1947年フランス生まれ。17歳のときに執筆した処女小説「L'Homme facile(簡単な男)」は、大胆な性描写が問題になり、18歳未満購入禁止処分を受ける。小説家、脚本家、女優、そして映画監督として活躍する彼女は、女性ならではのリアルな視点で、フランスをはじめ世界各国から高い評価を受けている。本作を皮切りに、フランスでも未公開となっていた監督デビュー作「本当に若い娘」('76)と、最新作「ファット・ガール」(2000)の日本公開も既に決定している
 
 
−恋人がいるのに身体的に満たされないヒロインが、行きずりの男性と関係を結び、SM的な行為にまで及ぶ。彼女の行動心理がとてもストレートに描かれていたので、観た直後はショックで、その衝撃が頭からしばらく離れませんでした。その後、時間が経過するうちに、わからなかったヒロインの心理について考えてみたり、共感できる部分も出て来ました。

 「そう言っていただけると本望です。もし、今までに観たことのない、全く新しい表現法を用いた作品に出会ったなら、観客はきっと衝撃を受けるはずでしょ。そして、観た直後はショックであっても、しばらく経ってからもう一度思い返したり、共感したりするものなんです。『ロマンスX』を観てそういう感想をもってくれたのであれば、この映画は成功作だと言えるかもしれませんね」

−作品を鑑賞した男性のなかには“苦手だな”と感じた人もいたと聞きました。男女の意見の違いや、共感できるできないという感想については、どう思われますか。

 「その男性は“苦手だな”と言っていたのかもしれませんが、それはちょっと間違っているのではないでしょうか(笑)。そうではなくてきっと、自分の触ってほしくない部分に触れられ、“痛い”と感じているのです。ただ、映画の好き嫌いについて言いますと、誰からも好かれる作品というのは、いい映画ではありません。むしろ私は、悪い映画だと思っています」

−苦手、共感できないという答えは、日本人だったからなのでしょうか。この作品は、本国フランスの男性にはどのように受け止められましたか。

 「状況は似たようなものでしたよ。男性がこの映画を観るのは辛いんじゃないかな…と自分でも思います(笑)。『ロマンスX』を鑑賞しているあいだ、観客はヒロインであるマリーの目を通して、彼女に関わる事柄を疑似体験する訳です。男性は観ているあいだ、異性であるマリーという女性の肉体に自らを投映させなければならないし、彼女の恋人である男性からの冷たい仕打ちも体験するのですから、身につまされる思いなのではないでしょうか」

−そういった男性の意見も含めて様々な意見のある方が良い、と監督は捉えられている訳ですよね。

 「単純に好きか嫌いかというのではなく、映画には、観客それぞれの内面にある感情的な部分、エモーショナルな部分を揺り動かすような“何か”がなければいけないと思っています。にも関わらず最近では、たくさんの映画が次から次へと上映され、観客も急いでそれを追いかけるように観ています。人々は映画を観ることに慣れてしまい、感情を揺さぶられるような作品になかなかめぐりあえないというのが、現状なのかもしれませんね」

−いただいた資料に書かれていた監督の“女性は最も傷つけられるものを通して、最も輝けるものに成り得ることを知っている”という言葉の意味について、教えて下さい。

 「例えば、カメラの前で女優が、エクスタシーに達して恍惚の表情を浮かべるという演技をしているとします。もちろんその過程では、様々なディスカッションをしながらの撮影が進行していますから、そのときの彼女は、監督である私に全信頼を寄せてくれています。そういう過程があるからこそ、非常にプライベートな表情…というか、彼女は自分の内面をもさらけ出すことができるのです。
 
 
単純に淫らな表情だと捉えられるかもしれませんが、それを通り越す、つまりタブーを通り越して行くと非常に神聖で天使のような顔が表れる瞬間が訪れるのです。“タブーへの通過”と私が呼ぶものなんですが、そういった表情・内面をさらけ出したときには、非常にピュアな、純粋なものが待っていると信じています。猥褻だ、淫らだといわれるものも勇気をもって乗り越えれば、神聖なものが待っているという訳ですね」

 

 

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