(前頁からの続き→)


 
あがた森魚さんは、私の父親のお友達。
小山田サユリさんは、CMを見てぜひにと


―『ボディ〜』のアイデアはどこから生まれたのですか

「私は“とっておきの話”を忘れるのが怖くて、記録に残すようにしているんですね。映画に関わることに限らず、それは写真だったり文章だったり、絵日記だったりもするのですが。でも、結局私には他人に見せたり、お金をもらえたりするほど自信のあるものって、映画しかないんですよね。今回は、今まで自分のなかに培われてきた趣味や好みをひとつに整理しようと思いました。それらを映像として吐き出せればいいかなという思いで、この作品に取り組みました」

―初めての長編となりましたが

「短編作品ばかりを撮っていましたから、セリフのあるシナリオらしいシナリオを書いたのは今回が初めて。結局シナリオも、完成までに4か月ぐらいかかりました。難しかったのは、登場人物それぞれの個性を作っていく作業。例えば、おじいさんはどういうしゃべり方をしているのかとか、ヒップホップ好きな若者はどんなしゃべり方をしているのかって、本当のところは知らなかったりする。そういった部分までを、俳優それぞれにどう埋め込んでいけばいいのか混乱して、スタッフにもシナリオを読み直してもらったり、ミーティングを重ねたりもしました。また、調べないとわからないこともいっぱいあって、インターネットで検索したりしました」

―キャラクターづくりに力を入れられていたようですね

「ひとりひとりの個性を確立したいという気持ちがまず初めにあって。“あれ、この人さっき出てきたあの人?”というのではなくて、“これはさっき出てきた丸山さん”だと、観客の記憶に残るようなキャラクターにしようと思いました。登場人物それぞれに、観客が思い入れできるくらいキャラクターを際立たせたかったんです。そういった意味で、個性的と言われる俳優をキャスティングすることになりました」

―あがた森魚さんや、ムーンライダースの鈴木慶一さんといった確かに個性的な人たちが出演されていますよね

「キャスティングは、シナリオができあがった時点でイメージに合う俳優さんなどに当たりました。それと、今までに交流のあった人たちにもお願いしようかなって。パーティーシーンに登場しているあがた森魚さんは、もともと私の父親のお友達でしたし、映画評論家の大久保賢一さんは、過去の私の短編作品を海外の映画祭で上映して下さった方だったり。主演の小山田サユリさんは、出演しているCMを観ていて、可愛いいなと思っていたんです。この映画のマンガちっくな雰囲気にもピッタリだし、それでは是非という感じで決めました」

―そんな方々への演技指導は大変でしたか

「出演者が持っているもともとの個性に惹かれてキャスティングした訳ですから、セリフを覚えてもらう時も、“こうじゃないと困る…”というような注文はつけませんでした。内容がそれていなければ良いと思っていましたので、セリフを言いやすく変えても、アドリブを加えても、リハーサルと違っても全く構わないですよって。

 
 そんな私に、“本当に何も言わないんですね”という人も、面白がって演じる人もいました。例えば劇中で、架空の人物を演じることになる田中要次さんは、自分が演じるキャラクターについて、あれこれ私に相談してきてくれましたし、最後に出てくるサラリーマン役の鈴木卓爾さんも、“いろいろ考えてきたんだけど、この人彼女はきっといないよね?”なんて言ってきたり。私自身、監督の語りたいことが全てだなんて思っていないですし、押しつけたりしなくても、俳優さんの方でシナリオを読み込んで理解しようとしてくれて、本当に幸せでしたね。逆に、俳優さんそれぞれのシナリオの読み方に、感心させられたりもしていました。“絶対こうなんだ”ではなくて、その人なりの解釈があって良いと、常に思っています」

―とても楽しみながら作品を作られたようですね

「不安はいつもありましたけどね。本格的な演出をするのも今回初めてで、どこがダメなのか良いのかもわからず、俳優さんに1度演じてもらってから…という状況でした。迷惑をかけたかもしれませんが、現場では俳優さんが先輩で、それを見学させてもらって勉強しているような感覚だったと言った方がいいかもしれませんね」





「スロウトレイン」に掲載の記事・写真・カット等の無断転載を禁じます。© Works m bros.