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中村獅童主演で話題を集めている『赤線』の映画監督・奥秀太郎にインタビューを敢行。待ち合わせの時間に少し遅れて到着した彼はすまなそうに頭をかき、映画からうかがえるアクの強いイメージからはほど遠い謙虚な人だった。
約1時間にわたるインタビューでは、『赤線』の撮影秘話から映像へのこだわり、果ては奥監督の幼少時代にまで話が及んだ。 |

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『赤線』 ライズXにて上映中

終戦直後の日本を舞台に、連続婦女強姦魔の大久保清と昭和を代表する作家にして遊蕩児の永井荷風がひとりの娼婦を取り合うSFラブ・ストーリー。

STAFF&CAST
監督/奥秀太郎 出演/中村獅童 つぐみ 小松和重 片山佳 荒川良々 今奈良孝行 山田広野 野田秀樹 '04年/NEGA DESIGN WORKS/90分 |
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――奥監督の頭の中には、つねに数十本分の作品のアイデアがストックされているそうですが、『赤線』のアイデアはいつ頃から考えてられていたんですか?
奥 僕の場合はいつも、タイトルとか、映画のコピーとか、キャラクターの名前を思いつくところから始まるんです。『赤線』もそうで、「夏だ。新しい恋がしたい」という最初のセリフを思いついたのは10年ぐらい前ですかね。とある劇団の劇中映像で同じセリフから始まるものを作ったことがあって、それが最初です。
――アイデアを思いつくときにどこからインスパイアされることが多いですか?
奥 まったく関係のないものからが多いですね。だからほかの人が見てもわからないと思いますよ。例えば、『赤線』の基になっているのは、僕が昔作ったフィルムの赤っぽいキズだけで構成した映像なんです。最初は『赤線』も線だけで構成するミニマルなものにしようかと思ってたんですけど、いつの間にかいろんなアイデアがぐちゃぐちゃになって、今の形に収まりました。
――「奥秀太郎=デジタル」というイメージがあったので、「昭和」や「赤線」といったレトロな題材が意外に感じたのですが…。
奥 そういえばそうですね。レトロってそんなに好きじゃないんですけど、何をテーマにするかといったときに、「昭和」がちょうどいいんじゃないかと思って。「江戸」までいくとちょっと違うし、現代や未来の話だと似合わない気がして。
――『赤線』はキャストも豪華ですよね。特に中村獅童さんの悪い男ぶりがはまってました。
奥 そういっていただけると。獅童さんとは『壊音 KAI-ON』('02)の打ち上げで初めて会って、その後も会うたびに「出てくれ、出てくれ」ってしつこくいってたんです。それが今回やっと叶ったわけですけど、ちょっと大きいことをいうと(笑)、僕の中では獅童さんの新たな魅力を引き出せたんじゃないかと思ってます。まぁ、今後間違なく獅童さんの汚点になるんでしょうけど(笑)。
――奥監督の映画を見ていると、役者が伸び伸び演じている感じがするんですけど、やはりアドリブが多いんですか?
奥 最近気づいたんですけど、僕はけっこう細かいタイプみたいで、役者さんに自由に演じてもらうことはほとんどないですね。ただ、気持ちの話とか精神論は一切しなくて、手の位置とか、角度とか、具体的なことを細かく指示するんです。そうやって役者の動く場所を制限しておいて、その中で自由にやってくださいっていうことが多いですね。あとは、「本番!」といっても、全然使わない気で撮っているときもよくあります。「ハイ、カメラ回します」っていったときには撮影ボタンを押さずに、「撮影終わりました」って瞬間に録画ボタンを入れるんです。その方がライブ感も出るし、意外性があっておもしろいものが撮れることが多くて。もちろん、イヤがられる方もいらっしゃいますけど、やっているうちにだんだん慣れてくるみたいですよ。
――たしかに役者からしてみれば、一生懸命に演じたのに使ってもらえないのはショックですね。
奥 そのやり方もそろそろ卒業しろっていわれてますけどね(笑)。でも、僕の映画には画コンテもないので…。
――画コンテもなくて、どうやってスタッフにイメージを伝えるんですか?
奥 脚本があるし、あとは直前に代役を立ててリハーサルをやります。最終的に映像と音を合わせないといけないので、本当は画コンテやイメージイラストみたいなものがあった方がいいんですけどね。でも、僕がやるとジョン・ケージみたいになっちゃいそうで(笑)。映画の撮影って少人数の方が大変だけどおもしろいところもあって、人が多くなるとまた難しいんですよね。
――スタッフの人数が多いと、どうしても指示が伝わりにくくなりますよね。
奥 僕もそんなに大人数の撮影を経験しているわけじゃないからわからないんですけど、人数が少ない方が左右されなくていいかなと思うことはありますね。そのあたりは、これから作品をやるときに話していかないといけないところだと思ってます。
――そうはいっても、心のどこかで全部に関わっておきたいという思いはありません?
奥 たしかに、人からコントロール・フリークだっていわれるような作品を作ってますよね。自腹っていうこともあるんでしょうけど、予算が少ないとどうしても「できない」っていわれることが多くて。そうなると自分でやるしかないから、仕方がなく自分でやってるところもあるんじゃないかな。だけど、最近はどこまで自分が関わるといいのか、わからなくなってきてるところはありますね。例えば今回、デザインの野寺尚子さんとは1回打合せをしただけで、そんなに口を出してるわけじゃないんです。ヘンな話、野寺さんレベルになると、何もいわなくてもやってくれちゃうんですよ。ただし、それがまったく合わないとケンカになっちゃうんでしょうけどね。
――感覚のあわない人だと、何度話しても伝わらないですからね。
奥 今回のように何もいわなくてもやってくれる人がいると、だんだん自分がやる必要がなくなってくるんだろうなとは思いますね。だから、そこはリアル・マドリード化してくれればと思って(笑)。ただ、映画ってどうしても空中分解しやすいものだから、最終的に自分しかいなくなっても映画を撮れるようにはしておきたいなと思ってます。
――『赤線』ではカメラ目線で話す人がいたり、何もしゃべってないのにカメラをずっとにらんでいる人が出てきますよね。ちょっと異様な感じがするんですが、あれにはどういう意味があるんですか?
奥 変ないい方ですけど、「ポスト・ダイレクトシネマ」というムーブメントが今から10年ぐらい前にあって、その影響が強いんじゃないかな。あとは、河瀬直美さんの映画にも影響を受けてます。意外に思われるかもしれませんが、河瀬さんの映画って好きなんですよ。
――確かに意外ですね。
奥 というのも、以前、イメージフォーラムに通ってたことがあるんです。破門されたから3ヶ月ぐらいしか行ってないんですけど(笑)。
――それも意外な過去ですね(笑)。その頃はどんな作品を作ってたんですか?
奥 芸風は今とそんなに変わってないですよ。実験的なことよりも笑いをねらいにいったのが先生方の逆鱗に触れたみたいで、「ロックの好きな奴の映像は、これだから困る」という奇蹟のようなお言葉もいただきました(笑)。それまでは特に映像にこだわっていたわけじゃないのに、その言葉を聞いて「映像をやろう!」って思いましたからね。
――えっ、その言葉がきっかけなんですか?
奥 そうです。ほかの人の課題を見ても「あれはどうなの〜?」としかいわなかった先生方が、僕の映画を見たとたんに激昂して、机を叩いたりしてるんですよ。それも万引きしたぐらいの勢いで怒られて、ビックリですよ(笑)。でも、そのときに映像っておもしろいなって。結局、僕はハリウッド映画のような作品が作りたいんじゃなく、明らかにハリボテだとわかっているのにそう思わせない映画のルールに興味があったんですよね。
――映画のルールとは?
奥 カメラを向けるといろんな口実ができるじゃないですか。どんなヘンなことをやっていても、映画の撮影だと思うとみんな認めてくれるし、普段は絶対に裸になってくれない人が裸になったり。そういう口実としての要素を映画に求めていたんだと思います。 |