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宇田川幸洋氏インタビューTOP
PART1:
子供のころは…
山田さんが書く…
“シナリオ採録”の…
やっぱり先生ですよ…
PART2:
人とのつきあい方と…
ハリウッド映画を…
・原稿を落としたことを…
その人なりの…
   
宇田川幸洋氏過去の掲載コラム:
道草魂


−−評論を書くときに文章表現の面で工夫されていることを教えてください。

 社内の報告書や学術論文とは違うし、読む人はお金を出しているわけだから、おもしろくないとどうしようもないですよね。そういう意味では、映画の本だけ読んでいても書き方はうまくならないかも知れない。落語とかミステリーとか、そういった話術的なものを自分なりに消化して参考にすると、読みやすくなるしエンタテインメント性が出るんじゃないかな。
 ミステリーで参考になるのは、情報をあるロジックによって整理すること、その整理のみごとさがエンタテインメントとなりうるということでしょうね。飯島正、双葉十三郎、植草甚一といった映画評論の大先輩たちはミステリーとの関わりも深いですね。
 また、文章には感情的な要素も必要だと思うんですよね。映画自体が感情に訴えかけるものだから、文章も無味乾燥に書いたら映画の感じがつかめない。

−−それは評論を書くようになってから気づいたことですか?

 いや、そのまえから、おもしろく読めない文章はイヤだったんで、自分なりに工夫してました。

−−宇田川さんが文章を書くにあたって影響された方は誰ですか?

 先輩の映画評論家でも工夫を凝らしておもしろく書く人がたくさんいるわけですよね。工夫というか、しゃれっけがあるということですね。双葉十三郎、小林信彦、森卓也といった人たちの文章は子供のころから読んでるから、ずいぶん影響をうけているんじゃないかと思います。

−−ほかのジャンルでは?

 むかしの永六輔の文章も小学生のときにおもしろいなって思って何度もくり返し読んだから、けっこう影響を受けたんじゃないかな。『スクリーン』や『映画の友』の西部劇特集号にのっていた文章。みんな若いころのほうが“ふざけてる”じゃないですか。片岡義男のテディ片岡時代の本、特にブラック・ユーモア小説集『テディ片岡ゴールデンデラックス』なんか、すごくおもしろかった。
 しゃれっけとか、ことばでふざけるたのしさって学校の国語の授業では教えないもののひとつでしょう。それを、ぼくは子供のころ、おもに映画雑誌から学んだという気がします。

−−逆に原稿を書くときの苦労ってありますか?

 しらべないといけない事典などの執筆は、時間と手間がかかりますよね。平凡社の百科事典の映画のページを書いていたときなんて、小さい記事を書くために1日かけて資料を読んだりしてたから。そういうときは大変ですね。

−−業界内で宇田川さんの遅筆は有名ですね。かつては校了ギリギリになっても宇田川さんの原稿だけまだ入ってないことが多々あったと聞きましたが、そういう状況でもあせることはないんですか?

 そりゃ、あせりますよ。それでずいぶん寿命をちぢめたんじゃないかなぁ(笑)。
 
宇田川氏の薦めで小説を書くようになったという女優の藤谷文子さんが花束贈呈
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左から藤谷文子さん、渡辺祥子さん、映画評論家の粉雪まみれさん、そして接客から離れてちょっとひと休みする主賓…
お気に入りの女優・唯野未歩子さんにサインを求められて照れ笑いする宇田川氏





 
コラムニストの泉麻人氏はかつて宇田川さんの編集担当だった!
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PFFの審査員も務める映画評論家の大久保賢一氏(左)と映画監督の榎戸耕史氏
連載『見ることよりほかに』でもおなじみのTVディレクター、後藤和夫氏(中央)
石上三登志氏、河原畑寧氏、山田宏一氏という映画評論界の重鎮も列席

−−でも時間をかけて資料を読んだり、原稿に対して妥協はしないですよね。

 最近はすることもあります(笑)。

−−むかしはなかった?

 むかしは遅れてもちゃんと書かないとイヤだったんです。というか、この原稿を書く、ということ以外のほかのことが見えていなかったような感じ。だから原稿を落としたこともありましたね。“こういうものが書きたい”っていうのが頭の中にあって、そこに近づかないとどうしても納得できなかったから。それで時間がかかっちゃうんですよね。

−−納得しないと書けないってことですか?

 いろんな情報をつめ込んで、自分で自信をもてないと書きはじめられないんですよ。そういえば、『キネ旬』のアメリカ映画作品全集で『荒野の決闘』('46)を書けなかったことがあったな。ほかの何本かは書いたんだけど、結局『荒野の決闘』だけは落としちゃった・・・。

−−それはやはり資料を調べはじめて締め切りに間に合わなかったとか?

 あの映画は好きすぎて書けないんですよ。どっかであきらめないとダメなんだけど、自分の中で見切りがつけられなかった・・・。でも、最近はやっとあきめられるようになってきましたね。だからプロじゃないんですよ、ぼくは。

−−でも、そのこだわりが“最後の映画評論家”と呼ばれる理由では?

 いや、ほんとのプロの評論家だったらもっとさっさか書かないといけなくて・・・。早く書くのも才能ですからね。早い、うまい、というのがいちばんいい。双葉十三郎さんなんかは偉大ですよね。あれだけ書かれていても質が高いんだから。

−−スタンスを変えようとは思いませんか?

 最近はだんだん変わってきましたよ。むかしに比べればいい加減になってきた。

−−それはなぜ?

 体力もなくなってきたし、若いころの調子で集中してたら身がもたない。あとは社会人としての常識も少しは身についてきたんじゃないかな(笑)。でも、いまだに締め切りには遅れてるけど。

−−これまで相手にキレられたということは・・・。

そりゃ、ありますよ。それ以来、口をきいてくれない人もいるし。10年ぶりに会ったら、いきなりつねってきた人もいた。怖かったな、あれは。本当に顔がおこってた(笑)。

−−そんなときはどう対処するんですか?

どうもできないですよ。もう、あやまるしかない。でも、なんで今になってあやまらなきゃいけないんだって思ったけど(笑)。


『荒野の決闘』
イラスト:宮崎祐治





 
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