2001.9.21 UPDATE




取材・撮影/岡野琴美
text by kotomi okano

 仕事もなく、恋人もいない日々を送るヒロインが、退屈から逃れるために書いた恋愛小説が大ベストセラーに。彼女は、新進気鋭の小説家として活躍し始めるが、プライベートはサッパリで、つかみかけた恋愛にも逃げられてしまう始末。やがて彼女は、自ら執筆した小説のヒロインに嫉妬するようになり…。

 OL業と監督という2足のワラジをはきこなす若手女性映像作家・和田淳子。彼女の4年ぶりの新作『ボディドロップアスファルト』(2000)が、愛知県芸術文化センターの依頼のもと製作された。この作品は、彼女の記念すべき長編デビュー作となったばかりでなく、当初予定になかったシアター・イメージフォーラムでの一般公開という快挙も成し遂げた。今後、さらなる活躍が期待される和田監督に、『ボディドロップアスファルト』の製作秘話から、作品にかけた意気込みなどを聞いてみた。

和田淳子
Junko Wada
1973年青森県生まれ。高校卒業後、服飾デザイナーを目指して上京する。文化服装学院に在学していた19歳の頃に製作した処女作『閉所嗜好症』('93)が、1994年度イメージフォーラム・フェスティバル(=IFF)で入選。その後、イメージフォーラム付属研究所に在籍し、卒業制作作品としてつくられた短編『桃色ベビーオイル』('95)が、1995年度ぴあフィルムフェスティバルでグランプリにノミネートされ、1996年度IFFグランプリに輝いた。独白と、女性のはだかをモチーフにした映像世界が、評論家の支持をあつめている。主な作品に『胎児を売る店』('94)、『パパイヤココナツ激情』('96)など


  撮影は週末の土日に。
他の日は、有給を利用したりしながら作業にかかりました


 
―会社に勤めながら映画監督もこなされたんですよね。今回は初めての長編作品だった訳ですが、お仕事をしながらどのように映画製作を進めたのですか

「撮影は週末の土日に行っていました。他は、有給を利用したりして。『ボディドロップアスファルト』の撮影は、2か月ぐらいかかってしまいました」

―職場の人たちは、和田さんが監督をされていることを知っているのですか

「ええ、もちろん作品も観てもらっています。『ボディドロップ〜』に関しては、私が勤めている会社に衣装の協力もしてもらっていますし、今回の劇場公開の宣伝も、広報の方々が協力してくれいています。働いている会社そのものが若いアーティストの商品を扱っていることもあって、私の映像活動への理解度も高く、つくづく恵まれてると思っています」

―監督はアパレル関係の会社に勤められているんですよね。今回の作品の衣装も自分で決められたと聞きましたが、やはり仕事上こだわりがあってのことなんでしょうか

「仕事柄というか、洋服が好きなんです。私が洋服、ファッションにこだわるのは、その人のキャラクターやそのときの気分、感情などを伝えるための手段のひとつだと思っているからです。実際、今まで私は映画を観ていても、ストーリーはすごく面白いのに、“どうしてこの人はこんな時にこんな服を着ているんだろう…?”という残念な気持ちにさせられたことが多かったんです。洋服もそのキャラクターが選んだものだと考えれば、その人に合ったものを着ていないと、観ている人は混乱すると思っています。逆に合っていれば、その人についてのわかりやすい説明にもなるし。

 それから予算がない時、一番先に削られるのが、美術とか衣装の部分なんです。だから、そこにこだわった日本映画があまりない。でも、一番こだわりたいのにお金がないからできないというのは嫌、というのが“こだわる”ということの始まりだと思うんですよ。今回は予算もありましたから、ヒロインのエリにできるだけ寝起きさせて、着替える場面を作ったりして、たくさんの服を着させようと意識しました(笑)」

―会社に勤めながらの監督業。どちらかに絞ろうとは考えませんか

「映画の世界って一見華やかですけど、その舞台裏は過酷だし地味なんです。“今日は暑いから汗をかくかなぁ”とか、“現場へ行くと汚れるかもしれないから、可愛いい服も着て行けない”とかすごく現実的。それは私にとって、ストレスになるんですよね。映画の現場では性別の関係はないでしょう。だから、いつも服装に気を配っていたいし、おしゃれしたい(笑)。“私は女として生まれてきたのだから、常に自分は女性でありたい”という気持ちは、職場に理解者がいるということで常に意識していられる訳です。

 それだけでなく、ひとつの世界だけに閉じこもっているのが嫌なんですよ。確かに映画の世界には面白い人が多くて、刺激的な面もあります。けれど会社には、映画作りのスタッフ選びのように、自分の選んだ人だけがいる訳ではなくて、いろんな年代の人がいるから興味深い。何が流行っているとか、まわりの人の関心事を聞いているのが、何より楽しいんです。先のことはわかりませんが、どちらか1本に絞るということにはならないと思います」

―そもそも『ボディ〜』を製作することになったきっかけを教えて下さい

「初めからこういう作品が作りたい、という具体的な構想があった訳ではなくて、愛知芸術文化センターから“映画をつくらないか”というお話しをいただいて、企画書作りからスタートしました。せっかく予算をいただいて作る映画なのだから、今まで撮っていた短編とは違うことをしないと意味がないと思い、1か月ほど企画書を練ることになりました」


 


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