2008年05月09日
『ひぐらしのなく頃に』 TEXT by 廣田恵介
同人ゲームでありながら口コミで人気を集め、ついにはテレビアニメ化までされた異色ミステリー作品の実写映画化である。今回の映画化に関しては、ファンの一部が「反対運動」を起こした。原作ゲームのキャラクター・デザインは第一印象の違和感が強烈である分、思い入れも強くなる。あのキャラを生身の俳優に演じられるのか、という危惧なら分からなくもない。
が、キャストは結構がんばっている。主演の前田公貴、松山愛里は映画初出演。特に、ストーリーの途中から性格の豹変する難しい役どころを、松山は堂々と演じきっている。映画全体もメリハリが効いている。怖がらせるシーンでは思い切って照明を変え、部屋の中でも“もや”を発生させるなど、及川中監督の演出はホラーの基本に忠実だ。昭和50年代の怪しげな僻村の雰囲気もベタといえばベタなのだが、中途半端にリアリズムを追求するより、むしろすっきりする。その割り切りは賢明だし、原作のイメージを裏切るものでは決してない。
つまり、及川監督はいい仕事をしたのである。実写化反対派の皆さんには、キャラが似ている・似ていないなどという次元ではなく、プロの映画監督の仕事っぷりを見て欲しい。
(関連リンク)
『ひぐらしのなく頃に』公式サイト
http://www.higurashi-movie.com/
※5月10日(土)より池袋シネマサンシャインほかにて全国公開
『オヤシロさまドットコム』
http://www.oyashirosama.com/web/
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2008年05月01日
『図書館戦争』 TEXT by 廣田恵介
フジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」も3年目。『図書館戦争』は11本目にして、初の小説原作作品だ。アニメが過剰供給されている現状、3年という月日が長いのか短いのかと問われると、ちょっと戸惑う。ともあれ、今回はちょっとミリタリー風味のラブコメ物で、OL狙いの「ノイタミナ」としては堅実なつくり。
ただ、政府と交戦状態にあるはずの「図書隊」の設定はナレーションですまされ、あまり頭に入ってこなかった。レイ・ブラッドベリの『華氏451』に、似ている気もする。だが、「図書隊」は本屋の店頭で小競り合いをする程度。第一話で、子供の買おうとしていた絵本を政府軍が取り上げようとしていたが、あの絵本のどこらへんが有害図書なのか。おそらく、そのへんは意図的に、のらりくらりと交わしていくのだろう。
『図書館戦争』の原作小説は女性に人気が高い。ライトノベルの取材をしていて分かったが、女性は本読みである。図書館、ドジで健気な主人公、厳しいけど陰では優しい教官……男性ファンなら、女性専用車両に乗り合わせてしまったような疎外感・気恥ずかしさを感じること請け合いだ。
(関連リンク)
『図書館戦争』公式サイト
http://www.toshokan-sensou.com/
『有川浩』(Wikipedia)※原作者
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%89%E5%B7%9D%E6%B5%A9
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2008年04月25日
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」特装版DVD発売を記念して
昨日の「アメトーーク」またおもろかったぁ~。"インターフェイス・ヘッドセット"…に見立てたヘアバンド付けたくりぃむしちゅー有田哲平、オリラジ中田敦彦、バッファロー吾郎、世界のなべあつら自称"エヴァンゲリオン芸人"があーだこーだ話をするっていうだけなんですが、番組OPとED(ホトロール…)が凝ってて、スタッフのマニアックっぷり&クオリティの高さに感心させられました。週末もう一度ビデオで見直そう♪ …で本日25日、『「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」 EVANGELION:1.01 YOU (ARE) NOT ALONE. 特装版』のDVDが発売! リリースを記念し、この"特装版"("劇場公開時のフィルムよりも随所に再調整が施され、その数266カットに及んでおります"…のこと)が明日26日より、一部劇場にて公開されるそうです。シネスクのふっかふかなイスで、もう1度観るかな~逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ…。
「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序」」
EVANGELION:1.01 YOU (ARE) NOT ALONE.
特装版DVD発売記念上映
4月26日(土)より
シネマスクエアとうきゅう、シネ・リーブル梅田にて
1,000円均一
<関連サイト>
東急レクリエーション ロードショー館公式サイト:映画ナビ
http://tokyucinemas.net/
日活 Cine Libre
http://www.cinelibre.jp/
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2008年04月24日
『ブラスレイター』 TEXT by 廣田恵介
登場するのはオッサン、モンスター、時々美女。一応、レギュラーメンバーに美少女キャラはいるものの、いわゆる萌えな演出は皆無。完全オッサン仕様、今のアニメのトレンドを無視した姿勢があっぱれな新番組だ。美少女ゲームのニトロプラスが原作に加わっているからといって、安易なエロ要素を期待すると一本背負いをくらう。
そもそも、主人公の名前がゲルト。ドイツ人だ(ちゃんと国籍の分かるキャラクターデザインになっているところが、また良い)。舞台も、どうやらドイツらしい。融合体と呼ばれるモンスターが出現するが、このデザイン・テイストが日本人離れしている。ちょっと古いたとえで恐縮だが、『スポーン』風。ヒーローも登場するが、こちらもバイオレンスなイメージだ。これらのヒーロー、モンスター、対モンスター組織のスーツなどは3DCGで描画されている。そこも含めて、いかにも海外受けしそうだし、中高校生をターゲットの中心にすえた「日本的な」アニメに辟易している向きには、ぜひオススメしたい作品だ。
監督は板野一郎で、ほんのわずかではあるが、ミサイル乱舞の「板野サーカス」もあり! 冒頭、しつこいまでにバイク・アクションを見せ続けるのも板野監督らしくて、楽しい。
(関連リンク)
『ブラスレイター』公式サイト
http://www.blassreiter.com/
『板野サーカス』(はてなダイアリー)
http://d.hatena.ne.jp/keyword/%C8%C4%CC%EE%A5%B5%A1%BC%A5%AB%A5%B9
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2008年04月21日
『ドルアーガの塔 the Aegis of URUK』 TEXT by 廣田恵介
「どうやって、視聴者に親近感を抱いてもらうか?」
大衆娯楽であるテレビアニメには不可欠のテーマだ。『ドルアーガ』はお馴染みの剣と魔法の世界で、見たことのないものは、まずひとつも出てこない。主人公たちが最初からパーティを組んでいることに首を傾げる視聴者もいないだろう。クエスチョンマークを徹底的に潰していくつくり方だ。
ただ、地上波放映版とネット配信版で内容がまったく異なるのには、少々面食らう。原作であるゲームにも「裏ドルアーガ」があったが、アニメ版にも「表第一話」と「裏第一話」があるのだ。地上波版が「表」で、冒険物の王道パターンのパロディのみで成立している。GyaOで配信されたものが「裏」で、こちらは(かなり明るいタッチではあるが)シリアス。絵コンテも、千明孝一監督自らが書いている。つまり「表」がフェイクで、「裏」が本命ということだろう。「視聴者に親近感を抱いてもらう」作戦としては、誰にでも分かるパロディを連発した「表」は、意外に正解だったのかも知れない。
だが、『ブレイブ ストーリー』の千明孝一監督のリターン・マッチとしては、少々パンチ力が不足気味。第二話以降に期待したい。
(関連リンク)
『ドルアーガの塔 the Aegis of URUK』公式サイト
http://druaga-anime.com/
『ドルアーガの塔』(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%89%E3%83%AB%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%81%AE%E5%A1%94
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2008年04月08日
『マクロスF』 TEXT by 廣田恵介
第一作から25年、テレビシリーズとしては14年ぶりの『マクロス』である。変形メカ、歌、三角関係……と『マクロス』シリーズのパターンを踏襲しつつ、明るく軽い作風となった。第一話は、年末の特番で放映された先行特別編より、やや短いバージョン。言うなれば、正規放映版といったところだ。
ところが、「どうせ特別編のダイジェストだろう」と高をくくっていると、追加シーンの多さに驚かされる。適切なシーン展開で、主人公の早乙女アルトと、ヒロインのシェリル・ノームの関係性がはっきりした。両者の性格描写も、ぐっと掘り下げられた。今後アルトとシェリルの関係がどう変化していくのか、ちゃんと興味を抱かせる構成になっている(逆を言えば、特別編はそこがまったくの手落ちだったとも言える)。
25年前の初代『マクロス』は、第一話と第二話を日曜日の昼間に一挙放映するというイベント性豊かなスタートを切った。第一話が2バージョンある今回の『マクロスF』も、お祭り色はたっぷり。CMの直前、劇中の中華料理店の偽CMが放映されるなど、細かな遊びが随所に見られる。坂本真綾の歌う主題歌もキャッチーだ。
(関連サイト)
『マクロスF』公式サイト
http://www.macrossf.com/
『マクロス』公式サイト
http://www.macross.co.jp/
『坂本真綾』公式サイト
http://www.jvcmusic.co.jp/maaya/
『May'n』公式サイト(ヒロイン、シェリル・ノームの歌担当)
http://mayn.horipro.jp/top/
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2008年04月03日
『ガンパレード・マーチ 新たなる行軍歌』 TEXT by 廣田恵介
2000年に発売された『高機動幻想ガンパレード・マーチ』は異色のシミュレーション・ゲームだった。キャラクターがむやみに多く、プレイヤーの選択肢が画期的に広いため、誰とどういう関係になるか予測がつかない。自由度が高すぎて、やりようにしては恋愛シミュレーションにも戦闘シミュレーションにもなり得てしまう。さて、2003年放映のアニメ版はこの厄介なゲームをどう全12話に構成したのか。
シリーズ構成は、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』を監督した高山文彦。最近では劇場アニメ『ストレンヂア 無皇刃譚』の脚本で知られる奇才だ。第一話は全編がハードな戦闘シーンで、度肝を抜かれる。さてはゲームの硬派と軟派のうち“硬”を選択したな、という読みは第二話以降の展開で見事に外される。ラストは主人公がヒロインに告白、というラブコメ路線で幕となる。
原作ゲームは『新世紀エヴァンゲリオン』の影響を如実に反映した舞台設定だったが、アニメは『エヴァ』的になることを避け、等身大の恋愛ドラマに(やや強引に)落ち着けた感がある。第一話の戦闘シーンは、何度見ても緊張感あふれる見事な出来ばえだ。
(関連サイト)
『ガンパレード・マーチ』DVD-BOX
http://db.geneon-ent.co.jp/search_new/show_detail.php?softid=GNBA-5073
『ガンパレード・マーチ 新たなる行軍歌』公式サイト
http://www.jcstaff.co.jp/sho-sai/gpm-shokai/gpm-index.htm
『高機動幻想ガンパレード・マーチ』公式サイト(ゲーム)
http://www.alfasystem.net/game/gp/
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2008年03月31日
『カンフーくん』 TEXT by 廣田恵介
タイトルどおりの映画である。中国人の少年がカンフーを駆使して悪と戦う、キッズ・ムービーだ。だが、アニメ・ファン的には、脚本の大地丙太郎に注目したい。『おじゃる丸』などで有名な、あの大地監督である。宿命の対決とコミカルな学園生活の両立という意味では、『十兵衛ちゃん』シリーズに雰囲気は近い。

(C)2007 映画「カンフーくん」製作委員会
少林寺で武術を学んでいたカンフーくんは、最後の敵を倒すため、師匠に日本へ送られる。たまたま転がり込んだラーメン屋の娘・レイコに「弟」として認められたカンフーくんは……と、これは『ドラえもん』や『ケロロ軍曹』のような「日常世界への珍キャラクター闖入モノ」の典型だ。レイコのクラスメートらがセンス良くキャラ立ちしているため、キッズ・ムービーといっても飽きることはない。無理やり小学六年生を演じる矢口真里が、クライマックスでまさかの変身を遂げるのも楽しい(つい見逃してしまったのだが、上野樹里もチョイ役で出演)。
ラストでは『十兵衛ちゃん』よろしく、父娘の復縁も描かれる。ただ、はっちゃけたギャグ・センスとありきたりな物語に、やや齟齬を感じる。とりあえずVFXが好きでカンフーが好きで大地監督のファンなら、観て損はない。
(関連サイト)
『カンフーくん』
http://www.kung-fukun.jp/
※新宿ガーデンシネマほかにて公開中
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2008年03月27日
『炎神戦隊ゴーオンジャー』 TEXT by 廣田恵介
東映のスーパー戦隊シリーズ第32作目。今回のテーマは「車」である。冒頭、「マシンワールド」なる異世界で、意志を持った車「炎神(エンジン)」たちが言葉を話しながら走り回るシーンに、まずは思考停止。まるで幼児の落書きをそのまま特撮で表現したような世界観に、朝からクラクラさせられる。
もともと、戦隊シリーズは『仮面ライダー』より対象年齢が低い。そのため、幼児とタメを張れるぐらいの「幼稚な」発想力が必要とされる。その点、少しだけ『カーズ』を思わせる「炎神」たちの傍若無人なビジュアルは合格点。また、敵側であるガイアークの工場風アジトも素晴らしい。フリッツ・ラングの『メトロポリス』、あるいはデビット・リンチの『砂の惑星』のような禍々しいフェティシズムに溢れている。
ストーリーは、拍子抜けするほど単純。それでも、手足に車輪をつけたゴーオンジャーたちが地面を疾走しながら敵をなぎ倒す、やぶれかぶれのアクションは凄い。どんなに巨費を投じた大作映画でも、こうも自由奔放な映像づくりは出来ないだろう。ガイアークの女幹部は、なんと及川奈央が演じている。排気パイプやバルブのついた無骨なコスチュームがユニークだ。
(関連サイト)
『炎神戦隊ゴーオンジャー』
http://www.tv-asahi.co.jp/go-on/
『及川奈央』
http://www.oikawanao.jp/
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2008年03月21日
『Mnemosyne -ムネモシュネの娘たち』 TEXT by 廣田恵介
アニメ専門チャンネル「AT-X」開局十周年記念番組で、1時間枠×6本、月一回放映という近年では珍しい放映形式だ。主演声優は能登麻美子で、これまでの気弱ではかなげなキャラクターのイメージから一変、ドスの効いた声でセックスとバイオレンスの世界に挑む。
物語の設定は1990年の新宿。“何でも屋さん”を自称する麻生祇 燐の事務所に、記憶を失った青年が迷い込む。彼の命を狙う組織を追ううち、燐はサディストの女科学者と対決することに……と、道具立ては少し昔のバイオレンス小説風。特に、燐の拷問シーンが凄まじい。流血あり裸あり、“お子様お断り”なのだ(視聴は年齢制限付き)。
アニメは、世間からちょっと眉をしかめられるぐらい、奔放であるべき。たとえ非難の声が上がろうとも、こうと決めたら我が道を行って欲しい。やや猫背で猥雑な新宿の裏通りを闊歩し、凶器の使用も惜しまないヒロインが気持ちいい。今はなき喫茶店「滝沢」が登場するなど、小技も効いている。クールなカット割と丁寧な作画にも好感が持てる。
(関連サイト)
『Mnemosyne -ムネモシュネの娘たち』
http://www.rin-asougi.com/
『能登麻美子 - Wikipedia』
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%83%BD%E7%99%BB%E9%BA%BB%E7%BE%8E%E5%AD%90
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2008年03月18日
『BUS GAMER』 TEXT by 廣田恵介
U局放映のアニメは増えたが、なんとこの『BUS GAMER』は全3話しかない。原作は10年近くも各誌を渡り歩きながら連載をつづけ、いまだ未完結。つまり、今回のアニメ化はファンサービスと考えた方が理解しやすい。
主役は若い男性ばかり3人。彼らはそれぞれに黒い封書のダイレクト・メールを受け取り、金欲しさから生死をいとわないゲームに参加する。設定はハードボイルドだが、ぷんぷん漂うBLの香り。キャラに感情移入できないと、ストーリーに入り込むのは困難だ。他に見るべきところはないのか?と見回せば、目に入るのは生活感あふれるディテール。
例えば、キャラクターの一人が指にはめている指輪、机の上に雑然と置かれたカップ麺、灰皿に突っ込まれた吸殻、煙草や缶ビールのパッケージ。もっと言うなら、主役3人が偶然居合わせるラーメン屋の暖簾、店内のメニュー書き……こうした細部へのこだわりは昨今のアニメのトレンドとも言える。
そうした絵づくりの丁寧さも含めて、'80年代のOVAのような“一見さんお断り”の雰囲気が懐かしい。
(関連サイト)
『BUS GAMER』公式サイト
http://www.fwinc.co.jp/busgamer/
『峰倉かずや』公式サイト
http://www.minekura.com/
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2008年03月13日
『パンダコパンダ』 TEXT by 廣田恵介
公式サイトにも書かれているが、この作品を楽しむには、制作された1972年に起きた裏事情を知っていた方がいい。もともと、宮崎駿(本作では原案・脚本・画面設定)、高畑勲(演出)、小田部羊一(作画監督)の三人が東京ムービーに集められたのは、『長くつ下のピッピ』アニメ化のためだった。ところが、『ピッピ』の映像化権は取得できず、この三人によって進められていた『パンダコパンダ』の制作が急遽決定したのだ(大塚康生『リトル・ニモの野望』より)。

完成した作品は30分と短いが、そこには『となりのトトロ』の明らかな原型であるパパンダとパンちゃん、いかにも宮崎アニメのヒロインらしい働き者で健気なミミといったキャラクター像を見ることが出来る。また、『ルパン三世』で人気を博していた山田康雄が警官役で登場しているのも楽しいところ。
二作目に当たる『雨ふりサーカス』では、洪水になった町をベッドの船で移動するシーンが出てくる。これは、やはり宮崎駿によってパイロット・フィルムが制作された『リトル・ニモ』のワンシーンを髣髴とさせる。しかし、この作品の何よりの見どころは、ほとんど思いつきのエピソードを連ねたような「他愛のなさ」である。
(関連サイト)
『パンダコパンダ』
http://www.ghibli-museum.jp/panda/
『三鷹の森ジブリ美術館<パンダコパンダ展>』
http://www.ghibli-museum.jp/welcome/exibition/
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2008年03月11日
『BLACK LAGOON』TEXT by 廣田恵介
独立U局でのみ放映されていたハードボイルド・アクション・アニメが、アニメ専門チャンネルAT‐ⅹで2月から放送されている。しかも、第一シーズンと第二シーズンを両方とも(もちろん視聴年齢制限付き)。初放映時からそう、これは「お子様お断り」のアニメなのだ。
舞台は、東シナ海に浮かぶ小島ロアナプラ。有能な商社マンだった日本人の岡島緑郎は、社の重要機密を運んだことから、ロアナプラの運び屋・ラグーン商会に捕らわれてしまう。そして、社を見限った緑郎は名前を捨て国を捨て、ラグーン商会の一員として海賊まがいの運び屋稼業に飛び込んでいく。初期の『ルパン三世』のようなクールさはない。弾丸の飛び交うロアナプラは、肌にねばつくような死の匂いに満ちている。
何よりの魅力は、二挺拳銃を使いこなす女ガンマン・レヴィの放送コード無視の粋なスラングの嵐。レヴィのセリフは原作漫画より、このアニメ版で聞くに限る。それだけでなく、アニメでは原作に漂うある種の“軽さ”が抜け、ずっしり腰をすえて闇の世界を堪能できる。緑郎が日本に舞い戻る後半のエピソードが特にお薦めだ。
(関連サイト)
『BLACK LAGOON』
http://www.blacklagoon.jp/
『BLACK LAGOON』(English)
http://www.blacklagooncompany.com/
『BLACK LAGOON』(wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/BLACK_LAGOON
『広江礼威』(原作者)
http://www.din.or.jp/~redbear/
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2008年03月02日
『仮面ライダー キバ』TEXT by 廣田恵介
「変身」「オートバイ」など初代から続く約束事の中に、革新と実験をどれだけ盛り込めるか。それが8年目を迎える“平成ライダー”シリーズのテーマだ。
タイトルの『キバ』は、吸血鬼の牙。敵も吸血鬼なら、ライダー自身もコウモリ型のキャラに嚙まれることで変身する。音楽にはパイプオルガンが使われ、第二話冒頭では、画家のモディリアーニに関するナレーションが入る。バンパイア物にふさわしいスタイリッシュな演出だ。
ただ、2008年の現在と1986年の過去を行ったり来たりするストーリー展開は、やや煩雑だ。主人公は現在パートの渡(瀬戸康史)と、その父親で過去パートではまだ若い音也(武田航平)の青年二人。父子ともバイオリン制作者という設定のため、余計に混乱する。1986年といえば、お父さん世代の青春期。劇中、『冬のオペラグラス』『バナナの涙』といった、おニャン子系アイドル歌謡が流れるのには驚いた。ライダーは確かに二世代キャラクターだが、おニャン子クラブの最盛期にピッタリ合わせた時代設定はこだわりなのか、「あざとい」ととるべきか。
ステンドグラスを模した怪人のデザインなど、独特の美意識に貫かれたビジュアルは見ごたえがある。
(関連サイト)
http://www.tv-asahi.co.jp/kiva/
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2008年02月27日
『ヤッターマン』 TEXT by 廣田恵介
旧作が放映開始された1977年は、ロボット・アニメ・ブームの真っ只中だった。
『超電磁マシーン ボルテスV』、『惑星ロボ ダンガードA』、『無敵超人ザンボット3』、まだまだ、たくさん放映されていた。巨大で力強いロボットが無慈悲な侵略者から地球を守る、というプロットがブラウン管からあふれ出していた。だからこそ、正義の味方の浅はかさを笑い、図太い悪役の出しゃばる『ヤッターマン』が成立しえたのだ。さて、ロボット・アニメといえばガンダムしかない2008年、その『ヤッターマン』が復活した。
第一話の脚本は、バラエティ番組も手がけていた高橋ナツコ。物語の背景を思い切りよく無視して、キャラクターのみを立たせるには格好の人選だったのかも知れない。要所要所で懐かしの名セリフが連発されるのも、実にテレビ向き。そう、これは『ヤッターマン』のリメイクではなく、『ヤッターマン』を題材にした別のテレビ番組だ。
キャラクターやストーリーを借りてくるのは別に構わない。ただ、自らの作品を「黄金のワンパターン」と笑い飛ばした旧作のスピリットだけは借りることも真似ることも出来ない。リメイク物の厳しさを教えられた第一話だった。
(関連サイト)
『ヤッターマン』
http://yatterman.jp/
『タツノコプロダクション』
http://www.tatsunoko.co.jp/
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2008年02月01日
『GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-』 TEXT by 廣田恵介
第一シリーズの放映は2003年。同人作家だった相田裕の原作に目をつけたのは名物プロデューサーの片岡義朗(マーベラスエンターテイメント)だったが、今回の第二シリーズでは名前が見当たらない。代わりに、相田裕自らが総監修・シリーズ構成・脚本までを手がけるのが、この5年ぶりの第二シリーズだ(製作は、前作と同じマーベラスエンターテイメント)。
洗脳により記憶を奪われた少女たちが銃器を携え、政府のために淡々と殺人を行なうというストーリーの基本骨格は前作のまま。その倒錯的な設定は熟知していたつもりだったのだが、第一話では銃撃戦の最中、義理の兄に守られて頬を赤らめる――という“微笑ましい”描写に戸惑った。義兄からの愛情こもったプレゼントも含め、第一話は明るく柔らかい印象だ。
前作は、恋愛とハードボイルドが程よいバランスで溶け合い、ヨーロッパ映画のようなアンニュイな雰囲気を醸していた。今回は、キャスティングも前作とは異なる。制作スタジオも、マッドハウスからアートランドへ。キャストとスタッフが一新されると、かくも変わるか……と驚かされる。これを機会に、浅香守生監督の第一期もぜひご覧いただきたい。
(関連サイト)
『GUNSLINGER GIRL -IL TEATRINO-』
http://www.gunslingergirl.com/
『GUNSLINGER GIRL』(第1シリーズ)
http://www.gunslingergirl.com/1st/
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2008年01月25日
『シゴフミ』 TEXT by 廣田恵介
いまや、ライトノベルはアニメ番組への原作供給源として欠かせぬ存在。この『シゴフミ』も、電撃文庫からのアニメ化作品だ。シリーズ構成を、『コードギアス 反逆のルルーシュ』でアクロバティックな作劇に手腕を発揮した大河内一楼が担当しているので、いやでも期待は高まる。
シゴフミとは、死者から届く手紙のこと。それを届ける死界からの配達人・フミカが狂言回しとなって物語が進行する。学園ラブストーリーと死をめぐるサスペンスが、少しずつ倒立していく手さばきは、「さすが大河内一楼」と唸るほかない。第一話のラストで、はっきりテーマを提示しているのも潔い。
番組をプロデュースしているのは、『のだめカンタービレ』などを手がけた株式会社ジェンコ。漫画、小説を数多くアニメ化している会社で、固有のスタジオを持っているわけではないが、クオリティ・コントロールには定評がある。作画面では、美少女キャラクターで有名なうるし原智志が参加しているのに驚いた。先の読めないストーリーと充実したスタッフィング、表裏両面から楽しめる番組だ。
(関連サイト)
『シゴフミ』
http://www.shigofumi.com/
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2008年01月18日
『墓場鬼太郎』 TEXT by 廣田恵介
日曜朝の『ゲゲゲの鬼太郎』に対して、木曜深夜の『墓場鬼太郎』。二種類の『鬼太郎』の同時放映は面白い試みだ。
現代の子供に向けた『ゲゲゲ~』は、コアなアニメ・ファンに猫娘が人気だが、『墓場~』はノイタミナ枠にふさわしく、スタイリッシュな絵づくりで一般ユーザーにアピールしている。
貸本マンガ時代の『鬼太郎』をアニメ化、とは言っても、ガチガチのレトロではない。野沢雅子や大塚周夫といった初代声優を集めたのは、言うまでもなく過去の『鬼太郎』を知る広く浅い大人層に訴求するためだろうし、電気グルーヴの主題歌は声たからかに、この番組が「今のアニメ」であることを謳っている。オールドファンから反発必至の中川翔子のエンディングテーマに関しても、何をかいわんや。本当の懐古趣味に浸りたかったら、60年代版のアニメを見ればいいわけで、『墓場鬼太郎』はまぎれもなく「2008年のアニメ」なのだ。
そう考えると、モノクロを基調にしたかすれた色づかいや昭和30年代風の衣装設定など、狙いが読めすぎてしまって、やや興ざめ。『鬼太郎』という原作の懐の広さと同時に、その扱いづらさも感じてしまうのだ。
(関連サイト)
『墓場鬼太郎』
http://www.toei-anim.co.jp/tv/hakaba/
『ゲゲゲの鬼太郎』
http://www.toei-anim.co.jp/tv/kitaro/
『げげげ通信』(水木しげる&水木プロダクション公式サイト)
http://www.mizukipro.com/
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2008年01月18日
『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』 TEXT by 廣田恵介
「失われた文化を取り戻す」という高いテーマ性が高く評価される本作だが、その文化が、ただのラブソングだというあたり、さすがアイドル全盛の80年代前期。
映画前半で描かれるマクロス艦内の街も、言ってしまえば80年代に夢見られた「シティ感覚」。決して軽くはないのだが、あの時代の楽観的な気分の刻み込まれた作品だ。
象徴的なのは、物語が決着する前に、地球が壊滅してしまうこと。それでも、美少女ヒロイン、リン・ミンメイは恋に悩み、最終決戦ではその歌声を朗々と宇宙へ響かせる。滅びかけた地球を救うため艱難辛苦を乗り越えた『宇宙戦艦ヤマト』の旅は何だったのか……と悩んではいけない(監督は『ヤマト』の石黒昇と、この作品で監督デビューした河森正治の共同)。
パイロットと上官、そしてアイドル歌手との三角関係。それこそが80年代にモラトリアムを過ごした少年たちの抱いていた、軽薄かつ切実な理想だったのだ。そして、そのイマジネーションを高密度な作画で描ききるだけの「才能の無駄余り」が、あの時代には、はち切れんばかりに横溢していたのである。
(関連サイト)
『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』HDリマスター版 メモリアルボックス
http://product.bandaivisual.co.jp/web_service/shop_product_info.asp?item_no=BCBA-3170
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2008年01月11日
『キミキス pure rouge』 TEXT by 廣田恵介
恋愛シミュレーション・ゲームの代名詞『ときめきメモリアル』の初アニメ化は1999年。PV風の変わった作風はゲームの印象とは大きくかけ離れていた。
もともとストーリー性の強いPCゲームに比べ、恋愛シミュレーションのアニメ化は難しい。この『キミキス』の制作は『ハチミツとクローバー』、『のだめカンタービレ』のJ.C.STAFF。監督のカサヰケンイチ、美術の小林七郎と、両作品と重なるスタッフに期待が高まる。
第一話、一番人気のキャラである摩央が主人公の家に居候するが、これはアニメ化のための新設定。これまでのゲームキャラに比べ、生々しいまでに色っぽい摩央のデザインの再現に苦心のあとが見られる。ゲームに登場するマスコットをギャグに生かすなど、『ハチクロ』『のだめ』ゆずりの原作尊重の姿勢は好感触だ。登場するヒロインは主人公の妹を含め7人。第二話までで、そのすべてを画面上に登場させたのはあっぱれと言いたい。
ただ、この“面”的な広がりが、一対一の親密さを楽しむゲームの雰囲気とマッチしているかは別の話だ。学園ドラマとして、もうひとつ新味に欠けるのも惜しい。
(関連サイト)
アニメ『キミキス pure rouge』
http://www.kimikiss-pure-rouge.jp/
ゲーム『キミキス』
http://www.enterbrain.co.jp/game_site/kimikiss/
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2007年12月28日
『こどものじかん』 TEXT by 廣田恵介
アニメ化の第一報を聞いたとき、「まさか」と思った。原作漫画を読んでいたからだ。小学三年生の担任についた男性教師が、小悪魔的な児童・九重りんから、逆セクハラともいうべき誘惑を受ける。
確かにキャラクターはキャッチーだし、実はストーリー性も高い。しかし、りんの挑発的な発言の数々は、明らかにテレビ向きではない。さて、アニメ化に際して、どうアレンジするのか、制作者の腕の見せ所だ。
案の定、放送第一回から画面に露骨な修正が入った。シナリオも、やや急ぎ足だ。キャラクターの説明も徹底してないまま、りんの友人の不登校という重いテーマに触れてしまっている。「ヤバそうなシーンは隠し、ストーリーは先へ進める」とは、いかにも苦肉の策だ。
アニメや漫画は、メインカルチャーに対するカウンターであるべき。憎まれっ子で、ちょうどいい。民放連の放送基準は、単なる理念に過ぎない。つまり、もっと暴れていいのだ。物議を醸すぐらいでなければ、この原作をアニメ化する意味は無い。DVDを見るときは、原作漫画と比較しながら観ると良いだろう。
(関連サイト)
アニメ『こどものじかん』
http://www.kojika-anime.com/
DVD『こどものじかん』
http://product.bandaivisual.co.jp/web_service/shop_product_info.asp?item_no=BCDR-2067
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2007年12月27日
『天空のエスカフローネ』 TEXT by 廣田恵介
今年、『創聖のアクエリオン』が狂い咲き的にブレイクしたビジュアル・クリエイター、河森正治原作による、1996年放映のファンタジー・ロボットアニメである。
監督は超絶作画アニメ『ノエイン もうひとりの君へ』('05)の赤根和樹。アニメ界のサントラ女王・菅野よう子が劇伴を担当し、坂本真綾が主題歌と主人公の声をアテるなど、話題性は十分。後に映画化もされたほどのヒット作だが、同時期にブレイクしていた『エヴァ』の陰に隠れてしまった印象が強い。
少女マンガを想起させるキャラクター設定は、押井守をして「『エースをねらえ!』かと思った」と揶揄されたほど乙女チック。対して、異世界ガイアの巨大ロボット“ガイメレフ”は、歯車から火花が散るスチームパンク風のガジェット感が魅惑的。エフェクト効果にCGを積極的に使っていたのも、当時としては画期的だった。まぁ、ようするにあれもこれもと欲張りなアニメ番組だったことは間違いない。引き算の『エヴァ』に対して足し算の『エスカ』。今回のHDリマスターBOX発売で再評価が高まればいいのだが。
いきなりBOXは…という向きには、主題歌『約束はいらない』だけでも聞いてみることをお薦めする。
(関連サイト)
『天空のエスカフローネ』
http://www.sunrise-inc.co.jp/datacard/card0131.htm
DVD情報
http://product.bandaivisual.co.jp/web_service/shop_product_info.asp?item_no=BCBA-3092
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2007年12月20日
『劇場版 空の境界』 TEXT by 廣田恵介
同人ゲーム『月姫』を大ヒットさせたサークル「TYPE-MOON」の奈須きのこによる小説を、原作どおり全七章で完全アニメ化。

(C)奈須きのこ/講談社・アニプレックス・ノーツ・ufotable
そう言われてもピンと来ない向きもあるかも知れないが、PCゲーム世代にとって奈須きのこはベストセラー作家である。『空の境界』は今でこそ講談社から上下巻で発売されているが、当初は同人小説として売られ、コアなファンから熱狂的支持を得ていたという。
そんな小説のアニメ化なので、アキバ系の特定ファンに媚びた作品を想像するかも知れないが、めまいを覚えるほど重厚で緻密な映像にまずは圧倒される。特に、少女たちが謎の自殺をとげるマンションの不気味さといったら、その色彩・空気感ともに絶品。切れ味の鋭い演出は、最初のワンカットからエンドロール後まで、片時も緊張を途切らせない。
伝奇的なストーリーはやや難解だが、淡々と交わされるダイアローグと緻密に描きこまれた風景が交錯し、独特の陶酔感がある。この第一章は50分の中篇だが、何より“映画”として充実した時間を味わえること請け合いだ。
(関連サイト)
『劇場版 空の境界』
http://www.karanokyoukai.com/
原作『空の境界』
http://www.typemoon.org/kara/
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2007年12月13日
『カフカ 田舎医者』 TEXT by 廣田恵介
わが国のアート・アニメーションの分野で最先端をいく山村浩二、待望の新作である。グロテスクでありながらも、どこか温かみのある絵柄は健在。終始、絶え間なく変化していく色調は、美しくも見るものを不安のふちへと追い込む。

(C)Yamamura Animation/SHOCHIKU
原作はフランツ・カフカ。ストーリーも難解なら、演出も奇々怪々。キャラクターの頭がひしゃげたり伸びたり、映像は想像もしない方向へメタモルフォーゼする。主人公の老医者が診る患者の少年の傷口など、悪夢に出てきそうな描きこみだ。
確かに、『頭山』でも『年をとった鰐』でも、山村作品の根底には、素朴な残酷さが漂っていたと思う。今回の『カフカ 田舎医者』には、あからさまな残虐性は少ない。かわりに、意味もなく不安な気持ちにさせられ、ひたいに冷や汗が浮かぶほど。21分の上映時間、この窒息しそうな緊張感に耐えられるか、ぜひチャレンジしていただきたい。
『頭山』『年をとった鰐』のほか、新作短編二本が同時上映される。
(関連サイト)
『カフカ 田舎医者』
http://www.shochiku.co.jp/inakaisha/
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2007年12月07日
『ROBO☆ROCK』 TEXT by 廣田恵介
GONZO初の実写映画、という触れ込みであるため、アニメのノウハウを実写に転用したと勘違いしている人が多いが、これは大間違い。制作はGONZOグループ内のVFX会社「ゲネロスタジオ」で、スタッフの多くは隠れた名作『HINOKIO』に参加している。クライマックス、絶妙のタイミングで出現する巨大ロボ「ランド・ツェッペリン」は、あの可愛らしいHINOKIOと、どこか雰囲気が似ている。

(C)2007「ROBO☆ROCK」製作委員会
さて、監督は『ブリスター!』で、愛すべきマニアたちに地球を救わせた須賀大観。今回もタイポグラフィを多用した演出、全編を貫くインディーズ・バンドの楽曲と、スタイリッシュな仕上がりだ。ところが、登場人物はソリッドに絞り込まれ、テーマは泥臭いまでに実直で、切ないまでにストレート。主人公の「便利屋」という職業は架空のものだが、文筆業という「便利屋」である筆者は、彼らの明日をも知れぬ生きざまに心打たれた。
だからこそ、塩谷瞬演じる「便利屋」が万策尽きて巨大ロボを呼び出すシーンは爽快だし、バカバカしいし、VFXはグレイトだ。崖っぷちまで追い込まれた人間の最後のバカ力、実在感たっぷりのロボットがその象徴に見えれば勝ち。観るものに、意外に審美眼や人生観を問いかける異色の映画だ。
(関連サイト)
『ROBO☆ROCK』
http://roborock.jp/index.html
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2007年12月01日
『真・女立喰師列伝』 TEXT by 廣田恵介
正直、最初にタイトルを聞いたときは「まだやるの?」と思った。押井守の立ち食い談義は、前作『立喰師列伝』でお腹いっぱい……という向きは、筆者だけではないはず。
今回の『真・女立喰師列伝』は、押井を含む5人の監督による六篇のオムニバス。うーむ……ますます、満腹感で胃が重くなるんじゃないか? それが杞憂であったと気がつくのは、第三話あたりから。
第三話というと、テレビアニメ『攻殻機動隊』シリーズで一世を風靡した神山健治監督・主演による「学食のマブ」。深夜のファミレスを舞台にしたサスペンスで、無駄のないソリッドな脚本は、押井の確立した“立喰師”の暑苦しいイメージを痛快に打ち破る。つづく「草間のささやき 氷苺の玖実」は、エロチックでみずみずしい。監督はPFF出身の湯浅弘章。その豊かな感性に感心した頃、第五話「歌謡の天使 クレープのマミ」が登板する。
神谷誠監督による「クレープのマミ」。これぞ、知られざる虚構の昭和史を、食文化の変遷で語るという“立喰師”の衣鉢を継ぐ快作だ。それ以上に、若き特撮マンである神谷監督のギャグセンスに舌を巻く。
まだまだ、この国には面白い才能が隠れているのだ!
(関連サイト)
『真・女立喰師列伝』
http://www.deiz.com/onna/
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2007年11月10日
『ウルトラセブンX』 TEXT by 廣田恵介
『ウルトラセブン』が新たにつくられるのは、今回が初めてではない。1994年にテレビ・スペシャルとして放映された『太陽エネルギー作戦』をはじめ、ビデオで何巻も続編シリーズが発売されている。
ただ、今回の『ウルトラセブンX』に関しては、旧作シリーズは一切忘れるのが吉。舞台は『ブレードランナー』のような雨ふりしきる未来都市だし、主人公は黒いコートを着て、救世主と呼ばれる記憶喪失の青年。ちょっと『マトリックス』風だ。
かと言って、ハリウッド映画の模倣に終始した作品ではない。クールな映像は週末深夜という放送時間枠にふさわしいし、謎をちりばめたプロットも浅すぎず深すぎず。インテリアや小道具にも統一感が感じられる。
もちろん、主人公はウルトラアイによって、ウルトラセブンに変身する。残念なのは、“巨大ヒーローになる”という最大の見せ場に高揚感が感じられないこと。巨大ヒーローの存在自体が、作品の世界観と齟齬を起こしているのかも知れない。深夜のビル街に立つウルトラセブンは、かなり美しく撮れているのだが。
(関連サイト)
『ウルトラセブンX』
http://sevenx.jp/index.htm
※毎週金曜、TBS系にて放映中
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2007年11月01日
『機動戦士ガンダムOO(ダブルオー)』 TEXT by 廣田恵介
これまでの『ガンダム』シリーズは、地球の周りにスペースコロニーが浮かぶ「宇宙世紀」や「コズミック・イラ」というアナザー・ワールドが舞台だった。そうした科学的理想郷が戦争に陥る――というファンタジーが、これまでの『ガンダム』だった。
今回の新作は、いわばそうしたSFの顔をしたファンタジー世界に三行半を叩きつけた。舞台は西暦2307年。そこには地球連邦政府もジオン公国もない。日本を含むいくつかの勢力がしのぎを削る、現代の国際情勢をモデルにした世界が舞台だ。
第一話では、新兵器(モビルスーツ)開発を続け、テロ活動を行う各陣営へ、ソレスタルビーイングという独立組織がガンダムで奇襲をかける。「武力による戦争放棄」という矛盾したテーゼに、物語でどんな回答を出すのか大いに楽しみ。ガンダムに搭乗する4人の美形キャラの見分けがつきにくいが、それは第二話以降の課題だろう。
戦闘シーンは、短刀で斬りつけたり、遠距離からライフルで狙撃したり、どこか泥臭くて好感が持てる。パターン化されたファンタジーから抜け出した新生『ガンダム』の蛮勇に、まずは拍手を送りたい。
(関連サイト)
『機動戦士ガンダムOO(ダブルオー)』
http://www.gundam00.net/
※毎週土曜、TBS系にて放映中
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2007年10月25日
『キューティーハニー THE LIVE』 TEXT by 廣田恵介
四度のアニメ化、実写映画化、そして今回のTVドラマ化。『キューティーハニー』映像化のテーマは、常に「あの変身シーンをどうするか?」であった。『牙狼<GARO>』で国産特撮ドラマの歴史に一ページを加えた横山誠監督、果たしてどう出るか。とりあえず第一話は、CGによる光のエフェクトによって「全裸のようにも見えるかも?」という実写としてはギリギリの表現。正直、意外におとなしい変身シーンだった。
それよりも驚いたのは、原幹恵演じるハニーのアクション。天真爛漫な笑顔を振りまきながら敵の攻撃をヒョイヒョイかわし、何とボインやヒップの弾力を応用して敵を攻撃! これは新鮮。原作アニメでお馴染みの剣やブーメランは(第一話では)一切なし。完全な体当たりアクションに感心させられた。
反面、ストーリーは死者が何人も出るなど、やや重たい。敵側にも複雑な設定がありそう。せめて、おバカでキュートなアクション・シーンは毎回外さないでほしいと願うばかりだ。
(関連サイト)
『キューティーハニー THE LIVE』
http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/honey-thelive/
※毎週火曜、テレビ東京系にて放映中
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2007年10月18日
『EX MACHINA エクスマキナ』 TEXT by 廣田恵介
『アップルシード』から三年、荒牧伸志監督とデジタル・フロンティアが再び士郎正宗のコミックを原作にフル3Dアニメに挑む。『EX MACHINA エクスマキナ』とタイトルを変えたのは大正解で、かなりセル・アニメっぽかった前作に比べ、今作は「イラストが動く」といっても過言でないほど緻密なビジュアル。この絵柄が「サイボーグになる前の恋人そっくりの同僚」を前にして揺れる主人公・デュナンの心理にフィットし、映画は柔らかくデリケートな印象を残す。

(C)2007 士郎正宗/青心社・EX MACHINAフィルムパートナーズ
物語自体は、比較的オーソドックスなSFアクション。やや余韻に乏しい。デュナンと恋人のブリアレオス、新キャラのテレウスとの三角関係もあっさりテイスト。同じ士郎原作でも、『攻殻機動隊』シリーズとは対照的な分かりやすさだ。この明快さを是ととれば、ジョン・ウー仕込みの派手なガン・アクションはかなり楽しめるはず。
ただ、せっかく三年の歳月をかけて繊細な心理描写が可能となったのだから、悩めるデュナンの女心をもう少し掘り下げて欲しかった。プラダの衣装を華麗にまとい、ビールを何本も頼むデュナン。その思いつめたような表情が、やけに印象に残るのだ。
(関連サイト)
『EX MACHINA エクスマキナ』
http://www.exmachina.jp/
※10月20日(土)より全国ロードショー
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2007年10月12日
『ストレンヂア 無皇刃譚』 TEXT by 廣田恵介
テレビ放映されていた『天保異聞 妖奇士』といい、なぜか時代劇づいている制作会社BONESの劇場アニメ。シナリオはソリッドで、演出は力強い。ズシリと手応えを感じる出来ばえだ。

(C)BONES/ストレンヂア製作委員会2007
なぜか刃を抜かない“名無し”の剣士を、アフレコ初挑戦の長瀬智也が機敏さと軽快さをあわせ持った独特のムードで演じる。やや入り組んだ設定のストーリーを見せきるのは、長瀬の飄々とした演技のお陰だろう。キーとなる少年・仔太郎を演じる知念侑李も悪くない。芸能人が声優に起用されると、必ずマニアから強い反発が起きるが、やはり実力で判断すべき。“名無し”のライバル役は売れっ子の山寺宏一という、鉄壁の布陣だ。
見どころは何といっても、迫力の剣戟アクション。記号的なチャンバラではなく、人間の体の重みをしっかりと感じさせる作画は見ごたえ十分だ。ただ、全体に色彩は渋く、ヒロインも不在。一体、なぜアニメでリアリスティックな時代劇をやるのか、という疑問も残る。そうした意味でも、かなりの異色作には違いない。
(関連サイト)
『ストレンヂア 無皇刃譚』
http://www.stranja.jp/
『BONES』
http://www.bones.co.jp/index1.html
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2007年10月04日
『アヴァロン』 TEXT by 廣田恵介
新作アニメ『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』の公開が来年に控える押井守。彼が2001年に撮った実写映画『アヴァロン』がBlu-rayディスクとして発売された。
最新作である『真・女立喰師列伝』(11/10公開)にいたるまで、押井の実写作品は「難解」と敬遠されがちだ。だが、『アヴァロン』だけはポーランド・ロケによって邦画らしからぬ雰囲気を醸している。
'01年というと、『陰陽師』『殺し屋1』などの作品で邦画にもCGが大胆に取り入れられていた時期だ。そんな中、『アヴァロン』は仮想現実(オンラインゲーム)の表現と日常場面の色彩にデジタル技術を注力し、映画の見せ場としてCGを使うことをしなかった。ポーランドで撮影された実景や俳優は、飽くまで“素材”であり、完成映像はデスクトップで自在にデジタル加工する――いわば、実写映画とアニメのハイブリッドなのだ。
そこまで特異な映像スタイルでありながら、どこか過去の押井作品の断片が見え隠れするし、手法的には'06年公開の『立喰師列伝』と大いにリンクしていることに気がつくはずだ。『スカイ・クロラ~』公開前のタイミングで見直しておきたい一本。
(関連リンク)
『アヴァロン』
http://product.bandaivisual.co.jp/web_service/shop_product_info.asp?item_no=BCXJ-0007
『真・女立喰師列伝』
http://www.deiz.com/onna/top.htm
『スカイ・クロラ The Sky Crawlers』
http://sky.crawlers.jp/
『押井守』
http://www.oshiimamoru.com/
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2007年09月27日
『電脳コイル』 TEXT by 廣田恵介
NHK教育で、この5月から放映中のアニメ。何より注目せねばならないのは、天才アニメーターとして業界やマニアの間で高い評価を得ている磯光雄が原作・脚本・監督を担当していること。磯の仕事は、スタジオジブリからガイナックス作品、あるいは『キル・ビル』のアニメパートまで多岐に渡り、『新世紀エヴァンゲリオン』では、脚本まで手がけた。その磯が長年温めていた企画だけに、いやでも期待は高まる。
舞台は、“電脳メガネ”と呼ばれるコンピュータが子供たちの間に広まった近未来。まだ路地や空き地の残る大黒市に主人公のヤサコが越してくる。ヤサコはデンスケという犬を飼っているが、これはなんと電脳メガネを着用しないと見えない“電脳ペット”である。登場するガジェットは全てがこの調子で、いわば80年代に流行ったサイバーパンクSFを子供向けにアレンジした印象。ストーリーは基本的に子供たちの探偵ごっこだが、設定は難解。無邪気さの中に、どこか不健康なイメージも見え隠れする。
DVD第一巻には、第一話『メガネの子供たち』と第二話『コイル電脳探偵局』を収録。第一巻を見れば世界観はつかめるはず。まずはお試しあれ。
(関連サイト)
『電脳コイル』
http://www.tokuma.co.jp/coil/
※毎週土曜、NHK教育テレビにて放映中
『磯光雄』
http://www.lares.dti.ne.jp/~iso-000/
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2007年09月11日
『劇場版アクエリオン』 TEXT by 廣田恵介
「一万年と二千年前から愛してる……」という主題歌のフレーズだけが一人歩きした感のある『創聖のアクエリオン』、まさかの映画化である。もともと、2005年に深夜放映されていたロボットアニメ。「合体」をキーワードにギャグありロマンありの破天荒な展開を見せて、放映は無事終了……と思いきや、今年になって『創星のアクエリオン』と少しだけタイトルを変えてオリジナルDVDとして復活。今回の『劇場版』は、DVDの前後編を再編集した『創星神話編』がメインとなる。

(C)2007 河森正治・サテライト/Project AQUARION
この『創星神話篇』、テレビ版と一部設定を共有してはいるが、基本的に完全オリジナル・ストーリー。なので、テレビを見ていないと差異がつかみづらいかも知れない。ところが、完成した映像を見て仰天。クライマックスの天地を縦横に駆け巡る壮大な戦闘シーンは、まさに“神話的”。そこへ更に『アクエリオン』ならではの「合体」哲学が語られ、もう泣いたらいいのか笑ったらいいのか分からない。その強引なまでのスケールの大きさに圧倒されること請け合いだ。
さらに、テレビ版の設定でつくられたギャグ満載の『壱発逆転篇』が併映される。こちらは主題歌しか知らない人でも十分に楽しめるはずだ。
(関連サイト)
『劇場版アクエリオン』
http://gattai.jp/pc/index.html
※9月22日(土)から渋谷シネ・アミューズほかにて公開
『創聖のアクエリオン』
http://www.aquarion.info/
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2007年09月06日
『牙狼<GARO> SPECIAL 白夜の魔獣 愛蔵版』 TEXT by 廣田恵介
変身ヒーロー物といえば日曜朝の定番番組。『牙狼』は、そんな常識を覆した異例のTV特撮シリーズで、2005年に深夜放映された。原作・総監督は『ゼイラム』『鉄甲機ミカヅキ』などで知られる雨宮慶太。好悪の分かれるクリエーターだと思うが、『牙狼』の映像センスは一見の価値あり。ヒーローの魔戒騎士“牙狼”が走れば地面が割れ、破片が宙を舞うなど当たり前。ビルの壁面を駆け下り、ガラスを踏み砕きながら敵と斬り合うなどという前代未聞のシーンもあった。
それもそのはず、アクション監督は『パワーレンジャー』(アメリカ版スーパー戦隊番組)のため渡米していた横山誠。日本の伝統的な着ぐるみ特撮をベースに、CGを駆使して派手な絵づくりに徹している。
さて、今回発売されるDVD『白夜の魔獣 愛蔵版』は、昨年末に放映されたスペシャル番組を一本にまとめた特別版。いかにも続編らしい意外性は十分に用意されているのだが、味方の魔戒騎士が三人に増えてしまい、スーパー戦隊物のような絵づらに先祖がえりしてしまったのが残念。着ぐるみ特撮の可能性と同時に、限界も見えてしまった印象だ。
(関連サイト)
『牙狼<GARO> SPECIAL 白夜の魔獣』
http://www.bandaivisual.co.jp/garo/
※DVDはバンダイビジュアルより9月25日(火)発売予定
『牙狼<GARO>(TV版)』
http://www.tv-tokyo.co.jp/garo/
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2007年08月28日
『ミヨリの森』 TEXT by 廣田恵介
数々のスタジオジブリ作品や『時をかける少女』などの背景で知られる山本二三の初監督作品。劇場公開ではなく、8月25日(土)にテレビ放映された。
主人公は、森の精霊と会話の出来る少女・ミヨリ。彼女に限らず、中途半端にリアリティに寄ったキャラクターたちは、どこか馴染みづらい。精霊たちのデザインも、どこか垢抜けない。CGまで駆使した精緻な背景に比べると、キャラクターの作画はもうひとつ見せ場に欠ける。ジブリ的な作品を期待すると、肩透かしを食らうだろう。
だが、典型的な都会っ子だったミヨリが、森を守るべく奮戦するまでの流れにまったく淀みがなく、蒼井優の自然な演技も手伝って、さわやかな印象の作品に仕上がった。
ただ、テレビ番組ならば「万人受けする可愛らしいキャラクター」の創作は必須要素だったはず。漫画原作とはいえ、絵柄にはもうひと工夫、欲しかった。キャラクター・デザイン次第で、ユーザーの感情移入度は大きく左右されるからだ。
(関連サイト)
『ミヨリの森』公式サイト
http://www.fujitv.co.jp/miyori/index2.html
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2007年08月21日
『FLAG Director's Edition 一千万のクフラの記録』 TEXT by Keisuke Hirota
古くは『太陽の牙ダグラム』、そして秋には新シリーズが予定される『装甲騎兵ボトムズ』の高橋良輔が総監督をつとめた作品。今回発売となるのは、ネット配信されていた全13話を101分に再編集したバージョンだ。
『ダグラム』も内戦をテーマにした戦争ドラマだったが、『FLAG』は、内乱に揺れるアジアの某国が舞台。ロボット兵器こそ登場するものの、SF色は皆無に等しい。やや設定の似ている『ガサラキ』のような伝奇的要素も見当たらない。
それでも、『FLAG』には高橋監督らしい挑戦的な表現が試みられている。なんと、すべてのシーン、すべてのカットが「実際にカメラで撮影された映像」として描かれるのだ。もちろん、ピントがぼけたり、画面がブレたりする。つまり、全編がアニメによって再現された「擬似ドキュメンタリー」というわけだ。
映像の情報量とテンポ感は、従来のアニメとはまったく異なる。また、政治劇をからめたシリアスかつ難解なストーリーも人を選ぶ。ただ、「アニメにおけるリアルな映像表現」を考える上では無視できない作品だ。
(関連リンク)
『FLAG Director's Edition 一千万のクフラの記録』公式サイト
http://www.flag20xx.net/
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2007年08月15日
『コードギアス 反逆のルルーシュ STAGE24&25 スペシャル』 TEXT by Keisuke Hirota
この春に23話までが放映され、同作のファンは大いに待ちぼうけをくらったはず。この夏に入ってから各所で放映されている最終回スペシャルは、とりあえず待たされた甲斐のある濃厚な1時間に仕上がっている。
他人に一度だけ命令を下せる“ギアス能力”をストーリーの主軸にすえた本作。ともすればその設定のみ暴走してシナリオが支離滅裂になりかねないところを、絶妙の配分でスリリングな作劇へ持ち込むその技巧こそが最大の魅力だった。いよいよドラマを収束させねばならないこの最終回スペシャルでは、主人公ルルーシュの運命だけをソリッドに描くのでは? と予測していた。ところが、無数に埋没されていた伏線があちこちで爆煙を上げ、意外なキャラが意外な行動をとり、新型メカも続々と登場。薄っぺらな予想は、全力でくつがえされてしまった。
異例の放送形態となった最終回スペシャルは、オタク受けする要素を「これでもか!」とばかりに詰め込んだ本作最後の総力戦である。そのテンションは、最後まで途切れることはない。そう、まさしく「途切れない」のである。「途切れない」ことと「終わらない」ことはまた別。賛否を醸し出しているラストは、是非ともその目で!
(関連リンク)
『コードギアス 反逆のルルーシュ』公式サイト
http://www.geass.jp/
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2007年08月07日
『時空警察ヴェッカーシグナ』 TEXT by Keisuke Hirota
知る人ぞ知る特撮ドラマ・シリーズの第三弾。第一作は、2001年に発売されたDVD『時空警察ヴェッカー』だ。
この作品は、戦闘時にコスチュームをまとうという変身ヒーロー物のセオリーが守られていた。そして、翌02年、テレビ朝日で深夜に放映された第二作が『時空警察ヴェッカーD-02』。22世紀の未来からやってきた時空刑事たちが戦国時代にまでタイムトリップするという大胆なドラマが展開し、市川由衣、小倉優子らが出演していた。こちらは変身ヒーロー物ではなく、ヒロインたちの素顔での活躍や、凝ったストーリーテリングが話題となり、04年にはテレビ版と異なるエンディングのオリジナルDVDまで発売された。そして、テレビ放映では5年ぶりとなる本作。登場する5人のヒロインのうち、葉月あい、仲村みうら4人が変身し、鮎川穂乃果だけが変身しないという謎めいた設定が気になる。
また、時空刑事オリオンへ変身する男性ヒーロー役に、これまでドラマのスタントやスーツアクターとして活躍してきた和田三四郎が顔見せしているのも話題のひとつ。メジャーな特撮シリーズでは見られない隠れた魅力が満載なのだ。
(関連リンク)
『時空警察ヴェッカーシグナ』公式サイト
http://www.layup.co.jp/contents/wecker-signa/
『時空警察ヴェッカー』公式サイト
http://www.generalworks.com/wecker/index.html
『時空警察ヴェッカーD-02』
http://www.generalworks.com/d02/
※TOKYO MXにて放映中
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2007年07月31日
『さよなら絶望先生』 TEXT by Keisuke Hirota
久米田康冶原作(講談社・週刊少年マガジン連載中)の異色学園コメディのアニメ化。あらゆることに絶望し、すべてにおいてネガテ

