私は「映画館主義」も「ビデオ主義」も標榜することなく、どんな状況、どんな形でも、ただ「映画」をたのしみたいと思っているだけなのだが、このところ、またたく間にDVDが蔓延してしまったことにはおどろかざるを得ず、それなりにDVDならではの高画質の鮮明な映像やDVDでしか見られない逸品、特典映像などににわくわくすることしきりなのである。これも「キネマ旬報」4月下旬号の「VIDEO&DVDシアター」欄では、「日本映像ソフト協会によると1000億円超にまで急成長したDVDソフト市場」についての分析と報告があり、「今後は作品ごとに価格変動があり得る」ということだから、珍品、カルト的名作、それに単に古典というだけの作品などは高価になって入手がむずかしくなるかもしれないという不安もあるのだが……。いまはまだ、むしろ何でも見られるというすばらしい状況だ。
たとえば、東京日仏学院でジャック・タチの特集上映があり、久しぶりに微笑みにみちたじつに幸福な時間を送ることができたのだが、なかでも大好きな『ぼくの伯父さんの休暇』(1953)がすでにDVD化されていることを知り(アイ・ヴィー・シーより発売)、あらためて、テレビの小さな画面ながら、ひとりで見直し、また微笑みのような幸福の喜劇をたのしむことができた。幸福感を反芻できたと言ってもよい。それほどすばらしい映画なのだということでもあり、そのこと再認識させてくれるビデオ──DVD──の効用でもある。
近くDVDで出る作品も、ジョン・フォード監督の『ハリケーン』(1937)、ハワード・ホークス監督の『大自然の凱歌』(1936)、ロバート・フラハティ監督の『極北の怪異』(1922)など、信じがたいほどのラインナップだ。それだけではない。すでにちょっと紹介した──そしてわが座右のビデオになっている──ヨーロッパのサイレント映画のアンソロジー『映画の宝物』シリーズを中心に、世界の名作の宝庫と言ってもいいタイトルがならんでいるのだ(いずれもアイ・ヴィー・シーより)。
ハリウッドの──MGMの──ミュージカル映画のアンソロジー『ザッツ・エンタテインメント』(1974/76/94)のように劇場公開用ではなく、最初からテレビやビデオのために編集されたと思われるすぐれたアンソロジーもあり、いわば動く映像、フィルム・ドキュメントによる映画雑誌の特集号といったところ。『映画の宝物』シリーズもそうだが、さらに『20世紀SF映画大全』『20世紀ホラー映画大全』というおどろくべきアンソロジーも出た(クリエイティブアクザ/パイオニアLDCより)。駆け足でSF映画史、ホラー映画をたどることができる。『ザッツ・エンタテインメント』のSF版、ホラー版というたのしさだ。イギリスのホラー映画、SF映画の総元締として知られるハマー・プロの大スター(とくにドラキュラを怪演した)クリストファー・リーがどちらのアンソロジーにもホスト(案内)役として出演する。
『20世紀SF映画大全』は、SF映画の元祖『月世界旅行』(1902)から、『20世紀ホラー映画大全』はホラー(horror)の語源から掘り起こす。あとは見てのおたのしみなのだが、この2本のアンソロジーはほんの予告篇で、永久保存版『SF映画100年史』(10巻セット)と『ホラー映画100年史』(13巻セット)というのも出ているらしい(いずれもVHSで、マグザムより)。ぜひ入手して見たいものである!