団鬼六、生インタビュー
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第一回監督作品『紅姉妹』本編より、妹役の沢木まゆみ。結い上げたうなじに和装ならではの色香が漂います
  (C)団鬼六『紅姉妹』製作委員会

−エロに対しての認識が、時代とともに読者だけでなく作る側でも変わってきてしまっているわけですね。

 とにかくそういうやりづらい世の中でね。昔、僕が新聞に連載してたときにね、「朱鷺色の蹴出し」という言葉を使ったら、新聞社からわからないと言われたんですよね。…朱鷺(とき)色ってわかる?

−鳥の朱鷺の色ですか? …わからないです。

 ピンク色なの。じゃ、蹴出(けだ)しはわかるでしょ?

−わかりません。

 腰巻のことなの。「朱鷺色の蹴出し」って書くとね、新聞社のヤツはまずわからないんですよ。ちょっと教えてくれ言うから、朱鷺色っていうのは鳥の朱鷺の頭、薄紅色、つまりピンク。で、蹴出しっていうのは、腰巻のことだって教えたの。そうしたら、「ああそうですか」って言って、「新聞にはできるだけ優しい言葉で書いてもらわないと困ります」なんて言うのよ。で、直して欲しいって言ってきたソイツが、朱鷺色の蹴出しを“ピンクの腰巻”って書いてきたのよ。明治時代の話ですよ? 芸者の着物の裾がね、風が吹いてまくれて、蹴出しがチラッと覗いたと書いたのは当然のことなんですよ。明治時代の話だから、蹴出しがチラッと出るのが正解だと思って書いてるのよ。ピンクの腰巻がチラッと出たなんて書いたら、まず文章がおかしいでしょ? それなのに新聞社に言わせるとおかしくないって言うのよ、文学上でも。さらに「いや、ピンクの腰巻の方がゾクゾクきますよー」なんて抜かしやがんの。そうなってきますともう、感覚がまったく違ってくるんですよ。だからそういうね、長襦袢とか伊達巻がね…伊達巻ってわかります?

−…た、玉子焼ですか…?

 ホラ!伊達巻を玉子焼いうの! そういう時代なのよ今は。僕が“伊達巻を落とした”って書いたら、読者から投稿が来まして「あの芸者はどうして寝る時にカマボコを落としたんですか」って書いてきよんの。伊達巻を知らなくて、カマボコを落としたって解釈してんのよ。もう時代が違うからね…ホント書けないですよ我々は。

“女子大生の妹もとうとう手中に落ちる図”を演出中の先生。イヤがるところを脱がすのが、またエロいんです
  (C)団鬼六『紅姉妹』製作委員会

−それでは今回の撮影でも、小道具などの名前をスタッフに説明するのが大変だったんじゃないですか?

 新聞や小説に較べれば、映画の連中はそれほどでもないですけれどもね。ただ、やっぱり間違えているところは多いですよ。長襦袢を腰巻で巻いてるヤツもいたから。長襦袢の下に、腰巻きを腰紐で結んでいるときがあるでしょ? それはおかしいって、教えないとまずいところもありました。

 前の日活でやった監督がね、かなり有名な監督だったんですけれども、芸者を引っ張り込んで倒して、腰巻をめくってパンツを引っ張り出すっていう設定にしてて。それを聞いて僕はおかしいと言ったんです。だって、腰巻の下は何も履いてないのがいいんじゃないですか。でもソイツは「これは昭和の話ですから、その頃の芸者はみんなパンツはいてますよ」って言うの。それは確かに事実かもしれないけれど、“映画のウソ”っていうのがあると思うんです。腰巻の下になにもつけていなければ、その女性は見えそうになった時に思わずパッと前を隠すでしょ? それがいいのよ、と僕は言ったの。そうしたら監督が、おかしいやんって。で、今度は助監督が出てきて「パンツを脱がすところが1番肝心だ」って言いだすんですよ。そうしたらどうしろっていうのよ? 腰巻パッと取ったらなにも無いっていうのがキレイでしょ? それをわざわざパンツ履かすっていう…きたないところが多いんですよね。

−その監督たちは、どうしても“パンツを脱がす”というシーンが欲しかったんですね。

 脱がしたいんだよね、とにかく。それがあとになって“パンツ論争”って呼ばれるくらい有名になっちゃったんだけれど、俺、負けちゃったんだよ。しょうがないから「パンツはいいけどせめて赤いチューリップだけはやめてくれ」って言ったの。そのパンツがチューリップ柄でね。それだけはみっともないからやめてくれって。エロチシズムの概念が、まったく違ってますからね。我々70歳過ぎのオジンはね、ちょっと口出せませんよ。で、そういうこともあったから、今回はずっと撮影に付いてたの。




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