールの脚本によるジャン=リュック・ゴダール監督の『男の子の名前はみんなパトリックっていうの』は1958年のアヴァンギャルドだ。

 1930年5月にジャン・ウィゴの処女作が上映されたときの挨拶の言葉がある――「中国人にはかつて纏足(てんそく)の習慣があって、足をことのほか大事にあつかったが、わたしたちは映画でわたしたちの精神を美しく磨きたいのです。」
このキャメラのペディキュアは、今日、とくに短編映画の領域で積極的におこなわれているのである。〔中略〕

 『男の子の名前はみんなパトリックていうの』は、わずか1000メートルのネガ・フィルムを回しただけで、キッスで殺せとばかりに猛スピードで早撮りされた。ジャン=リュック・ゴダールがジャン=クロード・ブリアリ主演のこの短編映画で見せてくれる女性週刊誌ばりの恋の手ほどきときたら、なげやりのなかの厳格さのきわみ。厳格さのなかのなげやりの極致だ。
右に左に舵をあやつり、魔風恋風、帆をなびかせて、出船入船、神出鬼没のジャン=クロード・ブリアリ扮するパトリック船長は、女岸めざして接近戦術を開始する。ヴェロニクには下手に、シャルロットには上手に、柔軟遭難おそれを知らぬ口説きぶり、面舵いっぱい、恋いっぱい、自由で軽快で屈託なく、まことにエレガントな魅力にあふれた主人公なのである。(フランソワ・トリュフォー映画論集成「わが人生の映画たち」、草思社近刊)






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