2001.08.9 UPDATE




取材・撮影/岡野琴美
text by Kotomi Okano


渡辺一志 Watanabe Kazushi
1976年生まれ。学生時代から映画を手がけ、19歳の時に『19』(8ミリ版)を制作。俳優としても『ビジターQ』(2000)、『Last Scene』(2000)に出演。松崎ナオのPVやCHEMISTRYのCMなどを手がける。またマンガ版「19」の原作も務め(作画/坂本大三郎)、第41回講談社ちばてつや賞佳作賞を受賞。今年2月には自身が発起人となったイベント<MOUNT POSITION>を成功させるなど、まさにマルチな才能を発揮する若き天才(!?)である
 
 真昼間、街のど真ん中でいかがわしい3人組に拉致されたひとりの大学生。“欲しいものを奪い、いらなくなったら捨てる”。そんな無秩序な行動を繰り返す彼らのもとから、大学生は必死に逃亡を試みる。しかし、次第に彼も3人とのあてどない旅に居心地の良さを感じはじめ…。

 実話をもとにした異色ロードムービー『19』。弱冠24歳の新鋭・渡辺一志が手がけた本作は、トロント、ストックホルム、台北など海外の映画祭で高い評価を受け、また三池崇史、中田秀夫ら国内の監督たちからも絶賛された。プロモーションビデオ&CM制作、そして俳優としても活躍する時代の寵児・渡辺一志を、舞台挨拶直後に掴まえた。



  評判は…そうですね、
気持ち悪くなるほどいいですね(苦笑)


 
初日舞台あいさつよ
―まずは初日おめでとうございます。とても評判がいいですね

「有難うございます。多分、自分たちだけで盛り上がってしまって、申し訳なかったです(笑)。評判は…そうですね、気持ち悪くなるほどいいですね(苦笑)」

―19歳のときに撮った8ミリ版「19」を、自身のリメイクという形で撮ったわけですよね。配給会社にも直接回られたと聞きましたが、苦労はありましたか

「それは別に苦労ではありません。苦労だと思う人間はきっと何もできないんですよ。僕の周りにも映画撮りたいって人はいっぱいいたけど、結局なんもやらないわけだし、撮んない方が絶対いいよって思うし…。ただ、今回の映画でいろんな映画祭をまわれたことは最高でした。一番印象深いのはトロント国際映画祭。人がいっぱいいて、会場のなかには僕が映画で観た人、俳優がいて、反対に僕を映画のなかで観た人もいるんです。

 なんか、映画なんですよね、その場所自体が1個の。それは映画を作っている人間にとってはとてもうれしいことでしたね。単純に感動できた。この年になると、20歳過ぎると滅多に感動することってないんだけど」

―誘拐する3人組のリーダー格を渡辺さんご自身が演じられていますが、最初から自分が出演するつもりだったんですか。また『19』を作ったきっかけを教えてください

「きっかけは…ヒマだったから、それだけです(笑)。映画の部活に入ってたから、それしか選択肢がなかったってだけですよ。

 8mm版のときは違いますが、劇場版のときは、はじめから僕がやるつもりでした。まぁ誰が演じるにしても、僕が演じるってくらいの方がいいんじゃないかなと思って…取っちゃったんです。(製作者側に)断られたら考えたと思うんですけど、断られなかったのでそのままに。3人組のあとの2人はテキトー、ひとりは友達です」

―今回監督が演じた役と、三池崇史監督の『ビジターQ』(2000)で演じた役は同一人物だと聞きましたが

 
 

「それは僕が言い張っているだけです。『19』を観た三池監督から、ああいう風にやってくれって言われて」

―演技をしているのに演技をしていないようにも感じたんですが。役作りや演じているという意識はあるんですか

「自分では分からないです。よく俳優さんとかで役に入りこむって言う人がいるけど、そういうの本当にわかんないから。とりあえず台本に書いてあることを、ト書きどおりにしゃべってるだけです」

―三池作品のほかに、中田秀夫監督の『Last scene』(2000)にも出演なさっていますが、何か参考になったことはありましたか

「ないです。それは別に監督たちを否定している訳ではなくて、僕と彼らは違うし、演出の方法だって個々に違うものだから。僕はただ遊びに行っただけですよ。出番ですって声かけられれば現場に行って、それ以外は控え室で寝まくりです(笑)。俳優がどうのこうのとか演出がどうのこうのってそこまで言える立場じゃないですし。演出家がやってることだし、別にいっかっていう。現場レベルでわぁわぁ言う人もいるじゃないですか。そういう役者って苦手。コミュニケーションのなかで事前に話せることだと思うし」

―スーパー16というカメラで撮影して、あとで色抜きをするという処理を施されていますが、これははじめからそういうことをしようと考えられてのことだったのでしょうか

「そういう可能性はあるかなっていうのは、話し合いの段階でありました」

―そういう手法によって、映像からは砂漠にいるようなすごく乾いた感じをうけました。日本映画らしくないっていう印象なんですが

「日本の映画ってジメっとしているものが多いじゃないですか。そういうのにはしたくなかったんですよ。別にそれらの作品と差別化とかじゃなくて、自分がただそうしたかったからしただけなんですけど。“何か、他の映画とは違うことをしたいな”って言ってやるのはもう格好悪いと思う。ただ単純にこの映画に欲しいものがあって、それに近づけて行っただけ。

 
 
 僕自身、黒澤明みたいなクラッシックな監督をのぞく現代の監督に、興味のある人はいない。あと本数観てないから何とも言えないんだけれども、ハリウッド映画みたいに心を動かされる作品はなかったですね」

―今後興味が沸けば観る可能性もありますよね

「かもしれないけど可能性はない、自分のなかで。この状況で生まれる監督ってたかが知れてるし、だから僕がこんなところで偉そうに喋っていられるっていう…」

―好きな日本の監督は

「死んじゃったけど工藤栄一。それは、クラッシックな監督たちとは別枠で“好き”っていうジャンルに入る。『十三人の刺客』っていう作品の西村晃は最高で、クールって言葉の一言に尽きますよ」

 


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