
―舞台と登場人物が錯綜する物語ですが、最初は密閉した空間での物語だったそうですね。
最初の段階では、小規模なワンセットドラマでそこから出ないものでした。そのときは全く喋らない宇宙人を想定していたんですが、それだと息詰まってしまって。脚本のサタケミキオさんに相談してから話がどんどん展開していったって感じですね。もうちょっと人間味あふれる宇宙人の方がいいとか、だったら芸人さんがいいなとか。板尾さんは、ダメ元でのオファーでしたが、ちょうどタイミング良くOKをいただけて。
―板尾さんをキャスティングしたことで脚本的に広がりが出ましたか。
大まかなストーリーの流れはサタケさんとだいたい固めていたので。ただ、撮影に入ってからは、やはり板尾イズム炸裂というか、その存在は大きかったですね。例えば、宇宙人だから瞬きしない方がいいのかぁ?とかいろいろアイデアを出していただけるわけですよ。宇宙人なのか、ただのオッサンなのか、微妙なサジ加減を醸し出すためのアイデアというか引き出しが豊富でしたね。
―対する哀川さんも見事でした。具体的にはどんな感じの駆け引きがあの2人にはあったんですか。
アイデアを盛り込んでいく板尾さんに対して、哀川さんの芝居は絶対にブレない。哀川さんの役・幸太郎は川田(板尾)を宇宙人と信じ込んでいるわけですね。そこに対して疑問の余地がないわけですから、いろんな出来事が起きて川田の存在がどんどん胡散臭くなっても幸太郎は変わってはいけない。言いかえれば、板尾さんがアドリブとか入れてどんなに揺さぶっても、哀川さんはずっと同じ幸太郎像を演じつづけていると。幸太郎の愛人役の有坂さんが吹きだしそうなっていても、哀川さんはずっと眉間にシワを寄せていなければいけなかったらしいので、それはそれで辛かったって言ってました(笑)。まぁ彼女は彼女で、川田が宇宙人だろうがなんだろうがそれどころではない状況に陥っている役柄でしたけどね。
―なるほど、本編に漂う不思議な空気感は、登場人物みんなが異なる方向を見ながら会話している、その奇妙なすれ違いが原因なんですね。
そうですね、俳優陣のガンバリが大きかったと思います。みんなが他人とのズレを感じつつも、会話を強引にでも成立させていくというのは難しいんですよ。僕としてはこの物語が本当なのかファンタジーなのか、真面目なのか不真面目なのか、その辺りを曖昧に感じつつ見てもらいたかったわけなので、その意図は出せたんじゃないかなと。
―その曖昧さが本編を覆っているわけですが、エンディングは意外とズドンと直球でいきましたね。そこに行き着くまでに、やはり宇宙人を登場させたり、ハチャメチャな展開があったりして…実はそれはテレ隠しであったりするんですか。
う〜ん、テレとは言わないですけど、辿り着いたって感じですかね。ただ、“世界平和”っていうのを出すにしても、やっぱり人によって捉え方がいろいろありますよね。だから、いろんな多面性を出せるような方法として、今回のような仕掛けを使ったわけで。あと、自分としてはこの作品のラストは破滅的とは思ってなくて、エンディングに流れるスガシカオさんの「やつらの足音のバラード」なんですよ。一度壊れても再生してくれると。最後にラブ&ピースを出すことはちょっと恥ずかしかったけど、根っこの部分は社会派なんですかね、ボクは(笑)。 |