PROFILE
三木聡 MIKI SATOSHI


1961年神奈川県出身。構成作家として、『ダウンタウンのごっつええかんじ』、『笑う犬の生活』、『TV'S HIGH』、『タモリ倶楽部』、『トリビアの泉』など、数々のTV番組に関わる。00年までシティボーイズの作・演出を務め、『優香座/お湯は意外とすぐに沸く』、『演技者/いい感じに電気が消える家』などドラマの演出も手掛けた。映画監督作には『まぬけの殻』(00)、『亀は意外と速く泳ぐ』(初夏公開)などがある
 
 


ある意味私は、映画における成功の犠牲者であったと言えるかもしれません。

―まず「イン・ザ・プール」を映画化すると決まったときの感想を教えてください。

 原作は原作で完成されたものだから、それを超えるのは難しいなと思いましたね。完成度の高い小説だから、同じ土俵で勝負してもかなわないだろうって(笑)。プロデューサーと相談した結果、松尾スズキさんの名前が挙がったんです。まぁ、松尾さんなら原作とは別の持ち味を持った伊良部が創れそうだと思いました。さらにプロデューサーともオムニバス形式にするのはやめようということになったんで、2人の患者が治って、1人が悪くなるという、あの構成に収まったんです。そこにたどりつくまでに、ちょっと時間がかかりましたね。

―松尾さんと組まれるのは初めてだそうですが、印象は?

 松尾さんは演出家でもあり、映画監督でもあるわけじゃないですか。だから、最初はやや敷居が高いって勝手に思ってました。でも、松尾さんに「お任せします」と言っていただいたんで、やりやすかったですね。それに、舞台を見ているときには気づかなかったんですが、松尾さんって所作がきれいなんですよ。とくに手の動きが。松尾さんはもともと濃いキャラクターだから、それだけでおもしろいんですけど、動きが優雅なのには驚きました。普段、いかにぼんやりと観てるかってことですよね(笑)。反省しました。

―松尾さんが演じられた伊良部は、原作のイメージとはまったく印象が違いますね。原作の伊良部はオタク系の太った中年ですが、映画の伊良部は松尾さんそのもの(笑)。

 それは、松尾さんの役者としての落とし込み方がよかったんだと思います。最初から松尾さんなら原作とは違う伊良部ができるんじゃないかって思ってましたけどね。というのも、伊良部って、相当うっとうしい奴じゃないですか。それが最後には「なんかこいつ、いいなぁ」と思えるようになったらいいなと思っていたんですけど、松尾さんはそれをみごとに表現してくださったのでよかったです。

―撮影前に役者を集めてリハーサルをされたそうですが…。

 僕の脚本は基本的に、「え」とか、「あ」とか、間合いを取るセリフが多いんです。こういうセリフはニュアンスによって意味合いやおもしろさが変わってしまうので、初めて一緒に仕事する人に慣れてもらおうと思って。それに、喜劇なので、役者同士のコンビネーションが重要になってくるんですよね。すかして言ってみたり、セリフをかぶせてみたり、コンビネーションによって、たいしておもしろくないものがおもしろくなっていくんです。ある意味、僕の脚本は小ネタ本なんで(笑)、そのあたりが重要なファクターになってくるわけですね。

―みなさん楽しんで演じられているのが伝わってきますよね。



 喜劇なんで、悩みながらやるものじゃないですからね。でも、喜劇って逆に、いいかげんに作るとダメなんですよ。そういう意味でも、役柄を作っていくおもしろさみたいなものを役者さんたちに感じてもらえたとすれば、それは一番うれしいことですね。役者さんの持ち味ってひとりひとり違うでしょ。例えば、田辺誠一さんの場合でも、この映画の田辺さんはある意味で悪役だし、ふだんの彼のイメージとは違いますよね。岩村役の市川実和子さんにしてもそう。彼女とはこの映画で初めて仕事をしたんですが、手足が長いから動きがバタバタして見えるんですよね。そのバタバタした感じが、サイレント映画の動きみたいでおもしろいなと。そういったことが発見できたことは、僕としてもよかったと思います。

―先ほどの質問にも通じるのですが、役者さんたちがのびのび演じられている感じがするのは、アドリブが多かったからなのでしょうか?

 アドリブに関しての質問はよくされるんですけど、どこまでがアドリブで、どこまでが脚本なのかって、すごく難しいですよね。僕個人としては、アドリブでやってしまうと切れ味が悪くなってしまうことが多いので、あまり好きじゃないんです。でも、今回は役者さんそれぞれが現場でどんどん役を作っていってくださったので、そういう意味では全部アドリブといえばアドリブなんですよね。例えば、松尾さんがものを投げた後に肩が抜けるというのは、松尾さんのアドリブ。それ以外にもいろいろありますが、そうやってお互いに自由に作れる信頼関係ができていたのはよかったと思います。それもひとえに監督のふがいなさだとは思いますけど(笑)。



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