−江戸木さんの邦題やコピーや映画評論のセンスのルーツって何かあるのですか?
映画も好きなんだけど、昔から、映画の“広告”が好きだったんですよ。実際に映画館へ行って、その映画を見られたときよりも、映画を「見たい!」という気持ちになったときの方が快感が強かった。公開日まで待たされて、もう、いてもたってもいられないのを新聞やスポットがアオリ立てる。映画そのもの以上に「これが映画なんだ!」ってのを、僕は小学生のときから思っていたんですよ。映画マニアみたいに、名画座に通 ったりなんてことには興味がなかった。とにかく新作の盛り上げ方に「これだよなあ」なんて言いながら新聞とか切り抜いていました(笑)。
−それも立派な映画マニア!
いかさまな宣伝も多くてね(笑)。それがまた快感。昔の見世物小屋的に「なんだろう?」って、こちらの心を盛り上げてくれるんだから、中身がインチキでも、それはそれでいいわけ。「ダマサレちゃったなあ」みたいな、そこもまた楽しいわけ。オカルトとドラゴンとパニックがブームだった70年代前半です。そういえば、その頃、漫画を描くのが好きだったけど、表紙には、必ず惹句を付けて(笑)、宣伝チラシみたいにしたし、予告編も必ず付けていた(笑)。
(チラシの画像はクリックで拡大できます)
江戸木氏が86年頃プロデュースしたイベント「わ〜スト・シネマの逆襲」のチラシ。“ゴールデン・ターキィ・アワード”というクズ映画賞を取った作品を中心に15本連続上映。『ロックン・ロール・デスマッチ、激闘!女子プロレスリング対怪談・呪いの吸血ミイラ男』(55分)など気が狂いそうなタイトルが並ぶ。この中から『ディスコ・ハカバカーナ』だけが『死霊の盆踊り』として公開。若き日の中原昌也氏が客席にいた
サラリーマン時代に手掛けた、“お色気のあんかけ五目うま煮アクション巨編”『ヤムチャ・ガールズ 地獄の鉄観音』(83)と、“空前のヒット作『ゾンビ3』に続いて放つショック巨篇”『ナチス・ゾンビ 吸血機甲師団』(80)。江戸木氏は300本を超えるB、C級作品を担当
−江戸木純のルーツがよくわかります。
自分の肩書きは映画評論家ですが、いつも映画を見るときは「もし自分がこの映画を宣伝する立場だったら、映画の内容がこうだったら、もっといいのになあ」って観点になっちゃう。観客や評論家の立場じゃなく、宣伝マンの立場から「この映画にもう少し、こんな見せ場や切り口があれば、もっとみんなにアピールできるのに…」なんて見方をしてしまいます。製作的なことも、そういった宣伝的なものから発想されて来るんです。
−おっと、次はいよいよ映画製作?
さあて、どうでしょうね(笑)。ただエデンは配給の会社じゃありませんから。配給に関してはもうやるつもりがまったくありません。ふたたび「これは自分の手でやるべきだ」と言う使命感に揺り動かされる作品に出会わない限りはね。ただ、『ロッタちゃん』の第2弾『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』だけは、またミラクルヴォイスと共同で配給します。夏休み映画になるでしょう。今度は春から夏の話。北欧では暖かい時期が本当にちょっとしかないから、みんな外へ行ってピクニックをしたり、貪欲に楽しむんです。特にあの家族は楽しむことに関して、みんな貪欲ですからね。こちらも楽しいですよ。
日米合作の変身ヒーロー・アクション『カブキマン』(89)では企画、キャラクター・デザイン、出演、振り付けを担当。カブキマンを演じる男優に歌舞伎のカタを振り付ける江戸木氏。国辱も何もあったもんじゃない
『ロッタちゃんと赤いじてんしゃ』は、
初夏、恵比寿ガーデンシネマにて、
もっと元気にロードショー!
ロッタちゃ〜ん、何見てんのよ〜?
エド・ウッド・ジュニアの名を持つ男、江戸木純。宣伝マンの着眼で辛口の作品評を展開する映画評論家。あるいは「多くの人に見せたい」という使命感を胸に、常に誠実であることを戦略にして、数々のヒット映画に関わって来たフリーの配給・宣伝プロフェッショナル。ついに自らの手による配給という事業に大成功を収めた彼の次の行動は…映画製作か、はたまた映画監督か…? 江戸木純はとどまらない。答はすぐに見られることになるだろう。
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