2008年04月09日
伝説の映画監督・高林陽一と大林宣彦が日本映画界を語る!PART3

映画が粗末に扱われてしまう。それが悲しい
大林――現在、商業映画にとって重要だとされるのは、今日どれだけヒットして儲かるかということ。確かに、儲かることだけ考えれば無名の新人より有名な俳優を使ったほうがいい。ある俳優がテレビに出演したとき、せっかくシナリオを読み込んで演技を考えて行っても『いつもの演技をやってくれ。こちらはそれにギャラを払ってるのに、違うことをされたら商売にならない』と怒られたそうです。これじゃあ、俳優も殺されちゃう。金さえ儲かれば幸せな人間ならいいけど、お客さんや仲間たちといい物を作りたいと思うと、今の映画界には人間性が無い。物と金、人気だけ。こんな世の中おかしいですよ。
高林――それに今の時代、映画が非常に粗末に扱われていますね。何億円と賭けて作っても、一週間だけ、しかも朝一回だけの上映で、お客がたったの三人しか入っていないという映画もたくさんあります。私にとって映画を作ることの喜びは、お客さんと対話が出来るということ。共感してくれる人が一人でもいてくれれば、それで十分幸せに感じるし、作った甲斐があると思えます。それなのに、どうしてこんなに映画が粗末に扱われてしまうのか。私はそれが本当に悲しい
大林――ジョージ・ルーカスは映画を作ることを止めましたね。それは9・11の事件は、自分が『スターウォーズ』を作ったせいでテロリストたちが真似をしたんだと考えたからです。だから彼は、大きな映画を作るのをやめて、庭の小さな虫や鳥をミニDVで撮って暮らすようになりました。これは言い方を変えると、『スターピース(peace or piece)』を作るということ。つまりルーカスは、文化の人として目覚めようとしているんです。
映画作家は、今そういう時期に置かれているんです。若い人たちには、高林さんのように自分の信じるすばらしい、美しい映画を作ろうと努力してほしい。
たしかに『スターピース』は退屈だけど、『スターウォーズ』を楽しむような感覚は、もうやめない? それがお客さんにとっても大事なことなんです。その代わり僕たちも、おもしろい『スターピース』を作るよう一生懸命努力します。
高林――先日『京都の文化を語る会』という、各界から著名な方が20人くらい集まって話す会に参加したんですが、そこでは映画の話が出てこない。日本じゃ映画は文化じゃないというんです。京都は映画の発祥の地なのに。いまや京都の偉い人たちが映画を観ない。
どのくらい映画をご覧になるんですかと聞くと、全く観ない、観るに耐えない、つまらないと言うんです。どうしてかと聞くと「観る前から結果が分かっているから。例えば、プロ野球なら観ないと分からない。結果の分からないものを観たいんだ。映画みたいに結果の分かっているものに時間を使うのがもったいない」と言われました。
これは映画の内実的な問題ですね。
大林――映画を作り続ける以上は、作り手としての誇りがあるし、その誇りを汚してはいけないと思う。すばらしい可能性を信じさせてくれた、古き良き時代の映画を観て育った僕たちは、それを守っていかないといけない。若い人たちも映画に関わっていく以上は、『僕たちが映画を作るんじゃない。映画が僕たちを作ってくれたんだ』という気持ちで、映画への尊敬の気持ちだけは忘れず持ち続けてほしいね。
高林 陽一(たかばやし よういち)

1931年4月29日生まれ。映画監督。20代から精力的に実験映画作品を発表し、多数の国際映画祭で受賞を果たす。また日本人初のニューヨーク近代美術館所蔵等、輝かしい成果を残し、30代からATG、松竹、角川といったメジャーで作品を発表し続けている。
代表作:「石ッころ」('60)、「すばらしい蒸気機関車」('70)、「餓鬼草紙」('73)、「本陣殺人事件」('75)、「金閣寺」('76)、「雪華葬刺し」('82)
大林 宣彦(おおばやし のぶひこ)

1938年1月9日生まれ。映画監督。大学在学中から自主制作映画の先駆者として活動し、国内外の映画祭で数々の受賞を果たす。また、CMディレクターとしても多数のヒットを飛ばし、後進の育成にも尽力している。
代表作:「HOUSE ハウス」('77)、「瞳の中の訪問者」('77)、「狙われた学園」('81)、「転校生」('82)、「時をかける少女」('83)、「さびしんぼう」('85)
「涯てへの旅」('07)

<キャスト・スタッフ>
企画・脚本・演出:高林陽一 撮影・編集:としおか たかお 助監督・録音:秋吉弘文
出演:高城ツヨシ 遠藤久仁子 白石美樹 木元としひろ
<ストーリー>
「僕は確かにこの風景を知っている。この浜を歩き、これと同じ情景を見たことがある・・・」唯一の肉親を捜し、父の生まれたであろう海辺の町へとやってきた男。夢のような、幻のような記憶と現実の交錯する旅の中で、男は生きる術を知る 。
<関連サイト>
「涯てへの旅(はてへのたび)」
http://takabayashiyouichi.web.fc2.com/
ポレポレ東中野
http://www.mmjp.or.jp/pole2/
取材・撮影・文/田井 成樹
投稿者 tkurio : 10:42 | コメント (0) | トラックバック (0)



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