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男の集団の中でも“女性役”っているんですよ、きっと


西林誠一郎
 
 
―格闘技って輝いている瞬間が短いから余計にそう思うのかもしれないけれど、この映画を観ていると、ひとつの人生がもう丸ごとパックされてるような感じをすごく受けたんです。あの人たちの、あの後の人生をあまり想像できないというか…。

 それはすごく良かったと思う。いいボクサーっていっぱいいると思うんですけど、(現役生活が)終わったら忘れられますよね。ただの普通の人に戻るだけで。試合が撮影されて残る人なんて、チャンピオンになったひと握りだけなんですけど、そうじゃない奴にも、いい選手がいるってことが伝わればいいと思います。おまけに彼らは僕の友達でもあったんで、こうやって映画になって残るってことは僕もうれしいです。ま、負けるシーンばっかりですけどね(笑)。

―もともと監督は格闘技とか好きだったんですか?

 格闘技は好きです。僕はプロレスですけどね、好きなのは。猪木とか(笑)、新崎人生とか。

―いわゆる“男の世界”みたいなのが好きなのかな?

 うーん…。

―『アンチェイン』もやはり女の人は出てこないし、出てきても印象は薄いですよね?

 
 
 そうですね。問題ですよね、それ(笑)。 

―やはり意識しなくてもそうなっちゃう感じですか?


 そうなんですよね。でも、僕は女の話も撮りたいって思っているんですけど、そうなっちゃうんですよね。ジャマに思えてくるんですよ、撮ってたら。特に『アンチェイン』は「…ジャマだな」ってのはありましたね。

―梶さんの元彼女の話とかも、もっと膨らますことはできそうな気はするじゃないですか。いろいろドラマがありそうだし。でもそっちは控えめで、むしろガルーダさんや西林さんとアンチェイン梶の関係に、すごく比重を置いていますよね。『ポルノスター』もそうじゃないですか。男が男に会って何かが変わる、という話で。

 『アンチェイン』は『ポルノスター』になかったものを補っていると思うんですよね。『ポルノスター』でちゃんと表現できなかった鬼丸君と千原君の関係だったり、そういう友情みたいなものがちゃんとできていなかったので、今回はそれをやろうっていうのはあったんです。『アンチェイン』に出てくる彼ら4人の関係って、実は結構サバサバしているんですよ。仲良く見えるけど、ネチネチしてなくてすごくドライなんです。それでも絆みたいなものを撮れたらな、と思ってました。後半の撮影をするまでに、4人が会うなんてことはなかったんですけど、撮影が終わってから、4人が初めてそれぞれの絆に気付いたようなところがあって。そういうのは撮れたかなと思いますよね。そこに女性も入れたかったんですけどねえ(笑)。

 ただ、あの4人でいえば、永石が女性役をやってるんですよね、きっと。そういう映画だと思うんですよ。『ワイルドバンチ』とか観てもアーネスト・ボーグナインでしたっけ。彼が男の集団の中の女性役を演じていますよね。

 
 
―ああ、言われてみればそうですよね。

 だから、女性が不在でも誰かが補っている世界だと思うんです。

―格闘技ってどこかそういうところありますよね。闘っているんだけど、愛しあっているみたいな…。

 プロレスでもね、役割ありますからね。実は次の作品も男子校の話なんですよ(笑)。

―松本大洋のマンガが原作の『青い春』ですよね?

 男ばっかりですよ。これは向こうから来た企画で、松本大洋さんのほうから「豊田君にやってほしい」という話があって。彼とは前から面識があるんですよ。知り合いといえば知り合いで。今度は学校からカメラが出ないワンセットもので、男ばかり15人くらいの集団劇なんです。主演が松田龍平。コッポラの『アウトサイダー』みたいに、ここからスターが出るみたいな映画になればいいと思っているんですけど。松田龍平なら、新しい不良を撮れるかなと思うんです。予感があるんですよ、龍平君だったらって。


 


『アンチェイン』
監督・撮影:豊田利晃
出演:アンチェイン梶
   ガルーダ・テツ 
   永石磨
   西林誠一郎 
ナレーション:千原浩史
2000年 日本 1時間38分
配給:リトル・モア

テアトル新宿にて5月19日より公開



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