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プロローグ:もうひとつの『もののけ姫』
第1回 ゴダールの『映画史』
第2回 アンナ・カリーナとともに
第3回 映画と観客
第4回 美少女チャン・ツィイーに捧げた愛の詩











 1947年の『小さな兵士』につづき、アンデルセンの童話にもとづいて脚本を書いた詩人のジャック・プレヴェール、音楽のジョゼフ・コスマ(シャンソンの名曲「枯葉」のコンビでもある)との協力により、1952年、ポール・グリモーは長編アニメーション『やぶにらみの暴君』を撮った。「この作品1本をもってグリモーはアニメ史に不滅の地位を確立した」と岡田英美子氏は「キネマ旬報」増刊「世界映画人名事典 監督(外国)編」(1975年版)に、この「フランス動画界最大の巨匠」の唯一の長編作品について書いている。以下、ひきつづき、引用させていただくと――

 詩人ジャック・プレヴェールとシナリオを共作したこの長編は、アメリカ漫画映画の影響のまったく見られない、完全に独自のスタイルと感覚で演出された、ほとんど類例を見ない長編アニメの金字塔である。独裁者・圧制などへの切り込みのするどさには、ナチス占領下の歳月を身をもって体験した作者の視点や判断のたしかさがうかがわれ、しかもこの種の作品のおちいりやすい観念的な展開をたくみに避けている。風刺はきびしく、しかも詩情にあふれ、典雅さとモダニズムが見事に同調している。様式面にも、思想面にも、高度の美学と哲学を持った傑作であった。しかし、この傑作は多額の製作費のため赤字となり、ついに未完の大作となった。ラスト・シーンは唐突なハッピー・エンドであり、登場人物全員が撮った記念写真という形の、動かない一枚絵で終わっている。『やぶにらみの暴君』は52年のヴェネチア映画祭で審査員特別賞を受けたが、やがてグリモーはプロデューサーのアンドレ・サリュと衝突、〔1936年にサリュとグリモーが共同で設立した〕ジェモー社は分裂、グリモーは再びCFの制作にもどった、67年発表の『王と鳥』と題された長編は、この未完の傑作のラスト・シーンを15年ぶりに修正補充、完成したものではないかと思われる。


『王と鳥』より

 実は67年製作発表の『王と鳥』はそれからさらに12年後の1979年にやっと完成された。相棒と信じていたプロデューサーに裏切られて(とはいうものの、プロデューサーにしてみれば、1947年に製作にとりかかってから4年たっても完成せず、資金不足におちいり、公開を急がなければならないという切実な理由もあったのだが)、1952年に「未完」のまま、ジョルジュ・サドゥールの「世界映画史」(丸尾定訳、みすず書房)によれば、「他の人たちによって編集され、着色されて完成され、公開された」。にもかかわらず、「野心と時として偉大さを存分に感じさせる高尚な作品」であった。「大人のお伽噺」として世界中の映画ファンを魅了した。

 しかし、もちろん、ポール・グリモーは意に反してでっち上げられたこの作品に不満で(一時はプロデューサーを告訴したものの敗訴)、コマーシャル・フィルムの制作でコツコツと稼いだ金で、1963年、ついに映画の権利とネガを買い取り、ジャック・プレヴェールとともに作り直しにかかったが、1977年、完成の2年前にプレヴェールは不慮の事故でこの世を去った。『やぶにらみの暴君』のラストを中心に20分カットし、あらたに描いて撮り直した43分を付け加えて出来上がった『王と鳥』は、ジャック・プレヴェールに捧げられた。『やぶにらみの暴君』から27年後、ポール・グリモーは75歳であった。

 1979年のルイ・デリュック賞――「映画のゴンクール賞」といわれるフランスの最も権威ある映画賞――が『王と鳥』に授与された。アニメーションに与えられた初めてのルイ・デリュック賞であった。

 『王と鳥』も、もちろん、いま、DVDで見られるようになったのである。『ポール・グリモー短編傑作集〜ターニングテーブル〜』と同時に発売された。ファンにとっては至福と言うほかないだろう。

 絵のたのしさ、色彩の美しさときたら、これこそ動く絵本といった感じの見事さである。DVDによる最も幸福な時間を堪能できた。クリスマスの贈り物にしたいような2本のDVD作品である。



王と鳥(『やぶにらみの暴君』改作)
LE ROI ET L'OISEAU
1952/1979年・フランス映画
監督:ポール・グリモー
DVD:アイ・ヴィー・シー/ビームエンタテインメント
   3800円(税抜き)/発売中

 








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