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自分の求めてるものが「向こうから来たな!」と。
そういう偶然の連続がたくさんありました


 

ガルーダ・テツ
 
―実は映画を観る前は、アンチェイン梶という奇人変人をカメラが追いかける、いってみれば『ゆきゆきて、神軍』のような作品かなと思っていたんです。でも実際に観ると、アンチェイン梶は精神病院に入っているからなかなか出てこない(笑)。むしろ、主人公はガルーダさんであり、永石さんたちですよね。

 ええ。

―つまり、アンチェイン梶は“そこにいない”わけだけど、にも関わらず、映画の中心はあくまで梶さんであるというところが面白いと思いました。映画の構成としては「アンチェイン梶とはどんな人物だったのか?」という周囲の人の証言を追っていく一種のミステリーのようになっていて、そこがまた面白い。

 99年の12月にガルーダの試合があったんですが、その頃、梶の調子が良くなってきたなと、電話で喋っていてもわかってきたんです。それまで撮った映像が200時間分位あったんですが、梶も撮れそうだし、僕も体が空いていたんで「じゃ、まとめようか」と。 映画にするならタイトルは『アンチェイン』だと決めていたし、とにかくアンチェイン梶の話を中心に据えようと決めて。それで梶にまつわるエピソードを、順々に掘り下げていったんです。ミステリー風といえばそうで、梶が精神病で動けない状態だったんで、僕たちは彼の周囲の人間を撮りながら、(梶について)いろいろな想像をしていました。実物の梶は、終盤まで出てこないんですよね、証言だけで。その構成は僕も面白いと思ったんですよ。

―95年5月に梶さんが起こした事件(釜ヶ崎労働者センター=通称“あいりんセンター”での暴動行為)は、再現フィルムとして撮っていますよね。殴りこむ前に、黄色いペンキをかぶったりとまるで『タクシードライバー』みたいでしたが…。

 『タクシードライバー』ですね。梶はあいりんセンターにタクシー乗って行きましたから(笑)。梶の代わりを役者がやってるんですけど、言葉だけではペンキをかぶったとかって説明できないんで、あそこは(再現シーンが)いるだろうと思って作ったんです。ちょっと迷ったんですけど、やって良かったと思います。

 あとは、やはり釜ヶ崎の風景を撮りたかったんですよ。で、あいりんセンターの中にカメラが入ったことってないんで、入りたいなと思って。梶があの中に入って暴れた、その風景を撮りたいと思ったんです。撮影はもうゲリラですね。隠しカメラを軍手の中に仕込んで、こうワンカップの瓶で隠して(笑)。見つかったら殺されますからねえ(笑)。

―これは想像なんですが、監督は、梶さんがああいう事件を起こしたって話を聞いた瞬間に、それを中心にしてドラマが成立すると思ったのではないかと…。

 そうですね。それが中心になると思いました。

―勝手な思い込みで街を“浄化”してやろうというというあたりは、ちょっと『ポルノスター』に通じる所がありますね。そういうものを豊田さんが好まれるのはなぜなんでしょう?


梶、ひとりぼっちの暴動
 
 いや、それも結局、梶自身がやったことなんですね。だからこちらが(意図的に)作ったわけではないんです。「向こうから来たな」と思うんですよ。自分の求めているものが「向こうから来たな」と。それはちゃんと捕まえようって。そういう偶然の連続が、この作品には結構あるんですよね。

 ガルーダの対戦相手で小野瀬っていう選手が出て来るんですが、彼なんかいいキャラクターでしょう(笑)。いい悪役を演じてくれて。それとか、梶が入院している間に、梶の彼女だった女性が永石と結婚しちゃったり…。あれも撮影を始めてからなんですよ、それがわかったのは。そういう偶然がどんどん山のようにあって。最後までありましたから。

―また『ポルノスター』との共通点になっちゃうけど、ガルーダさんの言葉で「リング上では合法的に人を殺せる」なんていうのがあったり…。

 そうなんですよ。僕も面白いと思ったんですけど(笑)。梶が最後の場面で着ている服も、『ポルノスター』で(千原浩史が)着ていたようなやつで。なんかつながっているのかなって思いますね。





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